帰路
練習を終えると、すぐに練習場は閉館時間となるため、興奮も冷めやらぬ中、皆一斉に会場の片付けをしたり着替えたりして速やかに退館準備を整える。
前回は地上の駐車場を使ったが、今回はメンバーのみんなに倣い練習場に直結している地下の駐車場に車を停めておいた。
カーナビの目的地に自宅を設定する。
「じゃ、出るよー」
助手席のがんこが練習で飲み切らなかったドリンクの入ったストロー付きボトルのストローを咥えたまま頷いた。
かわい。
夜間の生活道路は街灯の明かりが乏しかったり、通行人や猫などが不意に現れたり、急に細い道が有ったり、一方通行迷路に迷い込んだりするのであまり好きではない。
なので可能な限り名前のついている街道を使うようにしている。多少遠回りになっても。
いつかは裏道を使いこなせるようになるのだろうか。これから頻繁に通うことになる練習場から家への帰路くらいは、少なくともカーナビに頼らないで帰れるくらいにはなっておきたい。
みんな一斉に帰るので、車組は駐車場出口で列になる。駐車料金を支払いまっすぐ行くと出入口がT字路の形になっていて、家の方向によりそれぞれ左右に分かれて帰っていく。右に行く私の車の左隣には左に行く車がいた。助手席のがんちゃんが窓越しに手を振っている。隣の車の運転席の女性も手を振っていた。少し遠いが私も手を振る。
「ダンサーの方だよね? 何方だっけ?」
「サラさんだよ」
ピンとこない。顔と名前が一致しないというよりも、まだまだ名前も覚えきれていない。
信号が変わり車を右に曲げると、駅に向かう徒歩組が歩道を歩いているのが見えた。軽くクラクションを鳴らして挨拶をする。
助手席のがんちゃんが歩道に向けてまた窓越しに手を振っていた。
練習場から駅までは歩くと十分強かかる。練習で疲れ切った身体では少々酷な道程だ。女性の多いチームだから、夜道と言うのも気になる。途中には道が細く車道にかなり近い箇所もある。そんな道なのに妙にスピードを出している車も多くあった。
回数としては一、二回だが、この道行きをがんちゃんは大きな楽器を引っ張って行き来していたのか。
楽器はテッチャンに預けられる約束はしていたようだが、私の方で持ち運びできる状況になったのは本当に良かった。




