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魂魄機動 霊魂騎士ーソウルナイトー  作者: ワンサイドマウンテン
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初陣

 翌日、つまりは僕の初陣となる今日は慌ただしかった。

 各機体の最終整備、作戦・陣形の確認その他準備など諸々である。

 いよいよだ。


 光を受けて輝く鈍い金色の機体が僕を出迎える。その周りには多数の霊魂騎士が控えている。


「よっと」


 すでに空いているハッチからコックピット内に乗り込んでヘッドギアを装着。レバーを捻り起動。ハッチを閉じるとモニターに正面の景色が映し出される。


「ニニギ様、準備はよろしいですか?」


「いつでもいけるよ」


「では」


 先行して二機の霊魂騎士が歩き出し、僕はそれに続く形となった。

 僕が動き出した後に残りの霊魂騎士も続く。

 霊魂騎士の行進。

 大通りは僕の初陣ということで軽くお祭り騒ぎになっている。八百万の神たちが集まって楽隊まで組んでいる。盛大なパレードと言うやつだ。

 僕の金色の機体が姿を現すと観衆はドッと沸いた。


「ニニギ様ー!」「がんばってくださーい!」など、声援も多数だ。

 声援を送っておいてもらって申し訳ないけど、この後、お婆様に反旗を翻しちゃうんだよね。

 他の機体は手をあげるなどして声に応えている。


 少々、複雑な心境ではあるが、僕も操作して霊魂騎士の手を挙げた。

 僕が声援に応えたときは、他の霊魂騎士が応えたときより大きく盛り上がった。

 申し訳ない。本当に申し訳ない。


 観衆の興奮が最高潮になったころ、お婆様が衆目の前に姿を現した。立派で派手な衣をまとい、相変わらずの存在感を放っての登場だ。


 その後ろには親衛隊がざっと十人は並んでいる。

 瞬間、さっきまでの盛り上がりが嘘のように静かになった。僕たちの行進も一旦進むのをやめて注目する。

 そうして、その場全体の注目が集まったのを確認して、お婆様は口を開いた。


「そなたら、本日ついに妾の孫、ニニギが初陣を飾る。見よ、あれこそがこの日の為に完成させた最新鋭の機体『天賦・金閃公』じゃ!」


 お婆様がそう言ったことで注目が僕に集まる。


「金閃公は妾の権威そのもの、それに妾の孫ニニギが搭乗し、下界に降りることで我ら神の力を人間に誇示する。作戦名『天孫降臨(てんそんこうりん)』。この作戦で再度、強襲をかける」


 高らかに宣言した。


「我らに勝利を‼」


「勝利を‼」


 後ろの親衛隊の一柱が檄? のようなものを飛ばし、残りの親衛隊も声を挙げた。

 始めは親衛隊だけだったのが次第に周りの神たちに伝播していき、やがて八百万の神々にも伝わってその場は大歓声に包まれた。


 その大歓声の中、僕たちの行進は再開され、出撃地点が見えてきた。高天原と人間界を繋ぐ唯一の場所だ。かつて友好の証として人間界に行ったときと帰るときに使った道だ。


 今回は友好ではなく攻撃という名目で使うことになったしまった。まぁ、僕は人間への攻撃はしないが。

 道中で戦うのは不可能なので、反逆は人間界に降りてからになる。


 一度降りてしまうため、お婆様を倒すために高天原に攻め込まなければならないわけだが、この場で反旗を翻すよりかは成功の確率が上がる。


 しかし、人間界に降りれば人間たちに「あのニニギまでもが攻めてきた」と取られてしまうだろう。その誤解は行動によって解くつもりだ。


 人間界と高天原を繋ぐ道の入り口には、既に数機の霊魂騎士が控えていて、僕たちの到着を待っていた。

 僕たちが到着すると同時に、そのうちの一機のハッチが開きコックピット内からパイロットが姿を現す。

 光を受けて眩しく輝く、くせ毛の金髪。サルタヒコだ。


「お待ちしておりました」


 軽快に地面に降り立ったサルタヒコは、そう言ってスッと頭を下げた。そして、到着した僕たちに一旦機体から降りるよう促した。


 僕を含めて七名のパイロットが降りると、待っていた霊魂騎士の奥に案内される。

 案内された場所は、小さな陣地内で簡易テーブルが設置されていた。


「お席へどうぞ」


 僕たちでテーブルをぐるりと囲う形となる。

 テーブルの上には地図が敷かれていて、その上にはいくつか戦略遊戯(ボードゲーム)で使われるような駒が置かれている。


「では、注目を。これより、今作戦『天孫降臨』の詳細を伝えます」


 いつもの従者のサルタヒコではなく、今は作戦参謀のサルタヒコになっている。


「まず、現在の地上の戦況ですが、オオサカ、ワカヤマ前線は停滞しています。動きがあるのはヒョウゴですが、ヒメジで停滞したためヒョウゴ北部からの侵攻に作戦を切り替えました。そのため、現在はタジマ地方が激戦地となっています。」


 カツカツと指示棒で地図の上をなぞって状況説明を進めていく。それを黙って頷いていた僕たちだったが、一通り聞き終えると一柱が呟いた。


「俺たちはこれからそこに投入されるわけか」


 腕が鳴ると息巻いた。


「いえ、違います」


 サルタヒコが即座に否定する。


「ニニギ様たちがこれから降りるのはヒメジです」


「なっ⁉ ヒメジの前線は停滞しているのではないのですか?」


「はい、ちゃんと説明しますので最後まで聞いてください。停滞している前線には我々も相手も戦力をあまり置いていません」


 長いからか、サルタヒコはそこで一旦言葉を切った。


「また、タジマ戦線と違い元々人口が多かったため避難ができていない民間人も多数いると報告がありました。今作戦はアマテラス様の孫であるニニギ様が、アマテラス様の権威を人間に示すために最新鋭機に搭乗し存在をアピールする、力を見せつける、これが目的です。敵の戦力が少なく民間人が多い、前線でその条件を満たしているのがヒメジです」


「質問、オオサカ前線ではだめなのですか? 戦略的にはそちらの方がいいような気がしますが」


 先ほど質問をした神が手を挙げた。


「確かに攻略を視野に入れるならば、オオサカ前線の方が価値がありますし人口も多い。ですが、停滞していると言っても主要都市であるため戦力はそれなりにいるんですよ。それがヒメジに狙いを定めた理由です」


「了解しました」


「ほかに質問は? ……ないようですね。では各自、用意を。出来次第出撃です」


 それで解散となり各員が自分の機体に戻った。


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