あああああの痕跡。
【Crazy Tower】他4つのゲームがリリースされてから1年が経とうとしていた。それを記念して5つのゲーム世界では1周年イベントが開かれ様々なサービスが行われていた。
豪華なログインボーナスやプレゼントはどのゲームでも行われているがそれぞれのゲームに合わせたイベントも開催されている。
【Crazy Tower】ではイベント期間限定のエネミーが出現する。エネミーを倒すと強化アイテムやイベント限定の銃と交換が出来るアイテムをドロップする。
多くの【ゴースト】達が参加しイベントは大いに盛り上がっていた。
◆◇◆◇◆
いつもは落ち着いた空間を作っているチュートリアルバーだが、1周年記念イベントの真っ最中の為人が大勢おりその分騒がしくなる。利用者の半数以上が【ゴースト】だ。【ゴースト】達がチュートリアルバーに集まっている理由は主に2つ。
イベントアイテムと好きなアイテムを交換をする為に。
情報収集、交換をする為に。
それぞれ様々な理由を持ってチュートリアルバーに集まっている。
「いよっしゃあああ遂に手に入った!」
「やったな!」
「ずっと欲しがってたもんな。」
店内にイベント用に設置された交換場前で嬉しそうにしているのは【ゴースト】の1人。どうやら欲しかった物が手に入ってはしゃいでいるようだ。
「ハルバード。この後どうする?」
欲しかった物が手に入って浮かれていた【ゴースト】、ハルバードは仲間から声をかけられて少し落ち着く。
「そうだな。みんな欲しがっていた物は手に入ったし、後は今後の為にアイテムを集めた方がいいかな。」
「まぁそれがいいか。」
「その前にさ。新しい武器の試し撃ちしないか? みんなまだ使ってないだろ。」
「お、いいね。そうしよ。」
チュートリアルバーでは武器の試し撃ちが出来る部屋も用意されている。ハルバード達は早速武器の試し撃ちが出来る部屋へ行こうと受付に向かおうした時、仲間の1人がある画面を気にした。
「うわ点数差えぐ。」
画面を見た瞬間思わず呟いた仲間の声をハルバードは聞き逃さなかった。
「なになに?」
「見てくれよこれ。」
気になったハルバードは仲間が指差した画面の方を見る。
《チュートリアルミニゲームランキング
1位あああああ 2134567ポイント
2位豆腐侍 50890ポイント
3位めめりん 36450ポイント》
「うわえっぐ!」
1位と2位との圧倒的な差にハルバードも思わず仲間と同じように言う。他の仲間達もランキングを見て似たり寄ったりな反応を見せている。
「どんだけやり込んだんだよ。」
「チュートリアルミニゲームってなんだっけ?」
「あれだよ。最初にサポートAIにやらされたあれ。」
「あれか。これにもランキングあったのか。」
「豆腐侍さんとめめりんさんもやってたのか。」
物珍しいのかハルバード達は1位の座にいるあああああに対してほんの少し興味が湧いた。
「あああああって名前本当につけてる人いたんだ。」
「でもここでは見かけない名前だな。」
「暇人過ぎるだろ。」
あああああに対してハルバード達が引いている中、仲間の1人がある提案をした。
「…なぁ。俺達でこのランキングを塗り替えないか?」
全員がその言葉に反応した。
「どういう事?」
「新しい武器を試すついでさ。俺達の腕前と今の装備なら余裕だろ。」
「いやでも。2位との差がえぐいよ。そう簡単には無理じゃない?」
「これはチュートリアル用のゲームだ。初心者と俺達じゃあ武器も経験も違う。いけるって。」
「まぁ、やって損は無いよな。」
「確かに。」
「ハルバードはどうする?」
「もちろんやる。ここのランキングも俺達の名前を刻んでやるぞ。」
ハルバード達は全員意気揚々とチュートリアルミニゲームをする為に店員に声をかけた。
◆◇◆◇◆
チュートリアルミニゲームを終えたハルバード達は全員、チュートリアルバー内のテーブル席に座って意気消沈していた。
「…エグ過ぎるだろ。」
誰かがそう言った時、皆勢いよく頷いた。
「序盤は楽勝だったけど4桁超えた辺りから動きが速いのが出て来てあっという間にゲームオーバーになった。」
「俺も。あと1発じゃやられない奴も出て来た。」
「後ろからも来るよなあいつら。」
「数で攻めてくる時もあった。」
「あと見た目がキモい。」
チュートリアル様のミニゲームだから簡単。
そう舐めてかかった結果全員惨敗したようだ。
「俺もう1回行ってくる。」
「マジかよハルバード!」
「だったら俺も!」
「私も。」
「俺だって!」
「よし再チャレンジだ!」
このまま負けっぱなしなのは嫌だ。
そう思ったハルバード達は自分からチュートリアルミニゲームに再挑戦しに向かった。今度は舐めない。本気でやってやると意気込む。
が、結果は散々だった。
途中までは順調であったがポイントが4桁を超えた辺りから標的の動きは速くなる。中には弾を避けるものまで現れ始めた。
それを武器の性能と技量で倒すと次は硬い標的が現れ始めた。その標的は何発が弾を当てるか急所を狙わないと倒せない。動きは鈍いが他の標的の盾になる為急いで倒さないとあっという間に他の標的にリンクを超えられてゲームオーバーになってしまう。
さらにそれを倒すと今度は後ろからも標的がやってくるようになる。後ろからの標的に対処出来ても今度は上からも攻めてくる。
ハルバード達は全員【Crazy Tower】では強豪【ゴースト】だ。毎回開催されるイベントでも大きな活躍をし度々話題に上がったり漫画でその活躍を描かれる。
そんな自他共に認められている実力者である彼らがミニゲームで苦戦していた。
標的を撃ち漏らしてラインを越えられたり、弾切れを起こしたり、集中力が途切れてしまったり、他にも色々な理由があってゲームオーバーになった。もちろんポイントの数は1位からは程遠い。
ミニゲームを終える度に仲間が次々と諦めていく中、最後まで粘ったハルバードが彼らの中で1番実力があったが、結果は以下の通りだ。
《チュートリアルミニゲームランキング
1位あああああ 2134567ポイント
2位豆腐侍 50890ポイント
3位ハルバード 38500ポイント》
めめりんという【ゴースト】を超えられたが、その上の2人を超えられはしなかった。
「…エグ過ぎるだろ。」
ハルバードは顔を知らない【ゴースト】、あああああに対してドン引きした。
(こいつ、どうやったらあれらを相手にここまでの点数をつけられるんだよ!)
ハルバードはそう思わざるをえなかった。