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続けることの難しさ(LINK:primeira desejo 123)

 演者組はステージ裏でスタンバイ中。


 裏からでも客席は見え、がんちゃんの同級生三人は周りのブラジレイラに混ざって奇声を上げている。知らないブラジル人と友達のような感じになっていた。

 そのノリの良さには心強ささえ感じた。



 三人とも部活には入っていないらしい。

 これだけノリが良く、サンバを初見で楽しめている。三人ともサンバを始めてくれないだろうか。


 がんちゃんによれば、三人とも住んでいる場所が少し遠いようで、通うのが厳しいということだった。また、部活をやっていない理由にも直結している彼女たちの最優先事項は、「今の内に遊び倒す」だった。

 二年生になったらガチめに受験勉強に入るつもりのようで、予備校も決めてあるらしい。

 なので、一年生の内はとにかく悔いの残らないように遊ぶと決めているのだ。

 その方針に基づき、部活やサークル活動への参加は控えているのだそう。活動が遊びに匹敵するほどの愉しみが見出せるなら、選択肢に入り得るとも思えるが、どちらにせよ二年生になったらいったん離れなくてはならない。


 部活なら、主力の年になった途端止めることが決まっていたら、モチベーションを保つのは難しいだろう。

 サンバにしても、オフシーズンに入会して、出演イベントが発生してくる年度明けから受験が終わるまで約二年間退くことになる。

 それであれば、どうせ入るなら受験が終わった後、落ち着いてからということになるだろう。



 学生は数年で環境が変わっていく。

 そういう意味では学生メンバーのキープは比較的難易度の高い課題と言えるだろう。


 実際、中学への進学や、部活の入部、高校受験を機に退会してしまったメンバーも居たらしい。

 それでも、続けている者もいるという事実は、課題解決のヒントになるはずだ。


 身近な例だと、ほづみは幼い頃から所属していて、受験を経て大学生の今に至るまで、基本的には入会状態を維持していたようだ。勿論、時期によっては練習やイベントへの参加は控えていただろうが、完全に休む期間は設けていなかったらしい。

 数年後に控えている就職活動や、社会人になるタイミングで、入社した企業の出勤場所や働き方、業界の慣習によっては参加の仕方も変わってくるが、今時点でのほづみの考えとしては、サンバ活動に支障のない就職先を選ぶという決意を固めていた。


 マルガの娘で、がんちゃんと同じ年齢の学生ダンサーであるルイも十四歳の頃から二十歳までの、サンビスタとしての活動の仕方をライフステージに合わせながら計画を立てているのだという。

 彼女は母に倣って物心ついてから『ソルエス』でダンサーとして活動していた生粋のサンビスタだ。

 学生メンバーの中では比較的ストイックなタイプのダンサーで、サンバ歴も実力も、ひいやみことなど粒ぞろいな『ソルエス』の学生ダンサーにあって、頭一つ抜けた『ソルエス』全ダンサーでみてもトップクラスのダンサーだ。



 辞めてしまった者と続けている者。

 その差はモチベーションの差と、安易に評価することはできる。が、それをそのまま捨て置くのもロスが多いように思えた。


 モチベーションを上げる、生活に於ける優先順位を上げてもらう。

 いろいろな環境や状況にも依るだろうから、簡単なことではないが、チームとして、サンバを続けたいと思える土台、サンバを続けやすくする土台を整える方策を考えてみても良いかもしれない。



 またやりたいことが増えてしまった。

 が、それは少し先の楽しみだ。

 今は目の前のやるべきことを大いに楽しませてもらおう。


『ソルエス』のスルド奏者としてのデビューはもう少し先だが、人前でスルドを演奏するのはここが初めてだ。


 本場ブラジル出身のサンバを楽しむ人たちの前で、どこまでできるか。やってみよう!

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