四、プラモ戦士ホモダム
四、プラモ戦士ホモダム
ピュア・フージェは、次元の裂け目を抜けて、真っ暗な場所に出た。少しして、体の軽い事に気が付いた。そして、「ここって、宇宙?」と、小首を傾いだ。宙に浮くのは、宇宙空間くらいしか思い付かないからだ。
そこへ、イボイボ顔のヘルメットを被った人型の者だった。そして、手前で急停止するなり、「その格好で、うろちょろされると困るなぁ〜。一応、宇宙って設定なんだけどなぁ〜」と、文句を言った。
「これは、ワケピュアの正装よ! それに、設定って、どう言う意味かしら?」と、ピュア・フージェは、つっけんどんに、問い返した。言っている意味が、さっぱりだからだ。
「ここは、SFの世界なんだ。俺は、プラモ戦士ホモダムの主人機のプラモなんだぜ!」と、得意満面に、イボ顔のプラモが、名乗った。
「ふ〜ん。今時、そんな古臭い事を言うなんて、黄文の時代の方かしら?」と、ピュア・フージェは、皮肉った。男性とか、女性とか、言う者は、居ないからだ。
「は? 何を言ってるんだ? 今は、黄文五四年だぞ!」と、イボ顔のプラモが、名乗った。
その瞬間、「茶和じゃないの!」と、ピュア・フージェは、驚嘆した。まさか、過去へ戻るとは、思って居なかったからだ。
「茶和? おかしな事を申すな? ひょっとして、カリン軍のヌータイプ専用の新型か!」と、イボ顔のプラモが、右手で、背中の物を引き抜くなり、身構えた。そして、「このレーザーソードで、叩き切ってやる!」と、宣言した。
「は? 私は、ヌータイプ専用の新型じゃないわよ! それに、私の時代のプラモのレーザーソードは、あなたの持っている物よりも、品質が高いわよ!」と、ピュア・フージェは、指摘した。形状からして、目の前のプラモの持つレーザーソードは、名ばかりのプラッチックの棒でしかないからだ。
「私は、この時代の最先端のプラモだぞ! 設定が、未来の話だからって、適当な事を抜かしてんじゃねぇぞ! このカリンの新型がっ!」と、イボ顔のプラモが、喚いた。
「こういう時こそ、あの技ね」と、ピュア・フージェは、含み笑いをした。敵を落ち着かせる必殺技を使う時だからだ。そして、「ピュア・スッポン!」と、告げた。次の瞬間、右手に、吸盤と羽根の付いたピンクの杖が出現した。
「カリン軍の新兵器!」と、プラモ戦士が、身構えた。
「これで、あなたの負の感情を吸い出してあげるわね」と、ピュア・フージェは、吸盤を向けた。
「やらせはせん! やらせはせんぞ! ヤー!」と、プラモ戦士が、プラッチックの棒で、殴り掛かって来た。
少し後れて、「ええい! ピュア・バキューム!」と、ピュア・フージェも、突進した。刺し違えてでも、負の感情を取り除いやりたいからだ。
程無くして、双方は、相まみえた。
「み、見事だ…」と、プラモ戦士が、プラッチックの棒を手放して、動きを止めた。
「ギリギリだったわね…」と、ピュア・フージェは、安堵した。僅差で、吸盤の部分が、プラモ戦士を捉えていたからだ。そして、力任せに、引っ張った。その直後、プラモ戦士の頭部も、取れてしまった。
「まだだ! ヘッドカメラが、外れただけだ!」と、プラモ戦士の胴体から声がした。
ピュア・フージェは、表情を強張らせた。ゾンビのようなものだからだ。しばらくして、吸盤から外して、頭部を変換した。
プラモ戦士が、受け取るなり、元の場所へ差し込んだ。そして、「首の据わりが、いまいちだな」と、ぼやいた。
「プラモ戦士さん、あなたも、ゲロッピー様から、御力を?」と、ピュア・フージェは、尋ねた。おかしな言動は有るものの、自分のように動いているからだ。
「ゲロッピー? それも、カリン軍の新兵器かい?」と、プラモ戦士が、質問した。
「もう、良いわ」と、ピュア・フージェは、話を打ち切った。説明するのが面倒だからだ。
そこへ、「ピュア・フージェ。お前の居る世界は、お前の存在するの前の時代だ。どうやら、空間が安定しておらんから、裂け目を通っても、魔王の所まで、着けるかどうか、分からんぞ」と、ゲロッピーの声が、裂け目から聞こえた。
「承知しました。でも、私には、ワケピュアの加護が在ります! 冒険に苦難は、付き物ですからね!」と、ピュア・フージェは、力強く返答した。まだ、冒険の始まりに過ぎないからだ。そして、「ゲロッピー様、そこのプラモ戦士へも、御力を御与えなされましたか?」と、問うた。
「いや。私が、力を与えたのは、お前だけだ」と、ゲロッピーが、回答した。そして、「お前に与えた力が、そのプラモ戦士に作用しているのかもな…」と、補足した。
「そうなんですか〜。何だか分かりませんけど、そういう事にして置きますね」と、ピュア・フージェは、聞き入れた。難しい事は、考えたくないからだ。
「私は、いつでも、見守って居るからな」と、ゲロッピーが、口にした。
「えーと。カリン軍のエースさんよ。誰と話して居たんだ?」と、プラモ戦士が、尋ねた。
「私は、カリン軍じゃなくて、ピュア・フージェよ! さっき話して居たのは、ワケピュアの力を与えてくれたゲロッピー様よ」と、ピュア・フージェは、説明した。ゲロッピーは、ワケピュアの使徒だと信じているからだ。
「どうやら、カリン軍は、もう居ないみたいだから、フージェの冒険に、付き合わせてくれないか?」と、プラモ戦士が、申し出た。
「そうねぇ。あんたでも、居ないよりはマシね。宜しくね」と、ピュア・フージェは、承諾した。ヤバくなったら、盾代わりにするつもりだからだ。
「へ、レーザーソードとビームタネガシマで、巨大な敵を撃ち落としてやるから、任せな!」と、プラモ戦士が、意気込むのだった。