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ペット霊園で町おこし  作者: らんた
序章 墓守という生き方があったのか!?
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~序~

  二〇xx年。日本は未曾有の人口減少に苦しみ……そこらじゅう空き家が出現していた。都心からわずか三十キロメートル程度しか離れてないここ埼玉県富士木市も例外じゃない。そんな中神父はある光景を見た。お墓だ。最近空き家を宗教法人格であるお寺や神社に寄進する者が多い。

 なにせ2017年に出生人口が100万人を割ったのに何も手を打たず2024年には出生人口が70万人を割ったのだ。その割には外国人移住者も見えない。日本経済の長期低落で実習生という名の移民は母国の方が稼げると帰国したりよその国に移民として働くなど外国人からも見捨てられたのだ。

 真新しい住宅が一方で散見される。極小住宅だ。なんとか買い手が見つかっても購買力が低下した日本では中距離通勤圏であってもまともな家が買えない。こんなに空き家だらけなのに。スプロール開発とはよく言ったもんだ。街の解体もスプロール式に行われている。

 危険家屋の解体代執行命令が下され危険家屋を壊す音がする。誰も相続したがらない家だ。結局そういう土地の買い手が付かないものを宗教団体が買い取って街の再建に取り組んでいるのである。

 民間信仰である石仏の周りをちょっとした公園にしたところも目立つ。待ち合わせ場所でもあるので事実上の庚申搭の復活でもあるのだ。この公園の中心に立つ庚申塔の中心に居る青面金剛夜叉と庚申塔の下部に居る三猿が生き生きとしていた。青面金剛夜叉も三猿も四夜叉も塗りなおされているため青面金剛夜叉像と四夜叉像が凛々しい姿となって復活している。しかも庚申塔や青面金剛夜叉などを説明する案内板まで用意されている。ゆえにここは待ち合わせ場所でもあるということが周知されているのだ。駐車場まで完備されている。駐車場の番号は四つまででプレートには四夜叉の紹介に加え絵までそれぞれカラフルに描かれている。布教活動(この場合、四夜叉という存在を一般に知らしめるという目的の駐車場)ということにすれば宗教法人は法人税がかからないのでこのように工夫しているのだ。もちろん庚申塔だけでなく石仏の代表格である地蔵や馬頭観音像や聖観音像の周りや神社の境内の一部も公園として整備されている。


 「いいな~仏教や神道は」


 空き家を解体して宗教法人に土地を寄付すると宗教法人側は固定資産税がかからないのだ。ゆえに今や首都圏郊外は墓地ブーム、石仏公園ブーム、神社ブームだ。ところがここは日本。キリスト教徒は全人口の約一パーセントしかいないのであった。墓地需要なんてそうそうあるわけじゃない。むしろキリスト教は結婚式場の方に需要がある。しかし人口減少や無宗教結婚式場の台頭で教会の運営は苦しかった。そんな中神父はある光景を目撃する。ペット供養だ。犬や猫をペット用供養塔の前で住職が供養しているのだ。お経が聞こえてくる。


 (そういえば仏教では犬や猫は畜生道に生きる存在じゃなかったっけ? 畜生道って三悪趣のなかの一道だよな?)


 (ペットは供養じゃなくて天国に行かせてあげたいよなあ。ペットだって家族の一員なんだし……)


 神父はぽんと手を叩いた。


 「そうだ、うちはペット霊園を作ろう!」


 この発想が二一世紀における日本の町づくりのお手本になるとは思いもしなかった。神父の名前は加藤茂。この時まだ四〇代であった。


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