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続いてはステージ(LINK:primeira desejo 112)

 パレード中は給水を受けにくいバテリアや年少のダンサーから優先に給水をする。

 バテリアは休息もそこそこに、ステージ上で隊列を組み始める。

 バンドの準備が整ったらすぐに演奏が始まる予定だ。



 バテリアはなかなか忙しい。



 ダンサーは舞台袖に集まり、なんとなく出演の演目順に固まって並んでいる。


 がんこがクリアンサスのゆうに心配そうに声をかけていた。

 どうも靴擦れを起こしてしまったようだ。



「がんちゃん、そのまま足首固定してて」



 がんことゆうのもとへ駆け寄る。

 スタッフ用のカバンの中からテーピングと消毒液を取り出す。

 幹部は少し血が滲んでいた。ゆうに声をかけながら消毒液を塗る。少し染みていそうだが、表情が少し歪んだだけで声も上げない。

 テーピングで患部を保護した。



「シューズ履ける?」


「うん」


 シューズが患部を擦らないように、密着するように履かせる。


「どう?」


「大丈夫、痛くない。これなら踊れる!」



 良かった。



「がんばって! でも無理しちゃだめだよ」と送り出す。ゆうは私とがんちゃんに「ありがとう!」とお礼を言って同じタイミングで出る予定のクリアンサスの仲間の元に戻って行った。



 司会者が『ソルエス』の紹介をしてくれている。

 これは時間にして五分もないはずだ。


 ステージが始まる。



「ソルエスのみなさん、どうぞー!」の声に被せるように『カバキーニョ』の軽快な前奏が大きなスピーカーから会場に向かって放たれる。



 これは、昂るね......! 



 演奏にヂレトールのホイッスルが重なり、バテリアの音が加わる。

 歌い手『カントーラ』のゆきえとアリスンのふたり体制だ。透明感のある二重の美声が会場を包んだ。

 歌い出しがダンサーの登場の合図でもある。


 ダンサーたちがステージに登場し客席からは歓喜の声や指笛の音が返された。

 イベントには他チームの知り合いなど、サンバ関係者が紛れ込んでいる場合が多い。率先して場を盛り上げ、演者のテンションも上げてくれるありがたい存在だ。

 私も他チームのイベントを観に行ってみよう。その時は、周りの観客に引かれるくらい大声出してみようかな。


 ステージでの曲数は四。


 一曲目は比較的大人数のダンサーが激しく踊り、観客のテンションを一気に上げ、その心を一気に掴む。


 二曲目は息の合った振り付けのダンスで、ショーとしての高い完成度を見せつける。


 三曲目はマランドロやベテランパシスタが順にソロで、それぞれの個性を客席に見せつけていた。


 四曲目はハイーニャとバテリアが一体になったパフォーマンスから、ラスト付近では全ダンサーがステージの下に登場して観客の目の前でラインになって踊った。


 ダンサーを目の前にした観客たちは大いに盛り上がっていた。



 今回のイベントはパレードがメインで、ステージはどちらかといえばおまけのような扱いだったが、ダンサーも、バテリアも、バンドも、短い曲目、メンバーの数やパレードを終えたばかりで決して十全とはいえないコンディションでも、構成や見せ方の工夫ひとつでバラエティ豊かなショーとなっていた。

 演者として早くその一員に加わりたいという気持ちはかなり高まったが、同じくらいにイベントを作るという作業についても興味を持った。

 リソースが潤沢ではない、コストに制限がある、だからこそ問われる手腕には、挑み甲斐を感じた。


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