発表(LINK:primeira desejo 89)
拍手が少し落ち着くのを待ち、私は話を続けた。
「そして......」
ここは少し間を使う。
「肝心のプレゼンをするのは......同じ『姫田』の姓を持つ我が妹! がんちゃん!
がんちゃんからも、決意の一言! お願いします!」
少し演出的にがんちゃんに振る。
本当はスポットライトが欲しいくらいだ。
プレゼン前の馴らしとしても、がんちゃんには多くの人に向けて何かを伝えると言う経験を少しでも積ませたい。
あと、そんながんちゃんの様子を間近でなんどでもみていたい。
がんちゃんにメンバーの視線が集まる。
ここよ! がんちゃん、ここはキメてねっ!
しかしがんちゃんは、なんだか他人事のようにキョロキョロしている。
いや、がんちゃんの番だよ!
あれ? 聞いてなかった? あの子もしかして、私の話ぼんやり聞いていたんじゃないでしょうね......。
演出的に盛り上げてからの流れでそのままがんちゃんに繋げたかったのに。
気勢は少々削がれてしまうが仕方がない。仕切り直そう。
「がんちゃん?
今回の企画の内容を考えて、今週のプレゼンではプレゼンターを務めるがんちゃんから、みんなにひと言言ってもらって良い?
意気込みとか、なんでも」
「あ、はいっ」
慌てて立ち上がるがんちゃん。
返事は良いね。勢いも良い。でも、こっちに来なそう。
私は小走りで駆け寄りマイクを渡した。
こういうちょっとした所がひとつひとつ素人っぽさを感じさせる要素になるのだが、まあそれはそれで良い。事実素人なのだし、変にこなれた玄人感を素人が出すよりも、初々しさがあった方が可愛げがあるし、愛される。受け入れやすくなる。
特にがんちゃんにはその素養というか素質があるのだから、それは活かしたほうが良い。
「ええと、イベントのない時期に何かできないかって祷が考えてくれて、ハルさんに相談して、出演の機会を自ら獲りにいこうというきっかけで始まった計画です。
もし獲れたら、お祭りやショーなどのパレードやステージとは異なるイベントになると思います。遠くのサンビスタと一緒に演出する珍しい機会になると思いますので、もし獲れたら出られる方は出て、楽しんでもらえたら嬉しいです。
そうなるように、今週のプレゼンがんばります!」
場が温かい拍手に包まれた。
がんちゃんは恐縮した様子で左右にぺこぺこお辞儀しつつ座る。
良いじゃない。
緊張しながらも一生懸命喋るがんちゃん。
みんなから温かく見守られ、恐縮しているがんちゃん。
ぜんぶかわいい。
座ったがんちゃんをひいがつついて、なんか話している。
仲が良くて微笑ましい。
メンバーも応援してくれているし、期待してくれているし、見守ってくれている。
ハルやウリ、父にも力を借りたのだ。
みんなのためにも、この計画は絶対にものにする。