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第二十四話 謝罪

お婆様とのティータイムを楽しみ、自室へと戻ろうとすると従者と何やら話し込んでいるリーシェン様がいた。大事な話をしていたら申し訳ないためわざと物音を立てる。自然と二人の視線が私に向いた。

「ご機嫌よう、ユーシェン様。屋敷での生活に問題はありませんか?」

自然を装いつつユーシェン様に話しかける。実はずっと気にしてしていることがあるのだ。

「おや、エレナ嬢。午後からは魔法の訓練と聞いていたが終わったのか。」

「うん、さっき終わったところ。」

一国の皇子に向かってため口で話すとはなんとも言い難い気持ちになる。早々に引き上げて自室に戻るとしよう。

「そういえばエレナ嬢は剣術も嗜むのか?」

「なんで知ってるの?」

「午前中に実は訓練場を覗かせてもらってね。トマス君と稽古に励んでいる様子を見たから。まるで二人とも龍が舞うが如く、あそこまで美しく荒々しい戦いは久しぶりに見たよ。」

龍のようにというのはトマスのことを指しているのだろうか。確かにトマスの剣術は素晴らしい。あのアントニオ伯父様も末恐ろし無限の可能性を秘めていると以前話していた。

「そうでしょう?私の弟は可愛いだけじゃなく剣もできてかっこいいのよ。」

私が自慢げにいうとユーシェン様は困ったように頬をかいた。

「トマス君だけじゃなく君もすごかったよ。今度稽古をお願いしたいね。」

「それはさすがに大袈裟すぎるよ。トマスにお願いしな。」

少しばかりの沈黙。私がずっと気にしていたことを話すには絶好のチャンスかもしれない。

「あのさ、ユーシェン様。」

「どうしたんだ?」

「夕食会の時はその、ひどい態度だったでしょう?今更だけどごめんなさい。」

そう言い、頭を下げる。するとすぐにユーシェン様の「顔を上げて」てという声が頭上から聞こえた。

「エレナ嬢は一つ勘違いをしているよ。俺はあの時の反応を何一つ気にしていないし、むしろ」

言葉が途切れる。夕焼けが廊下を照らした。

「可愛らしいと思ったよ。」

「かわっ」

私が狼狽えているのが面白かったのかユーシェン様はニコリと微笑む。その顔は彫刻のように美しく、夕焼けのせいで朱一族特有の炎のような真っ赤な瞳がより鮮明に目に焼き付いて離れない。

「それじゃ俺は失礼するよ。」

「う、うん。私も部屋に戻るね。」

私は廊下を歩いていくユーシェン様の後ろ姿をただ見つめることしかできなかった。

あんなにも美しい男性がいるなんて知らなかった。この気持ちにはきっと名前がある。だけど今は名前をつけるべきじゃない。私にはもっと大切なことがあるのだから。

『二十まで生きられない』

そう言った時のお爺様の重い声が今も頭にこだましている。私はなんとしてでも生き延びてみせる。この手が皺くちゃになるまで。自由に生きてみせる。

手のひらをぎゅっと握った。雑念が消える。私は大丈夫。そう言い聞かせ自室へと歩みを進めた。



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