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第二十五話 入学式が近づいてきた!

 八月も終わりに差し掛かり、夜は肌寒いことが増えた。先日まで長期休みで家にいたお兄様は九月の進級に向けて一度学園へと戻った。

 私ももうすぐ入学するのか、と思う反面その実感はあまりない。いまだにのんびりとした日々が続いている。変わったことがあるとすればユーシェン様が驚くほどの速さで我が家に馴染んだことぐらい。すでに双子はユーシェン様に懐いており、二人して今日はどっちと過ごすかという微笑ましい内容の喧嘩をしている。それを眺める困った様子のユーシェン様はどこか嬉しそうで見ていてなんだか温かい気持ちになる。

 に二週間後に入学式を控えたある日、学園からの使者が我が家にやってきた。私とユーシェン様の分の制服、鞄、教科書などをおいていくと颯爽と去っていった。マーシャと早速制服を試着してみようという話になり、立派な装飾が施された箱を持ちながら意気揚々と自室へと向かった。

箱を開けるとお兄様が身につけている制服の色と同じチャコールグレーの制服が丁寧に梱包されていた。そっと取り出し、広げると新品のパリッとしたのりの香りが広がった。

 王立学園の女子の制服はチャコールグレーのジャンパースカートに真っ白なブラウス、リボンは一年生の時は白で進級するとコースによってリボンの色が変わる。そしてミニ丈のブレザーには王立学園のエンブレムが金糸で刺繍されていた。

 「まぁ、素敵ですこと。エレナ様早速お召しになってはいかがですか?」

「そうね。早速着てみるわ。」

今着ているドレスを一度脱ぎ、新品の制服に袖を通す。ブラウスとジャンパースカートの胸の辺りが少し苦しい。後でマーシャに調整してもらおう。上からブレザーを羽織り、最後にリボンをつける。双子からの誕生日プレゼントであるブローチをお兄様と同じように真ん中につけるとあっという間にただの子女から学園の生徒へと見た目が変わった。

「マーシャ、どうかしら?」

「とてもよくお似合いでございます。」 「頭はお兄様からのプレゼントされたリボンで高い位置にまとめてもらってもいい?」

「かしこまりました。」

私がそう言うとマーシャはドレッサーの前に座るように促し、櫛を手にとる。慣れた手つきで髪をすいて結い上げていく。

「このお姿をエリーザ様にもお見せしたかったですね。」

ポツリとマーシャが呟いた。

「そうね。ねぇ、マーシャ。後でこの制服を着たままお母様のお墓参りに行きましょう。そうすれば天国のお母様にもこの姿を見せることができるわ。」

「それは名案ですね。ですが、先に旦那様やご兄弟の皆様にこのお姿を見ていただきましょう。」

「そうするわ。」

あっという間に髪型は整えられた。普段とは違い活発な印象がより強くなった気がする。

足元を見るとパンプスのままだった。制服にパンプスはなんだか合わない気がする。私は学園入学に向けて購入したブーツを持ってくるとそれに履き替えた。

鏡で全身を確認する。さっきよりもずっといい。

「それじゃ、私書斎に行ってくるね。」

「お供します。」

私とマーシャは一度部屋を出て、お父様のいる書斎へと向かった。

コンコンとノックをすると扉の向こうから「誰だね?」という声が聞こえた。

「エレナだよ。」

「おぉ、エレナか。入ってきなさい。」

書斎の扉を開け、中に入るとメガネをかけたお父様が書類と睨めっこをしていた。

「エレナ、何か用があるのかい?」

書類から目を離さない。

「お父様に見せたいものがあって。」

そう言って初めてお父様の視線が私に向いた。そしてゆっくりと口を開き、メガネを机の上に置くと私の元に駆け寄ってきた。

「そうか、今日は制服が届く日だったか。」

私の格好を頭の先からつま先までじっくりと見たかと思うとお父様は急に目頭を抑え、泣き始めた。

「お父様、どうしたの?」

「すまない、ただあんなに小さく生まれてきたお前がもうこんなに大きくなったのかと思うと自然と出てきてな。そうか、エレナもそんな歳になったんだな。」

お父様は数分泣いた後、深呼吸をしてマーシャの方へと視線を向けた。

「トマスとメリッサもこの姿を見たいだろうから応接室に来るように言伝を頼む。私とエレナは先に向かう。」

「かしこまりました旦那様。」

マーシャは書斎から出ていった。

「さぁ、私たちも行こう。」

お父様の言葉を合図に私たちは応接室へと向かった。途中、通りがかったメイドにお茶の準備を頼み、先に部屋に着く。私とお父様は向かい合う形で座った。

特に会話もなく、数分が過ぎた頃廊下から誰かが走ってくる音が聞こえた。それを止めようとする使用人の声も聞こえる。そして、勢いよく扉が開いた。

「お姉さまの制服!うわぁ、かっこいいな。お兄様の時もうんとかっこよくて似合ってたけどお姉さまも負けないくらいかっこよくてすごい!」

「トマス、女性への褒める言葉でかっこいいはありませんわ。お姉様、とてもよく似合ってます。」

賑やかな声と共に可愛い双子がやってきた。二人ともすぐにこちらに駆け寄ってくるとぐるぐると回るように私を見たかと思えば急に「回って!」と言われたりなど急に賑やかになった。

そんな雰囲気を感じ取ったのか開きっぱなしだった応接室の扉からひょっこりと同じように制服を身に纏ったユーシェン様とリーハンさんがやってきた。

「一体何の騒ぎだと思ったらエレナ嬢の制服お披露目会だったか。」

「ここにユーシェン様も加われば二人のお披露目会になるよ。」

私がそう言うと少し考えたのち、笑いながらユーシェン様は口を開いた。

「アンドレア殿、家族の団欒を邪魔してすまないが俺も参加してもいいか?」

「もちろんですとも。ユーシェン様も制服がよくお似合いで。」

「ありがとうな、それじゃ失礼するよ。」

そう言いユーシェン様が部屋に入ってきた。途端に双子はユーシェン様の方へと駆け寄り私の時と同じようにぐるぐると見て回ったりしていた。

「ユーシェン様は普段と違う服だから新鮮だね!」

「程よく着崩したその姿かっこいいですわ!」

あの面食いのメリッサにかっこいいと言わしめた。確かにユーシェン様の制服の着こなしは私もかっこいいなと思ってしまうほどだった。

私の制服と同じようなチャコールグレーのブレザーとズボン、ベストを身にまとい、第一ボタンだけをあけ真っ白なネクタイを見苦しくない程度に緩めている。靴は凰皇国でよく見られる刺繍が施された黒いものを履いており、同じ制服のはずなのにユーシェン様には華があった。

みんなで制服のことや学園のことを話しているとちょうどお茶が届いた。そこからはお父様が学生だった頃の話や凰皇国に伝わる伝説の話などをして和やかな時間を過ごした。



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