転がるトーク
「じゃールイはどーなのさ」
総ツッコミを受けたがんちゃんがすこし膨れ、プリッツを齧りながらルイに振る。
かわーっ‼︎
「わたしも別に、今は未だ良いかなぁ。別に要らないわけじゃないし、つくりたくないわけじゃないから、良い巡り合わせがあればわからないけど、今のところ積極的に作ろうとは思わないし、把握している範囲で恋人になりたいなって思うひとも……まあいないかな」
「まじめ!」
「ん……ちょっと間が気になる。誰かのことは一瞬思い浮かべたよね?」
「えー、まあ、周囲の全員だよ。良いひとも格好良いひとも素敵なひとも多いから、付き合いたくない、恋人になりたくないって言いきっちゃうのはニュアンス違うかなーと思って。でも、恋人になりたい! って思えるひとが今時点でいるかと言われれば、そこまでではないから、まあ、って感じ」
「やっぱまじめ!」
「積極的にってつけてるのがやっぱ気になる! 自分から行く気はないけど、こられたらやぶさかじゃない的な?」
「あー、まあ、それはそうならないとわかんないなぁ。そうなったときに考える」
「やっぱまじめ!」
「ひいそれしか言えなくなったん?」
「でも、適当な話題でもルイって真摯に答えるよね」
「マルガの娘とはとても思えない」
「マルガって元ギャル感あるけど、結構まじめだよ?」
「むしろギャルってある意味まじめじゃない?」
「あ、なんとなくわかるー」
「ルイ、アリスン、がんちゃん、うちら『男なんかにうつつ抜かさないちゃんとしてる軍団』同盟組もうよ!」
「軍団と同盟って一緒にいて良い言葉だっけ?」
「ちょっと待ってよ! わたし別にうつつ抜かしてるわけじゃない!」
「でもカレシいたじゃん」
「ひいがカレシいないのはもてないからでしょ? いたかどうかは結果であって、うつつを抜かして無ければ良いんじゃないの?」
「え、みことその変な軍団同盟入りたいの?」
「そこに入るのって、何か大切な物を捨ててしまう気がする」
「入りたいわけじゃないけど最初から選択肢がないのが気に入らない」
「わたし別に大切なもの捨ててない」
「がんちゃん、入ろうって誘われてるだけだから。まだ入ってるわけじゃないから安心して」
「もてないって言った‼︎ 宣戦布告かこのやろう⁉︎ 聞いたでしょ⁉︎ これが男うつつ格差よ!」
「なにその言葉?」
全員未成年で、やっぱり真面目だからか誰もお酒などは飲んでいない。
酔っ払ってもいないのに、深夜のテンションでIQがかなり低くなっている会話の応酬に、みんなバカみたいに笑っている。
笑いの沸点が低くなっているのも夜中ならではだからだろうか。
それもある。
でも、このたまたま同じサークルに所属したというだけの関係性のメンバーが、個性も価値観も背景も異なるメンバー同士が、いつの間にかそれぞれがかけがえのない仲間になっているから、なんでもない会話が、こんなにも楽しいのだ。
いや、なんでもない会話をこれほど続けられる関係性こそが尊いのかもしれない。