サルタヒコの作戦
「手前の出番ですね。作戦を考えましょう」
「あ、それなら僕が気づいたことだけど、あの機体は脳波で直接操縦しているかもしれない」
「なるほど。それであの回避能力ですか。頭に入れておきます」
こうして、サルタヒコが作戦を考えている間にも、皆と特にヤマトの猛攻が止まることはなかった。
だんだん、回避ではなく防御になっている。
ともすれば、このまま倒してしまうんじゃあないかと思えるくらいのものだ。
けど、そうはいかない。
だからこうしてサルタヒコが策を考えているわけだ。
「……まとまりました。非常に単純なことですが、動きを封じましょう。それで終わりです」
サルタヒコが考え出したのは、自分でも言ったように、とても単純なことだった。
攻撃が躱されるのなら、防がれるのなら、動きを封じてしまえばいい。
重要なのはどうやって動きを封じるかだ。サルタヒコが真に考えたのはそこだ。
でなければそれを作戦などと呼ぶことは出来ない。
「やはり、この数を活かさない手はありません。天帝黒陽孁の動きを拘束するのは我々の役目でしょう。そのために、手数と破壊力を併せ持つ青い霊魂騎士に崩してもらいます。彼は今、勢いに乗りに乗っていますから適役でしょう」
「ヤマトが崩して、その隙に皆が拘束、僕が止めを刺すっていうわけだね」
「左様です。では、実行に移りましょうか。皆への伝達は手前がしておきますので、ニニギ様は青い霊魂騎士のパイロットにお伝え下さい」
「分かった」
声高らかに作戦を全体に伝えないのは、お婆様に作戦内容が伝わらない方がいいからだ。
尤も、僕とサルタヒコが一時戦線から外れているから、何か企みがあるということは気づかれているかもしれない。
まぁ、内容が知られていないならいい。
前に出てヤマトの駆る真・素戔嗚に機体を寄せる。
「サルタヒコ発案の作戦だよ。ヤマトとサクヤは今まで通り全力で攻撃を仕掛けて崩しに行くだけでいい。後はサルタヒコや皆がその隙を突いて拘束する。そうして動きを止めたら止めだ」
「作戦は分かったけどよ、そんなに上手くいくもんなのか?」
訝し気にヤマトが聞いてくる。
疑いたくなるのも分かる。ここまで苦戦していているんだから、いきなり作戦が、とか言われてもスッと受け入れられないんだ。
それも、端的に言えば機動力が高いから、動きを封じてその機動力を失くしてしまおうという話だ。
生憎、長々とその根拠を説明している時間はない。これも手短に伝えておく。
「根拠はいくつかある。一つは今押していること。二つは数の優位。最後の三つ目は前二つでも勝てないときに弄するのが策だからだ」
つまり、前二つの条件がそろっている時点で勝利の条件はほとんど揃っている。
もちろん、立てられた作戦の内容が、ちゃんと筋の通ったものじゃないといけないというのはあるけど。
それは大丈夫だ。
「まぁ、ここで何か言ったところで、だ。俺に任せろ!」
「私も引き受けたわ」
「うん、頼んだよ、二人とも」
この作戦が成功するか否かは、二人にかかっている。
けど、心配はしていない。
この二人ならやってくれる。僕はそれを疑わない。
サルタヒコの方も伝達は済んだみたいだ。
なら、作戦決行!




