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文芸部のお話 06


 

「取り調べ?なんの?ぷんぷん私だって怒るのよ、菫ちゃん」


 私知らないとプンスカ逆ギレながら美優は言い張る。


「しらばっくれるな!」

「だって〜私〜知らないし文化祭?あれ7月でしょ〜今5月だし文化祭の実行委員会が動き出すのは来月の頭からでしょ、ね」



 美優はいつもの口調と打って変わり間伸びしたイライラがものすごく貯まる嫌な喋り方で桜崎にイライラさせる。

 すでに美優の悪事はバレていると言うのに此の期に及んで逃げ回り逆襲の一手を探り、見つけた一手は最高の逆襲となった。


「それはそうと菫ちゃん篠田部長のところに行くんでしょ。保健室 密室 2人っきり 生徒会会計と文芸部部長」


 ネタとなり得そうな事柄を挙げて指を立てて行く。


「えぇ、そうだよ。篠田部長の安否を確認しに行くからね。」



 桜崎としては安否確認ならお持ち帰りとは言われないと言う蜂の巣理論で武装するが穴だらけである。

 だが美優は聞く耳を持たない。それどころか追撃をかけてくる。


「ネタとしては十分ね。それで菫ちゃん保健室で何しようとしてたの?不純交際?生徒会の汚名になるわねマグロ同様退場してもらった方がよろしいかと」


「生徒会室で寸劇してる生徒会長一派に言われたくないのですが……私も新聞部に情報提供しましょうか?」


「この私を脅す気?桜崎」


 美優は何故か取調官から調べられる方に転身を果たして悪役へ転職した。


「真実は全て事実でないといけないと言う決まりはありません。多少、色を付けることも真実を広める為には有効な手段だと思いますがいかがですか?」


「わかったわ、今日は折れてあげる。篠田を落としなさい。命令よ」

「別に、篠田部長の安否確認するだけですよ、他意はありません。」

「ベットに潜り込んじゃダメだよー」

「うるさい!」


 何故か桜崎は無事、とは言い難いが解放された。桜崎の去り際も美優はおちょくろうといろんな手を使って足止めをしようとしていたがその全てを無視して出てきた。


「よかった〜やっと逃げれた、待ってて篠田くん!今行くから」


 生徒会室から無事脱出して急いで保健室に向かっている桜崎は篠田が瀕死の状態とは全く思ってなくそれどころかドキドキ看護イベントがスタートするとワクワク感を抱いている。それがモロ仕草に出ている、るんるん鼻歌を歌いながら、廊下を浮き足だって歩いている時は時間の経過がいつもより早く、いつのまにか保健室にについていた。


 桜崎が保健室に入ろうとドアをノックしようとした時、中から聞き覚えのない老人の声が漏れてきた。

 小首を傾げ、顔にはてなを浮かべて耳を澄ます。


『それは、本当か?』

『はい』


「?……失礼します」


 ドア越しだとよく聞こえないだから突撃することにした。

 カラカラと音を立てながドアを開くとそこにはこの緑ヶ丘高校の校長と教頭、そして篠田の担任と保健室の先生がベットの周りを取り囲みヒソヒソ何か話し合っている。


「篠田君が……息をしていない?…………」


 篠田の担任である斎田真里は篠田の口元に手をかざすと、その手に息は当たらず、黙り込む。少しするとゆっくり口を開く。


「い、いつからですか……」

 それを答えたのは校長ではなく保健室の鷹田真理恵であった。


「30分ほど前……体調が悪いと、ここに来たの、それでベットで休ませて、その後の事は知っての通りよ」


「救急車は?」

「先ほど呼びました、もう5分もすれば到着すると思います。」


 少し息が上がってる教頭先生が答えゆっくりと篠田のベットの左側に周り込むと感情が乱れた教頭は膝から崩れ落ちる。


「篠田ッ!!死ぬな!私には夢があるんだ……無傷で定年を迎えたいんだ!私の任期中に私の生徒が死んだとなれば私の栄転はどうなる!だから生き返ってこい篠田ッ、しのだ……お願いだ篠田。もう私の夢を潰さないでくれ……私は校長になるとあの人と約束したんだ!…………お願いだ篠田……」


