百鬼夜行 【月夜譚No.231】
簪の飾りが、シャラリと軽やかな音を奏でる。それを合図に、煌びやかな着物を纏った女性の周囲に、一つずつ灯りが灯るように異形のモノ達が姿を現した。
小豆洗いに河童、ぬらりひょん、豆腐小僧、猫又、鈴彦姫……絵本で見た妖怪の数々が列を成して夜闇を漫ろ歩く。
よくよく見てみれば、最初の女性には毛むくじゃらの尻尾が九本も生えていて、九尾の狐だったのだと知る。
男は腰を抜かしかけてすんでのところで堪えたが、親指の先ほどしかない小さな猪口暮露の影が足許を駆け抜けて、到頭尻餅をついた。
怪しく、不気味で恐ろしい。けれど、惹きつけられる美しさを持った不思議な行列だ。
男は呆けてその奇異な行列に見惚れ、はたと気がついた時にはもう、真っ暗な住宅街の道端に佇んでいた。
夢でも見ていたのだろうかと首を傾げた男は、背後でクスクスと笑われていることも知らずに帰路に就いた。