セグンダ
チカさんの話を聴き、スルドと言う楽器ひとつとっても奥が深いと思った。
ブラスバンドでいえば、例えばテナーホーンの中にソロホルン、ファーストホルン、セカンドホルンといったように、役割を分けた奏者が存在しているのに近いだろうか。
せっかくがんちゃんと同じ楽器を選ぶのだ。役割も同じにして、プリメイラが良いかな。
チカさんの問いかけに「そうですねぇ」と答えながら考えてみた。
音とリズムと身体の動きはいつのまにか馴染んできていて、会話や思考にリソースを割きやすくなっていた。
チカさんの説明は続く。
プリメイラは強い低音を叩く、まさにリズムの基礎を担う。
プリメイラは「呼びかけ」なのだと言う。
その呼びかけに「応え」るのが、高音を担うセグンダ。
そして問と答えの合間に「合いの手」をいれるテルセイラ。
この関係性を聞いた時、私の心は決まった。
がんちゃんの「呼びかけ」には、私が「応え」たい。
ちかさんにはゆくゆくと言われたが、早くも志望を決めたことを伝えると、チカさんはにっこり微笑んだ。
「私もセグンダだから、セグンダ特有の突っ込んだところも教えるね」
僥倖だ。
浮き立つ気持ちのまま、ミーティングが始まった。
私がこれほど内面の感情の動きを実感するなんて。これがサンバの持つ力か。
ミーティングはダンサーの練習場で、一旦練習をやめ車座になって座り、ハルさんが立ったまま連絡事項などを伝える。他にも話す必要がある者がいれば、該当者は立ち上がって皆に向かい話す。
「さて、新規入会者を紹介しよう。知っている者もあるかもしれないな。先日挨拶がてら体験してくれた祷さん。がんちゃんのお姉さんだ」
ハルさんに促され、私は立って挨拶をした。
「こんばんは、姫田祷です。先日はお世話になりました。
体験ではじめてサンバに触れましたが打楽器が気持ちよくて、またやってみたくなり入会させていただきました。
打楽器はブラスバンド部でバスドラムの経験があります。
がんこと同じスルドで、セグンダをやってみたいと思っています。
サンバネームは『いのり』にします。
姉妹ともどもよろしくお願いします!」
拍手に包まれながらお辞儀をして座った。
「もうセグンダってところまで決めてあるのか。決断が早い者は得る物の多い人生となるだろう。
『ソルエス』の基礎を担うメンバーに、がんちゃん同様、希望と可能性の塊たる若き魂が加わることになる。『ソルエス』の輝きは、更なる高みへと臨むだろう」
ハルはよくわからないことを言っていたが、歓迎してもらえていることはわかった。
これで私は正式に入会となった。
もうお客様ではない。メンバーのみんなとの距離感を少し縮めても良いだろう。基本的には登録名たるサンバネームに準じた呼び方に変えることにした。




