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第二十七話 入学式の朝

 ついにその日はやってきた。今日は入学式だ。私はいつもよりも少し早起きをしてバルコニーーで朝の爽 やかな風にあたる。なんだか歌い出したい気分だった。

 昔からそうだ。何か、緊張するような予定がある日の朝は決まって早起きしてバルコニーでぼーっとする。そしてお母様が昔歌ってくれた歌を口ずさむのだ。気づけば私は歌っていた。ナボトゥの一族に伝わるという歌だ。

 起きる時間になってマーシャが部屋に入ってくる。そしてバルコニーの扉を開けた。 「おはよう、マーシャ。」

「ここにいらっしゃると思いました。おはようございますエレナ様。」

私はバルコニーーから出るとマーシャの指示されるがままに身支度を進めていく。先日制服の胸元を調整したいと言ったおかげか前に着た時よりも随分と楽だった。

「マーシャ、制服直してくれてありがとう。お陰で快適だわ。」

「ふふ、これくらい侍女として当然ですよ。」

そんなことを話しながらどんどん身支度は進んでいき、あっという間に学校に行けるような姿になった。いつもは倍以上支度に時間があかかるのに・・・。制服、いいかもしれない。

「朝食のお時間ですよエレナ様。どうなさったんですか?鏡を見て立ち尽くして。」

「なんでもないよ!ただ、本当に学園の一員になるんだなぁと思って。」

「左様ですか。それでは食堂に向かいましょう。あなたのお父様が首を長くして待っていますよ。」

「そうね、早く行かなくちゃ。」

私とマーシャは部屋を出てそのまま食堂を目指す。

「感慨深いですね。」

そう、口にしたのはマーシャだった。マーシャから見れば私は娘も同然だろう。私の侍女になる前はお母様の侍女だったのだからそう思って当然だ。

「ふと、夢を見るのです。奥様が生きていて、今のエレナ様の姿を見て抱きしめる姿を。私はそれを後ろから眺めて微笑んで。」

「お母様、意外と力強かったから私苦しんでたかも。」

「そうかもしれませんね。」

窓の外を見ると三匹鳥たちが楽しそうに鳴いていた。私もあんな風に楽しく学園生活を送れたら。そう思ってしまう。

「さぁ、食堂につきました。皆様がお待ちですよ。」

「うん、行ってくるね。」

私は食堂の扉を開けると可愛い双子たちが抱きついてきた。

「どうしたのサミュエル、メリッサ。」

「お姉さまも学園行っちゃうの?僕寂しい!」

「私は寂しくはありませんわ。ただ、抱きつきたくなっただけです。」

そういうメリッサの瞳には涙が溜まっている。トマスはすでに泣いていた。私を二人を抱きしめる。

「大丈夫。今日は入学式だけですぐに帰ってくるから。」

「本当に?」

「本当。」

二人の頭を撫でながらなんて幸せなんだろうとこの時間を噛み締めていると「メリッサ、トマス。」と低い声で二人の名前が呼ばれた。先に席に座っていたお父様の声だった。

「そうやってエレナを困らせるのはやめなさい。それに屋敷にはお父様がいるだろう。」

「でも、お姉さまはいないもん。」

「お父様はずっといますわ。」

「なんで私じゃなくてエレナなんだ!」

双子に振られたお父様が悔しそうにする。その光景がなんだか面白くて笑ってしまった。それはトマスとメリッサも同じらしく三人で大笑いしてしまった。そのせいでさらにお父様は怒ってしまったが双子がハグをすることでその場はことなきを得た。

遅れてユーシェン様も食堂にやってきた。彼も今日入学するためいつも身につけている凰皇国の伝統衣装ではなく制服を身につけている。

「何やら面白いことがあったようだな。」

「えぇ、それはとても。残念でしたね。ユーシェン様。」

私たちはそれぞれ席につき朝食を食べ始めた。会話は今日行われる入学式のことでもちきりだ。あっという間に朝食の時間も終わり、私は再び自室に戻った。

カバンを持ち、鏡で身だしなみをチェックする。うん、完璧だ。

自身の瞳をじっと見つめる。お母様と同じ薄緑をした瞳はなんだか見ていて安心する。

「お母様、私どうなっちゃうんだろうね。」

鏡に語りかける。返事はない。

「私、死んじゃうのかな。」

「それはない。安心しろ。」

急に目の前にビヤンコもといヴィーヴルが目の前に現れた。思わず驚いて尻餅をついてしまう。

「びっくりさせないでよ!」

「すまないな。お前は死なない。私がいるからな。」

「何?学園までついてくるの?」

「そのつもりだが?」

再び猫の姿に戻る。

「これなら問題ないだろう?」

「問題しかないから!学園に動物は持ち込めないし。ほら、透明化とかできないの?」

「透明化かぁ・・・。仕方ない。それで行こう。」

なぜ猫の姿で学園に行けると思ったのか謎だがヴィーヴルがついてくるのは心強い。味方がいるというだけで心はこんなにも軽くなるものなのか。

「あ、マーシャが呼んでる。」

「それは行った方がいいな。」

そう言うとヴィーヴルの姿は消えた。見えないだけで後ろにはいるだろう。私は急いで自室を飛び出し、転移魔法の部屋へと移動した。


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