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エンサイオ

 るいぷるには振り回されたが、結果としては良い時間が過ごせた。



 ハルがやってきてウリとアキにポジションの指示を出している。

 そろそろ練習再開のようだ。気づいたらバテリアメンバーもほとんど位置についている。


 いけない。教えてもらう身なら準備は万端でないと。



 慌てて先ほどセッティングを終えておいた借り物のスルドの前に戻る。

「よろしくお願いします」


 チカに改めて挨拶をした。

 チカからは、とにかく同じように叩くよう指示があった。


「余裕がありそうだったら複雑な叩き方もやってみるから、できそうだったらやってみてね」


 チカが言い終わるのを待っていたかのように、指揮を執る『ヂレトール』サエコのポルトガル語のカウントが場内に響いた。


 続いてスルドが、連なるように他の楽器たちが、高音と低音のアンサンブルを奏でる。

 ブラスバンドの大編成に比べればごく少数なのに、音に質量があるのではと思えるほどの音の圧に、地面を足でしっかりと掴んでいないと魂が吹き飛ばされるような感覚があった。たまげるが魂消ると書く所以を知れた気がした。


 サエコは細身の女性ながら指揮はパワフルで、時折ジャンプしながら両腕を振るっている。

 その激しさをバテリアが音で具現化しているようだ。

 並びにいるがんこを横目で見る。小さな身体で懸命にマレットを叩き、バテリアが響かせているこの音の、確実に一部となっていた。


 震える!

 がんちゃん、格好良いよ!


 低音を担う三つのパートに分かれるスルド。

 今日の参加メンバーでは、プリメイラをジャックとがんちゃん。セグンダをチカと私、テルセイラをキョウさんとソータが担っていた。バランスとしてはテルセイラはプリメイラやセグンダよりも人数が必要らしい。人数の少なさをふたりは手数で補っていた。

 がんちゃんと私が入る前は、バテリアは比較的年配のメンバーが多かった。そんななかではソータは若手の方だった。



 中太鼓の『ヘピニキ』、小太鼓の『カイシャ』、片手で持てるほどの小型の太鼓の『タンボリン』と、小さくなるごとに高い音や早い音を担う。

 ジングルがたくさんついた『ショカーリョ』はシャカシャカした金属音を加える。

 いずれも、スルドに負けないくらい大きな音が鳴る。


 大きい音同士が重なって、これほどまでに一体感が出るものなのかと驚いた。


 私もその一部に加わりたい。今はとにかくチカを真似て叩いた。チカのいう複雑な叩き方も、そつなくこなせたと思う。それはトレースであって、クリエイションではない。

 今日のところはそれで良い。初日でみんなの一部になれるなど思い上がってはいない。

 だけどできるだけはやく、この隊の一部、この音の一部となってみたかった。


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