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魂魄機動 霊魂騎士ーソウルナイトー  作者: ワンサイドマウンテン
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武神タケミカヅチ

「あれ?」

 

僕が思っていたのと違う。

 斬られたはずの僕の機体は元通り。だが、僕の望んだ未来ではタケミカヅチを倒していなければおかしい。斬られたはずの金閃公が無事なのは、僕自身が健在でなければ、タケミカヅチを倒したという未来にはどうやっても繋がらない。必要な要素だからだ。

 だから、タケミカヅチを倒したはずの未来には、必然的に勝者である僕が無事でいることになる。

 だけど現状は、僕は無事でタケミカヅチの駆る武双も倒れていなくて、稼働中。


「完全に斬り伏せたはずだが。やはり、面妖な力だ。まぁ、先が見えるこの力も十分面妖だがな」


 どうして想定通りにならなかったか分からないが、一旦距離を取るべきだ。

 このまま相手の懐にいるのはまずい。

 後ろに下がったけど、その際またフツ、と右肩口を斬られてしまった。大戦斧の重量に持っていかれて回避に支障が出ているな。


 動作の終了と共に完全回避を望んだ未来が反映され、それはなかったことになるけど。

 それはさておき。一体どういうことだ。なぜすべてが反映されなかったんだ?

 最も単純に考えられるのは対象。五次元の能力のときにも対象云々があった。

 この力の対象が僕だけだとするなら相手に影響が及ぼせていないさっきの結果にも納得がいく。


 それならそれでやりようはある。

 相打ちで問題ないということだ。

 勝利した未来を望むのは反映は不可能。相手には干渉できないからだ。だけど、その未来の半分は反映される。


 僕が死んでいては勝利という未来は訪れないから、無事であったという一部分だけが反映されて結果にたどり着く。僕だけがその力の対象だから。働く部分にはちゃんと力は働くということだ。

 つまり、この能力は僕自身に関係することにのみ、効果があるということなのか。

 そこで攻撃すれば倒せる。


 二度の結果から倒しても倒せていないかもしれないということは、タケミカヅチも分かっていることだと思うけど。

 それでも、倒した瞬間にはどこか小さくても油断が生まれるものだ。

 未来にたどり着くと同時に攻撃すればいける。


「今度こそ、本当に決着をつけよう」


「懲りない奴だ」


 ガンッっとひときわ重い一撃で青藍一式を弾き飛ばすや否や、タケミカヅチは僕に向かって斬りかかってくる。

 僕は大戦斧を振り下ろす。僕の方が動作半個分遅い。


 先にタケミカヅチのフツノミタマが僕の機体にたどり着く。

 フツっと、一回独特な斬撃音が鳴ったかと思えば二回、三回、四回と連続で斬撃音が鳴った。途中から聞こえなくなったが。

 そして――


「終わりだ!」


 未来へたどり着いたと同時に、振り下ろした大戦斧がゴシャリと武双の肩口に命中し、沈むように押しつぶしていく。

 金属が歪む歪な音を奏でながら、振り下ろした大戦斧は進んでいき、武双の胴の半ばまで行ったところで停止した。

 武双の駆動音が弱まり、自重を完全に支えきれなくなったのかガシャリと膝立ちの体勢に崩れた。


「……倒しちまったのか、あの武神を」


「うん……」


 一瞬静寂が訪れる。けど、


「おおおおおおおおおお‼」


 ずっと僕たちの戦いを周りで見守っていたオリタさんたちが歓声を上げたことで、それはすぐに破られた。


「……このオレが、な」


「こいつ、まだ⁉」


 あれほどまでに巨大な存在感を放っていたものとは思えないほど弱弱しくだけど、武双が動いたことで、一転、歓声は鳴り止み静かな時間が訪れた。


「せめて相打ちで終わらせたいがそれは叶わないようだ。安心しろ」


 悔しいことだと、タケミカヅチは言った

 それでもヤマトは警戒を解かない。不意打ちを警戒しているんだと思う。

 武神はそんなことはしないけど。いや、そう思っているところに飛んでくるのが不意打ちと言うのか。

 それでも、そんなことをするなら、タケミカヅチは武神なんて呼ばれていない。


「見事だ」


「コトアマツカミのおかげだよ」


「それでもだ。負けたことに対する言い訳はしない。性能差だろうが何だろうが、負けは負けだ」


 以前、稽古をつけてもらったときにも言われたな、それ。


「……だが、オレを倒したところでアマテラス様には届きはしない。あの方は次元も格も違う。いかにあの方の血を引いていようともな」


「だとしても勝つね、俺たちは。な、ニニギ」


 ヤマトの声に応えるように機体の頭部を頷かせる。


「……ふ。オレが口出しすることでもないか。かつてオレはアマテラス様に挑んだ邪神アマツミカボシをこの手で討ち取った。が、今回は作戦『アマツミカボシ』に敗れてこの様だ。どうなるかは分からんものだ。この武神を下した褒美と餞別代りにこれをくれてやる、受け取れ」


 そう言って力なく差し出してきたのは、霊剣フツノミタマ。

 呆気にとられた僕だったけど、ちゃんとそれは受け取った。フツノミタマを渡し終えた武双は今度こそ完全に動きを停止した。


 僕は受け取ったフツノミタマを眺めていた。

 そこには、まがりなりにも師であったタケミカヅチを打倒したこと、そしてフツノミタマを受け取ったことで認めてもらえたように思えたことなど、感情は様々だ。


「行こう」


 最初にして最大の関門は突破したけど、ゆっくりはしていられない。


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