出陣!(LINK:primeira desejo 134)
フィールドには特設ステージがセッティングされていた。ステージはかなり広い。
ステージには野外フェス顔負けのスピーカーの量が据え付けられていた。
ステージ上では私たちの他にも音楽系のパフォーマンスが行われる予定だ。
サンバ隊控え室の隣の控室には『阿波ゼルコーバ』のチアリーディングチーム『ゼルコーバチアーズ』の名前があったし、他にもカラオケ企画など、音楽を用いたものがあると聞いている。
ステージの後部にはビックバンドか吹奏楽団でもくるのだろうか、楽器や楽譜台が並んでいた。
ステージの前方は会議室用のテーブルとパイプ椅子。きちんとチームロゴが印刷されたテーブルクロスと椅子カバーで装飾されている。そして、マイクスタンドがいくつか。
司会者が選手と何らかのやり取りやステージ上でやる何らかの企画などで使用するのだろう。
客席はステージ前にパイプ椅子が並べられている。スタジアムの観覧席を使うわけではないが、それでも野外でこの広さだ。普段のステージのイベントとは趣が異なるだろう。出演し慣れているはずのベテラン勢も、興奮気味だ。
客席の数も多く、スタジアムよりも目の前のため、観客の目を意識しやすい分却ってメンタルコントロールは問われるかもしれない。
客席周りにはキッチンカーが何台か止められ、それぞれ準備を進めていた。観客が購入するのだろうが、イベント中に席を立って自由に買って良いのだろうか。始まったら通しのイベントだから、おそらく立ち歩きは比較的自由なのだろう。
フィールドを視認しながら、私たちは井村さんに連れられて待機スペースへと入る。
会議室のような部屋で、ドリンクやお菓子、軽食も用意されていた。壁に掛けられたモニターはステージを映していて、ステージ上で進められる準備の様子が流れていた。
開始までは一時間弱。開始後も私たちの出番は比較的後半だ。
それでも、きっと出番までは一瞬だろう。
開会式は簡単に済まされ、流れるように企画に入っていった。
最初はキッチンカーの紹介だった。キッチンカーが呼ばれたのではなく、地元を代表する飲食店やご当地グルメを、今日だけの特別仕様でキッチンカー化し、この場に集ったという形らしい。
地元密着型のサッカーチームの地元ファン向けのイベントだ。一方で、地元の魅力を外へ発信する場でもある。そういう意図で用意されたコーナーだろう。
サッカー選手がキッチンカーの提供するグルメを食し、感想を言っている。
続くクイズや抽選会のようなコーナーが流れるように終わっていく。
気付けば中締めに相当するチアリーディングのダンスショーだ。そして、チアたちの演技終了と重なるように私たちの出番へと繋がる。
スタジアムからは軽快な音楽と、音楽の音量を上回る歓声が上がった。
控室のモニターにはステージ上に両腕を振りながら躍動感たっぷりに登場してくるチアダンサーたちの姿があった。
「よし、いくか!」
ハルの声に応じ、私たちはスタンバイエリアに移動する。
みんな一様に気合充分だ。
隣のがんちゃんの表情を窺うと、なんだか凛々しい感じになっていた。メイクも決まっている。
良いね、私も身体の裡から闘志のようなものが湧いてきた。