第三話
流通業や外食産業などは特に人手が不足したことで打撃を受けた。業界も黙ってはいなかった。そこでペット霊園に対するネガティブキャンペーンが行われた。宗教学者をテレビ番組に呼び「実はカトリックは誰もが天国に行けるわけじゃないんですよ。煉獄というものがありましてね。要はセカンドステージで修業しろという世界があるんです。彼らが言う『ペットは天国へ行かせたい』なんて偽善もいいとこなんですよ。ペットも一定数は煉獄にいくと思いますよ?」などと言ったのだ。
この報道後、ペット霊園や教会に避難が殺到した。仏教も似たようなものだった。あくまで畜生道に生きた霊魂の供養であって次、どこの世界に生まれるか分からないという論陣を張られたのだ。幸いプロテスタントは煉獄と言う概念は認めていないため、これらの反論はことごとく返した。
「まずいよ、加藤君。どうすればいい?」
全国から加藤司教に相談が殺到した。
「贖宥状でも販売しますか?」
加藤は冗談交じりで言った。
「ふざけるな。二一世紀版宗教改革でも起こすつもりか!」
「めっそうもない。中世やルネッサンスに出した贖宥状は値段が高かったから批判されたのです。要は贖宥状を一枚千円で販売すれば誰も批判しませんよ。要はペットは全員天国に行けるようにすればいいんです」
加藤のアイデアはこれにとどまらなかった。贖宥状でえた利益はすべて宗教美術のために使うと明記することにしたのだ。これで四大天使以外にも天使という者がどのような姿でどのような役割を持つのかを周知するために天使像を特に普及させるというアイデアであった。
こうして仏像が観光資源になるようにカトリックも天使像や聖母像によって観光資源とすることに成功した。さらに積極的に美大生に像を彫らせることにとって美大生のアルバイト先の確保にもつながったのであった。加藤はまたしてもアイデアで窮地を乗り越えたのであった。