三、はたして…
三、はたして…
ゲロッピーの放った紫の霧は、次元の裂け目を通り抜け、旨い具合に、無色透明となって、三次元の空気に馴染んだ。そして、螺髪頭の男性の持つ魔法少女の人形ピュア・フージェへ、宿った。
螺髪頭の男性が、気付く事も無かった。そして、勘定を済ませて、ルンルン気分で、店を後にした。
その直後、何かが飛来するなり、爆発が起きた。
螺髪頭の男性とピュア・フージェの人形が、瞬く間に、爆風に巻き込まれてしまった。
ゲロッピーは、固唾を飲んだ。四次元パワーを宿した人形の安否が、気になったからだ。
しばらくして、視界が良好になった。
先刻とは違って、景色が、廃墟へと一変していた。
「くそっ! 兵器工場と知っての攻撃か!」と、ゲロッピーは、憤慨した。結果を知る前に、台無しにされたからだ。その直後、背後に、何かしらの気配を感じた。そして、振り返った。その瞬間、「…っ!」と、息を呑んだ。まさか、四次元パワーを注入した人形が、次元を越えて、転移して居たからだ。
「私は、ピュア・フージェ! 何だか判らないけど、ここは、何処?」と、人形が、名乗った。
「それが、お前の名前か?」と、ゲロッピーは、尋ねた。そして、口元を綻ばせた。四次元パワーの影響で、覚醒したと考えられるからだ。
「ええ。そうよ」と、ピュア・フージェが、力強く頷いた。そして、「あなたは、誰なの?」と、問うた。
「私は、ゲロッピー。お前に、力を与えし者だ」と、ゲロッピーは、口にした。嘘ではないからだ。
「ワケピュアの力は、ゲロッピーさんのお陰って事かしら?」と、ピュア・フージェが、好奇の眼差しを向けた。
「お前に、力を与えたのは、間違い無いが、ワケピュアとかいう力じゃないぞ」と、ゲロッピーは、回答した。ワケピュアの力とは、別物だからだ。そして、「ここは、お前の居た次元とは、別だぞ」と、言葉を続けた。
「ええーっ! ウッソーッ!」と、ピュア・フージェが、素っ頓狂な声を発した。
「お前は、何者かの攻撃で、この次元へ跳ばされたようだな…」と、ゲロッピーは、見解を補足した。現時点では、何者か、判らないからだ。
「ひょっとして、ホッテル・テン・ゴークを乗っ取った魔王ゲスホーマーね!」と、ピュア・フージェが、断言した。
「そ、そうだ! その魔王の仕業だ!」と、ゲロッピーは、乗っかった。否定するのも、面倒臭いからだ。そして、「この次元を、ホッテル・テン・ゴークのようにしない為に、魔王を倒してくれ」と、丸投げした。その気にさせておけば、勝手に行き着くだろうからだ。
「ゲロッピー様、どうすれば、私の世界へ戻れますか?」と、ピュア・フージェが、質問した。
「取り敢えず、そこの裂け目から、行くと良いだろう」と、ゲロッピーは、眼前の裂け目を、右手で指した。この裂け目からしか、通れないからだ。
「分かりましわ。では、魔王をやっつけて参りますわ!」と、ピュア・フージェが、意気込んだ。そして、裂け目へ飛び込んだ。
「はたして…」と、ゲロッピーは、表情を曇らせた。魔王の所まで、旨く出られるとは、考えられないからだ。そして、裂け目を注視するのだった。