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夜の贈り物

 やっぱり、私は夜が好きだ。


 思いがけないプレゼントは、夜にもたらされることが多いと思わない?




 メールの受信を示すシグナル。


 あれ? さっきからついてた?

 今来たのかな?


 受信の瞬間は一瞬送信者と件名を表すウインドウが開き、数秒で消える。

 その後は受信があったことを表す表示のみが残る。

 起動時にはなかったとしたら、起動後に受信したのだろうが、考え事をしていたからか気付かなかった。




 開こうとカーソルをあてた、その時。


 上擦った感情がそのまま伝わるようなノックの音。


 

「祷? まだ起きてる?」



「起きてるよ」



 扉を開けると、そこにはやや上気した顔色のがんちゃん。

 お風呂上がりかな? かわいい。


 えっ、うそ、なにそのくまみたいなルームウェア......かっ、かわいいっ......‼︎



 思いがけないプレゼントに心を囚われている私にお構いなく、がんちゃんは自分のスマートフォンの画面を見せる。

 開かれたメール画面だ。


「これっ! もう見た?」



 えっ?


 一瞬狼狽えるが、同時に頭の中で情報のピースが組み合わさりひとつの絵が浮かぶ。


 先ほど来ていたメール。

 がんこの興奮した様子。どちらかといえばポジティブな印象。

 私に見せようとしているメール画面。


 がんこが私に見せたくて、良い意味で興奮してしまうような内容のメール。同じタイミングで私にも届いたメール。

 この時期にふたりに届く、興奮を伴うほどの、「良い通知」なんて、ひとつしかない。



「......やった、ね!」



「うんっ‼︎‼︎」



 がんちゃんが両手をぐーっと握り(片方の手にはスマホを持ったまま)、嬉しさを噛み締めている。



「やったぁ......‼︎」



 思わず上がる歓喜の声。それでも夜であることを意識してか多少抑えているのがかわいらしい。



 メールは安達さんからだった。


 内容は、提案をぜひ進めたいという内容だった。パフォーマンスに関する簡単な賞賛の言葉を添えて。


 阿波ゼルコーバの担当には、決定を前提にした内容ですでに連絡を取り合ってくれているそう。

 かなり前向き、というよりも前のめりな反応だったそうだ。

 なのでプレゼンはもう必要はないが、一度リモートで挨拶を兼ねた顔合わせを行うことになっていて、その日程の候補が記されていた。



 事前の下準備、それに伴う先方の状況、考え方。

 提案内容のイベントとの親和性と効果。

 実演の出来と先方の反応。

 帰り際のさりげないヒアリングの感触。


 楽観も悲観も交えずに見立てた成否は、よほどの想定外の条件が新たに発生しない限り成るだろうとの評価をしていた。

 だから、なにも心配はしていなかったし、この報せは想定の範疇だ。


 だけど、それでも。


 合格っていうものはやっぱり嬉しい。

 何度合格しても良いものだ。

 ましてがんちゃんの喜びリアクション付きである。しかもくまみたいなかわいい格好の。


 まだクリスマスには早いというのに、望外のプレゼントに私もにっこりである。


 今日は良い夢が見られそうだ。






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