二、紫の霧
二、紫の霧
ゲロッピーは、三次元の動植物を模した物質に、着目した。それらは、三次元人の格好こそ似ているのだが、違和感が有った。そして、「三次元人は、何の目的で、大量の物を置いているのだ? まさか、色んな次元へ送り込む為の兵士とか…」と、戦慄した。生命を吹き込む前の肉体とも考えられるからだ。
そこへ、ニキビ顔の螺髪頭で、三次元人の顔が胸に描かれた衣服と綻びの目立つズボンの者が、三次元人を模した物質を観察し始めた。
「奴め、兵士の選定でも始めているのか?」と、ゲロッピーは、眉間に皺を寄せた。何処かの次元へ送り込む為の選定かも知れないからだ。そして、「先を越されては、厄介だ。のんびりと選んでいる暇は、無さそうだな」と、口にした。ニキビ顔の者に、先手を打たれれば、どんな事になるか、判らないからだ。そして、「駄目元で、パワーを送ってみるとしよう」と、裂け目へ向けて、両腕を伸ばして、手の平を翳した。四次元では、当たり前の行為なのだが、三次元では、通用するのか、判らないからだ。間も無く、手の平から、紫色の霧状の物質が、次元の裂け目へ吸い込まれるのだった。