 教頭先生の頬には一筋の涙が流れているが何故だろう全く感動できない。最後の一言はまぁわからないとこもないが……栄転?JKにはよくわからない単語であった。


「………失礼します」


 そんな酷い場面を見てしまった桜崎の頬は引き攣り、複雑な笑みを浮かべる。


「さ、桜崎か……どうした」


 教頭の背中を摩っていた校長先生がハッっとした表情で振り返り声をかけた。


「篠田くんは……」

「あぁ、2人は同じクラスだったな……」


 ここまでの寸劇見てしまえば校長が口を閉ざす理由も篠田の容体もはっきりと脳裏に過ぎる。


「息を、していないんだ」

「先生……」


 桜崎の質問に答えたのは2人の担任斎田であった。彼女の顔色は真っ青で生きている気配する感じられないがそれでも自分の生徒に嘘は吐きたくないと言う先生としての矜持がある。たとえそれがどんな事だろうと言わなければならない。その一点が彼女の心を動かした。


「篠田くんは息をしていない。さっき救急車を呼んだ……」


 先ほどから救急車のサイレンの音が聞こえ始めその音が少しずつ近づいて来ている。


 言葉にすればそれだけのことに過ぎないがここにいる全員にとってその音は聞きたくない音である。


「うそ……先生!嘘ですよね。嘘って言ってください……先生……」


 桜崎は取り乱した様子で篠田のベットに近づき安らかに眠っている篠田の頬を両手で撫でる。篠田の頬にはまだほんのり体温を感じられる。


「あったかい………」

「あぁ。そうなんだ。ついさっきまで生きていた証拠だろう。篠田くんは頑張った。もう行かせてやれ、篠田が旅立つのを私たちは、止められない……」


 ふらっと斎田先生は立ち上がり保健室の窓の外を茫然と見つめる。


「私たちにはどうすることもできない……桜崎。」

「斎田先生……」


『『『…………………』』』


 しばらく永遠とも感じられる無音の時間が続き、斎田が晴れ渡る空を見つめる。


「篠田もこの、晴れわたる空で死ねて本望だと思う。本人にしかわからないがな……」


「……う?、うるはい……」

『篠田!』『篠田くん?』『今のは……』



「篠田くん起きて、戻ってきてお願い篠田くん」

「篠田!起きろ!帰ってこい!」

「篠田、みんなを悲しませるな生きてかったこい!」


 1番近くてその声を聞いた桜崎、外を見ていた斎田先生が急いで走ってきて、校長先生までもが声を篠田に声をかける。


「教頭先生、」


 そう保健室の先生は通用口に入ってきた救急車を見て教頭に指示出す。

「わかってる、」


 教頭は中用のスニーカーのまま救急隊員を呼びに走る。


「篠田くん!耐えて!今、救急車が来たから……」


 篠田の両手を握る桜崎の細い手には涙が落ちる。


「よく頑張った篠田」


「救、急、車?」


 昏睡状態から目覚めた篠田は自分の置かれた現状を理解できず、外でけたたましい音を鳴らして止まっている救急車のサイレンが耳にダイレクトに入る。


「どいて!こっちです!」


 駆け込んできた教頭がベットの周りで篠田のことを取り囲んでいた斎田と教頭を引き剥がし救急隊員のためにスペースを開ける。


「担架!用意!いつでも運べるようにしとけ!」

「はい!」


 入ってきた救急隊員が指示を出し救急車中の担架が外に出される。


「容体は?」

「先ほどまで意識不明で今、意識を取り戻しました」


 ずっとつきっきりで生きていればドキドキ看護イベントだったが置いといて、見守っていた保健室の先生が答えたのを見て桜崎は静かに保健室を抜け出しどこかへ向かった。



その十分後救急車が到着し担任と何故が桜崎が乗り込み病院まで同乗した。


精密検査の結果『初期の睡眠時無呼吸症候群ですね。今の段階では治療を行うよりも、睡眠時のベットの高さや枕の高さを改善してみる必要性がありますね。それでも変わらないようでしたら再度受診を』


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