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才能

 ひいは、あるいは天才に分類されるタイプなのではと思うことがある。


 はっきり言って普段は注意力散漫で、習熟度の高いインプットも、精度の高いアウトプットも苦手だ。感情豊かだけど感情的すぎて感情に出来が左右されることも多い。

 ただ、本番直前までそんな状態でありながら、本番数秒前で一瞬で「入る」ことができる。

 アスリートの世界では話題に上ることも多い「ゾーン」のような状態だと思うが、本番のひいはなんというか凄みがある。

 一瞬で深い集中状態に入り、本番中はその状態が維持される。そして、本番が終わると普段のひいに戻るのだ。


 それがわかっているからなのか、ほづみはあまり心配はしていないようで、「食べるか準備するかどっちかにしなよ」とか「みんな準備してるんだからあまりうろうろしない」とか、母親のような注意はするものの、本番やパフォーマンスに関する指導や確認などはほとんど行われない。




「柊から揚げ好きなのにもらっちゃって良いの?」



 がんちゃんがたこ焼きを頬張りながら訊ねる。あら、かわいい。



「うん。さすがに買いすぎたから。みんなに配ってるの」


 先ほど寄った屋台で二十個くらい買っていた。確かに買いすぎだと思う。


 ひいはから揚げを学生メンバーの仲間を中心に配っているようだ。このタイミングで油物を摂りたくない者も多いためか、思うように貰われていかないらしい。


 言いながらも、親か子かどちらかひとりしか助けられないみたいな苦渋の選択を迫られてるが如きの表情のひい。




 固有の才能というものはあると思う。

 種は誰でも持っている。才能とは種の品質差だ。

 ダンスも絵を描くことも走ることも、やること自体は誰でもできる。品質の差が、出来の差になる。

 一般的にセンスなどと呼ばれている要素だ。



 種は品質のみで花開き実をつけるわけではない。



 ベースとなる資質も必要である。

 どんな才能にとっても必要なもの。あると有利なもの。

 それが、「集中力」「努力」「好きであること」「論理的思考」など。

 そこに性格による適性も関わってくる。個の競技者ならば「負けん気の強さ」が欠かせない資質となることがあるが、チームプレイの競技者なら「協調性」も必要になると言った具合に。

 感覚的、芸術的な分野の才能については、必ずしもそれが全てとは言えないイレギュラーケースもあるかもしれないが、多くの才能にとっては「飽きっぽさ」はマイナスに働くだろうし、「真摯さ」「真面目さ」はプラスに働く場合が多い。


 それらの「資質」が、種を育む土であり水であり光となる。

 そこに更に生育のための知識や技術、肥料などの効率的な成長促進の要素と言える「性格」や「環境」が加わって、その組み合わせの妙や総合力で以て、大輪の花、芳醇な果実となっていくのだ。



 優れた種のみを持つ者よりも、普通の種でも、質の良い土を備えている者の方が大成しやすいのではないだろうか。



 そして、双方が高水準で備わっている者が、天より才を与えられた者と言えると思う。

 なので、私の定義する天才のハードルはさほど高くない。唯一無二のギフトでなくても良いのだ。


 そして、才能の原石は足りない要素を補うために、コーチという存在を付けるのだろう。

 コーチは「資質」の不足分を補い、「性格」の適合したところを活かし不適合な部分をコントロールする。

 外部の力も使い、「種」をより良く育てられた者が大成する。

 そういう意味では、周りにどういう人物がいるのか、周りの人物とどういう関わり方ができるのかも大切だろう。


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