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失意のがんちゃん (LINK:primeira desejo68〜70)

 がんちゃんは、私がいないときに両親に、イベント出演の可否についての相談をしたそうだ。


 怪我の状況。痛みはないが違和感は残っていたこと。

 その状態に関する医師としての所見と判断。イベント出演は完治を条件としており、医師としては大事を取ってもらいたいと言われていること。


 何も包み隠さず、表現に工夫もせず、真っ直ぐ真っ向から現在の状況を伝えた。

 そのうえで、イベントに出演したいという気持ちがあり、そのことを医師でもあるチームの代表者からは、本人の考えを尊重すると言われていること、一方、保護者の承諾映えるように言われていることを伝えた。


 正しく、潔い。しかし、自身の思惑を通すという点で言えば、適切とは言い難い。

 真摯に向かい合えば、通じる、伝わる、届くと、思ったのかもしれない。

 だからがんちゃんは、敢えてひとりで挑んだのだ。私が不在の時に。きっとその方が、真剣な気持ちが伝わると思ったのだろう。


 母は、そういう者ではないのに。


 しかし純粋ながんちゃんには、大人への期待があった。

 真剣で真摯で一生懸命で、懸念点なども織り込んだ計画がしっかりとあれば、大人は認めてくれるだろうという期待が。

 最近『ソルエス』の良い大人たちに触れ過ぎたのもがんちゃんに期待を抱かせた一因か。


 両親もまた、がんちゃんの思い描く大人のひとりであるという期待が、そう在って欲しいという想いが、まだがんちゃんの思春期の柔らかな心の奥底に、きっと残されていたのだ。

 そうだとするなら、微かに残っていた淡い母への想い。幼子が持つ母に対して抱く全面的な甘えや期待の情の名残。その最後の一片は、がんちゃんのなかで砕け散ったのだろう。


 ことの顛末を私に伝えに来たがんちゃんは、怒りの表情も口惜しさの表情も、悲しみの表情も浮かべてはいなかった。虚無でもない。

 うっすらと乾いた笑みすら浮かべ、「ごめん、だめになっちゃった」と、軽い感じで言っていた。

 諦めたものに執着さえ無くした様子はある種悟ったようにさえ見え、却って痛々しい。



 私に謝らなくったって良いんだよ。

 悔しいなら、悲しいなら、もっと感情を出したって良いんだよ。




 子どもが感情ひとつ吐き出せない。吐き出す気にすらなれないなんて、健全ではない。


 なにより、がんちゃんが持つに至った望みと、望みを得るために払った尽力への結果がこれなんて、私は認めない。


 がんちゃんにこんな顔をさせたままになんて、想いをさせたままになんて、私がさせるものか。

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