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底固め

 送った資料は概ね好評だった。

 ベンチャー企業は会社の看板で勝手に仕事が舞い込んでくるような大手と比べると、個人の営業力が求められる。

 そんな環境でエンジニアをしながら案件をもぎ取っているようなひとたちだ。彼らからのお墨付きはとても心強い。


 ウリからは、内容については良くできているとお褒めの言葉をもらえた。

 計画の骨子はがんちゃんが作ったことを伝えると驚いていた。


 がんちゃんが認められるのはなんだか誇らしい気持ちになる。

 名門私立の小学校や中学校の受験に成功した子を持つ親の気持ちが少しわかりそうだ。


 ウリからのアドバイスとして、「意図を持ったデザイン」と「意思を持ったコピー」についての教えを受けた。

 誰に、何を伝えたいのか。どう思わせ、どう言う行動を取らせたいのか。

 目線の誘導。視認性。色の持つ印象。

 枠の形や線の太さ、位置や大きさなど、細かいところをひとつひとつ変えていくと、内容は変わらないのにぐっと印象深くなった。


 PowerPointで作る資料で素人っぽさを抜くのは難しいと考えていたが、そんなことはないようだ。

 懸念があるとすれば、学生らしさが感じられないとか、どこかプロに頼んだのではと思われてしまうことくらいか。

 最近はプロ顔負けの資料を作ったりプレゼンをする学生もいるし、そもそも学校の宿題ではない。

 担当はひとりの人間としては、学生を応援したいと言う思いを持ってくれるかもしれないが、あくまでも会社として費用を出せるかどうかを判断する身だ。判断材料としては提案の内容や精度を優先するはずだ。


 心を打つのはプレゼンをするがんちゃんの役割だ。

 その土台となる内容に関しては、出来る限り盤石なものをつくりたい。



 提案は具体的なほど、受け手にイメージしてもらいやすい。

 自分がその商品を使っている姿、使って満足している姿を、より鮮明にイメージさせられた方が購入に繋がりやすいのと同様だ。


 企画の内訳自体、すでにそれなりに具体的だが、もっと詰められないだろうか。


『TA+d』の先輩から、阿波ゼルコーバの選手に関するリストが届いた。なんと独自の調査で、キャラクター性を評価したリストだ。

 非公式なもので、多分に主観が混ざっているそうだが、ファンの声や評判を中心に集めた情報からまとめられた表だから、信頼度は低くないと思われた。


 サンバパフォーマンスに巻き込む想定の、ダンスに長けた選手とお調子者の選手を、資料に仮想パフォーマーとして落とし込む。

 単なる提案が、実際に対象の選手が踊ったり、ふざけたりしている場面が思い描けるようなものになった。

 提案書としては、選手やチームの都合や判断もあるだろうから、それぞれにそのほかの候補も複数名載せておく。



 期待できる効果については、多少盛っても良いだろう。ただし、妥当性と根拠は必要だ。ウリに評価をお願いしておく。

 一方、チームの支出は精緻に計算しつつ、余裕を持った予算組みをしておく。支出額と提案額のうちチームに入る額のバランスも見る。

 ハルは赤字にさえならなければ利益は求めないとは言っていたが、これはおこぼれやお情けではなく、きちんとチームにとって益になるイベントにしなくてはならない。


 がんちゃんの目算は、これもまた妥当と言えた。

 そこから更に厳密に計算し細かい額を算出する。

 予測も多分に含んだ見積額だ。これが適正か、漏れがないか、そこもウリに診てもらおう。






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