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導入(LINK:primeira desejo 93)

「本日は御社がスポンサーになっておられる『阿波ゼルコーバ』のファン感謝イベントについてのご提案をお持ちいたしました」

 

 挨拶の流れから、早速本題へと入る。

 雑談などでアイスブレークや、提案時の話し方や時には意図や目的を伝える具体的な言葉選びなどにも影響する情報収集を狙った雑談などもしておきたかったが、遅い時間に都合をつけてもらっている手前、直球で端的に進めた方が良いと判断した。

 アポイント取得時や挨拶時の安達さんに対して得た、合理性が高そうな印象も加味されている。


 テンポよく進めた方が良いだろう。


 私の導入に合わせてほづみがスムーズにが資料を配る。


 資料を配布すると、それを先に読み進めてしまうひとがいる。安達さんはそのタイプだろうか。

 資料だけ読まれてもわかるようには作ってあるが、やはりプレゼンと同時進行で読み進めてもらいたい。


「ファンの『阿波ゼルコーバ』へのロイヤルティを高めながら、御社の認知度も高め、御社の企業価値向上の一助になれたらと考えています」


 気持ち大きめ、少し高めの声を意識して話す。

 注意をこちらに向けるのだ。


「『阿波ゼルコーバ』にとってはシンプルにファンの満足度の向上や新規ファンの獲得に繋げ、ファンビジネスの体質強化に寄与できるものと考えております」


 且つ、訴える内容はシンプルに。明快に。


 安達さんは資料の表紙はめくっているが、話す私の方に注目してくれている。


 トーンを少しだけ上げ、一気に畳み掛ける。


「今年のファン感謝イベント内の一コンテンツとして、そして、ファン感謝イベント全体をより盛り上げるベースの機能として、企画提示させていただきます。

企画の軸にはサンバという文化を用いています。

サンバについてイメージはおありかと存じますが、実演にてどのようなものかをご理解いただければと考えていますので、そちらも是非お楽しみください」


「そのためのこの部屋ですからね。はい、楽しみにさせていただきます」


 社交辞令かもしれないが、この場に関するコンセンサスを得た。その発言を安達さんが自ら発したことは小さなことであるが実は重要だ。

 同じ場、同じ時間を共有はしていても、実際は個々のスタンスによって場からもたらされる情報に対する理解度、解像度、深度に差は出てしまうもの。

 スタンス、要は傾聴しているのか注意力散漫かかで、結果は雲泥となる。

 安達さんは、聴く姿勢をとり、楽しむ意識でこの場にいるのだと自ら言うことで、仮にそれがリップサービスであったとしても、脳や心持ちは自ずとそのモードに傾くはずだ。


 それは私たちにとって後押しに相当するアドバンテージだ。

 安達さんにはそのモードのまま、プレゼンに入らせてもらおう。


「それでは、さっそく企画提示に入らせていただきます。プレゼンターは願子が務めます。

願子、どうぞ」


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