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私のワーク

 部屋に入り、いくつかあるチェアのうちのひとつに荷物を置いた。


 三十㎡ほどの室内は北欧風なテイストでコーディネートされている。

 全体的にホワイトを基調としていて明るい。いくつかあるチェアとひとり掛けソファ、サイドテーブルはバーミリオンで華やかなアクセントとなっている。


 いつも使っているこのレンタルスタジオは、一時間当たり千円強と利用しやすい価格ながら、キッチンや冷蔵庫などの他、基本的な撮影機材にWi-Fiも完備していて何の不足もない。



 ライトやレフ版などを調整し、持ち込んだ映像撮影用のカメラとマイクをセッティングする。

 続いて、楽器を出し、チューニングをする。今日はクラリネットだ。



 元々は、ブラスバンド部時代にこのレンタルスタジオを借りて自主練習をしていた。

 せっかくスタジオなのだからと、現役ブラスバンド部員の練習風景という趣旨の動画を撮影し、アップしてみたところ、なんてことのないただの練習風景でありながら少しずつフォロワーが増えていった。


 卒業し、部活動は終わったが、楽器の練習自体は続けていて、そのうちちょっとした企画動画を撮るようになった。


 チャンネル名を「現役ブラバン部員の練習動画」という何のひねりも無いものから、「INORI 【preying playing】/いのりの演奏」と、ちょっとだけ配信者感を意識した名前に変え、単なる練習の他、人気の曲や有名な曲から、誰もが聞いたことのある呼び出しのメロディやキャッチ音、有名なゲームやCMの音楽をアレンジしたものなどを演奏し、撮影したものを配信していた。


 英語の練習を兼ねて、演奏方法動画を日本語版/英語版でつくってみたり、楽器のメンテナンスの仕方を動画にしてみたりと、色々やっているうちにいつの間にか収益化できるくらいになっていた。

 内容自体新規性も独自性もないものだったが、むしろ奇を衒っていない分ストレートなニーズに応えられたためか、評価はおおむね悪くは無かった。

 それなりに広がった要因は、いわゆるインフルエンサーと言えるクラスのひとがフォローやアクションをしてくれたという運にも助けられた部分も大きい。


 とはいえ、今のところは企業案件が舞い込んできたり、ライブ配信で投げ銭をいただいて稼げるほどの格ではなく、視聴数の収益はスタジオ代などの経費を払えば赤字にはならない程度だ。


 稼ぐというのは動画配信のことではない。

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