表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/215

事件現場

 がんちゃんがスタジオルームに入ってきた。ばらされたスルドを前に考え込んでいる私を見て不思議そうな顔をしている。

 そんながんちゃんもかわいいが、さて、どうしたものか。



「こんにちはー。お招きありがとう!」



 がんちゃんが連れてきたのはほづみとひいの姉妹だ。


 ほづみが笑顔で入ってきた。紙袋を渡してくれる。手土産なのだそう。

 仲間同士だし学生同士だし友達同士だから正直気は使ってほしくないが、母親に無理やり持たされたそうで、お菓子だから後で一緒に食べようと言ってくれた。



 今日は井村さんと少しだけ打ち合わせがある。

 阿波ゼルコーバ感謝イベントの構成がおおよそ決まり、サンバパフォーマンスの枠の時間とプログラム位置に関する具体的な双方の要望の擦り合わせと、パフォーマンス以外の部分でどれだけ関われるかの協議を行う。


 出演時間に関してはほぼ確定しており、その前提で構成は組まれつつある。

 どのタイミングになるかは、演出の細かいところには影響があるかもしれないが、大枠のところではあまり影響はない。

 パフォーマンス以外のところに関してもおまけなので、双方やり良いように決めれば良いだけだ。

 なので、私のみでも事足りるのだが、ほづみとひいも同席したいと言っていて、せっかくだし、そのためだけに集まるのももったいないからと、まだほとんどスケルトン状態ではあるが、スタジオルームのお披露目も兼ねて、パゴーヂ的な感じで遊ぼうということになったのだ。


 これは、先日のプレゼンに於いて感触を得た、最少ユニットによる営業も視野に入れた動きとなる。



 手に入れたばかりのスルドの研究に勤しんでいた私に気を使ってか、がんちゃんがほづみとひいを駅に迎えに行く役を買って出てくれたのだった。

 尚、この後部活を終えたルイとアリスン、みことも合流する予定だ。その時にも迎えに行ってくれると言っていた。

 なんだか不信感を顕わにしているがんちゃんは、ふざけているなら私が車で迎えに行けば良かったのにとでも言いたそうだ。かわいい。あと私は別にふざけてなどいない。



「こんにちはー! えっ、なにこれ⁉︎ いのりスルド壊したの⁉︎」


 ほづみの後について入ってきたひい。開口一番、誤解のある言葉を紡ぐ。



 壊したわけじゃ、ないよ?



「あはははははっ! スルドの事件現場じゃん‼︎」



 事件なんて、起きていないよ?



「ちょっと、ひいっ……!」



「え、え、いのりマジで⁉︎ 殺スルド事件⁉︎ うはは! うける‼︎」



「ひいちゃん! 言葉、つつしも?」



 ひいはわかってないなぁ。わからないなら、わからせてあげないといけないかな?


 道具を理解するなら構造を理解しないと。構造を理解するならばらし、組み立てないと。

 道具の機能に、何故そのような結果をもたらせるのかも考えもせず疑問も持たず、ただ漫然と使うだけだなんて、ねえ?


 例えば、そうね。ひいのスマホ、ばらばらにしてやろうかしら?



「いのり? それ、直すんだよね? 手伝おうか?」



 私から不穏な雰囲気でも立ち上っていたのだろうか?

 


「ありがと。まああとでチカに連絡して訊きながら直すよ。パゴーヂだったらスルドよりもパンデイロの方が良いからね。この前買ったパンデイロ、結構鳴らせるようになったんだー」



「う、うん。そうなんだ......」



 爽やかな笑顔で言ったつもりだが、ほづみはやや気圧されたような顔をしている。

 いけないいけない。ゲストに気を遣わせるなどホスト失格だ。さあ、リカバーするぞ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