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魂魄機動 霊魂騎士ーソウルナイトー  作者: ワンサイドマウンテン
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作戦会議

 サクヤの居場所は聞いてある。フジサワ市の病院だ。海が臨める病院。

 今は時間的に真っ暗な海しか見れないだろうけど。

 サクヤに会うために僕は再びフジサワに戻った。


 病室を訪ねるとサクヤは起上がっていた。疲れて休んでいるって聞いてたから心配してたけど、思ったより元気そうで安心した。


「あ、ニニギ。来てくれたんだね」


「うん、サクヤには聞きたいことがあるから」


「……心配はしてくれないんだ?」


 拗ねたようにサクヤが言う。この感じ、久しぶりだな、なんて場違いに思ってしまった。それくらいの余裕は感じてもいいのかもしれない。


「あ、もちろん心配はしてたけど、来てみたら元気そうだったから。安心はしたよ」


「そ。まぁいいか。それで私に聞きたいことって、霊魂騎士に変身したこと?」


 サクヤも察しはついていたのか、早速本題に移った。ベットから上半身を起こした状態で話し始める。


「それが私もよくわかってなくてね。戦争が始まってから頭痛がするなぁって思ってたんだけど、今日は激しくて気が付いたら霊魂騎士になってた」


 ここまではヤマトに聞いた話と同じだ。なにか他にはないんだろうか。


「あとは、おばあちゃんがよくうちの血筋は特別なんだって言ってたけど、関係あるのかな」


「その話、詳しく話せる?」


「それ以上のことは聞いてなくて、ごめんね? でも、多分それなんだと思う」


 今の話を聞いた限りだと、それしかないように思える。詳しいことが分からない以上、断定はできない。


「じゃあ、霊魂騎士になっている間はどんな感じだったの?」


「あの時は不思議だったなぁ。変身している間は、自分では動かせないんだけど、バランスだけ取らなきゃって感じ。よく分かんないんだけど、私がいたのはコックピット? ってところじゃなかったの。それで私、霊魂騎士のことなんて全然知らなかったのに、なんでかどうすればいいか分かっちゃったんだよね。ヤマトにも教えてあげられるくらい。あとは私じゃない誰かが心の中にいるような感じでちょっと怖かった」


 サクヤがバランスなんかの調整をする役割を果たしているのか? あとは多分、一度、霊魂騎士自体にそういった情報を通さなくていい分、反応速度なんかは段違いなんだと思う。これは大きい。


「今でもなろうと思えばなれるの?」


「うん、多分なれるよ。それもどうすればいいか分かっちゃってるんだ。それとね、ニニギが来る前にヤマトが来て、一緒に戦わないかって言われたんだ。本当は違うと思うけど、私には目覚めたこの力は、そのための力なんじゃないかって思ったの。だから、私も一緒に戦うよ」


 サクヤからも、ヤマトの時と同じ覚悟の眼差しを受けた。サクヤもまた、ヤマトとともに一度戦いを経験している。その上での決断だ。揺るぎない、生半可じゃあない本物の覚悟。


 そして、ヤマト同様、友達として助けようという純粋な気持ち。

 もちろん、真っ直ぐに受け止める。


「ありがとうサクヤ」


「ううん、任せて。それにニニギの夢のためでもあるんだから。ヤマトから聞いたんだよ? 今とは違う人間と神の安定した世界を作るんでしょ? なら、私も協力するから!」



 サクヤと別れた後、僕はすぐにヨコハマに向かった。イナゲさんから呼び出されたからだ。


「お待ちしておりましたニニギ様。ニニギ様への協力が正式に承認されましたので、早速作戦会議に移りたいと思います。こちらに」


 早速、作戦会議室へと案内された。

 広い空間の中央に、何も置かれていないジオラマの下地が設置されていて、それを囲むように将校たちが集まっていた。


「これより、ニニギ様協力の下、反攻作戦の作戦会議を始める。ニニギ様のクーデターの件は事前に説明した通りだ。今作戦の概要は我々はそれに協力し高天原へと侵攻することだ。まず求められるのは迅速さだ。よって、今晩中に作戦の決定と準備を終わらせ、翌日明朝には決行する」


 イナゲさんが言ったことに将校たちは頷いた。


「情報では、すでに高天原にてニニギ様の側近が孤軍奮闘しているそうだ。どれ程持ちこたえてくれるかはわからないが、我々は間に合うように最善を尽くすつもりだ。まずは、こちらの戦力の確認から行う。最低限防衛に残す機体は省き、出撃可能な機体の数はいくらだ?」


 イナゲさんの問いに一人の将校が答える。


「はっ、すぐに動かせる霊魂騎士は八機ですが、作戦開始時刻までには十二機用意できます」


 将校の答えにふむ、と唸るとイナゲさんは僕に質問した。


「……三小隊分か」


 イナゲさんは小さく言った。

 どうやら一小隊は四機編成ということらしい。


「ニニギ様、向こうでの補給は可能ですか? こちらと高天原を繋ぐことができるのは、神だけですので」


「多分、できないと思った方がいいです。でも、状況次第では可能かもしれないです」


「というと?」


「戦況によっては他の神も味方につけることができるかもしれません。そうなったら、補給も可能です。」


「わかりました。予備パッケージを準備しておけ」


「こっちの霊魂騎士は電力で動かしてるんですね」


「ええ、名称を変えた方がいいかもしれませんな。そちらの機体は、パイロットの精神力のようなものが原動力でしたか」


「はい、そういうとらえ方で大丈夫です。神力(かみちから)という、生まれつき備わっている一つのエネルギーを使って動かしているので、稼働時間はパイロット次第なんです。個々で神力の量は違いますから」


 だから霊魂騎士と言う名前なのだ。


「ニニギ様はどれくらい動かせるのですか?」


「僕の神力だと二十時間くらいです」


「そこまで長引かせては失敗ですな。では、高天原突入後は我々はどう動けばよろしいか?」


 イナゲさんがそう言うと、まだ何も置かれていないジオラマの下地に部下と思わしき人がいくつかのパーツを用意した。森や建物のパーツだ。

 準備が整ったところで、高天原の地理の説明を求められる。


「高天原の入り口は一つしかありません。そこは開けていて特に何もない草原です。その先には森があって、そこを抜けると大きな川沿いに神たちの住居「社」が密集している居住区があります。その先が軍関係の施設。そして、雲を突き抜けるほどに高い社にお婆様はいます」


 僕の説明に合わせて、高天原の簡易ジオラマが出来上がっていく。


「予想できることはありますか?」


「多分入り口にはタケミカヅチがいると思います。お婆様なら、そうする」


 僕の言葉に一同が息をのんだ。一番最初の障害があの武神だからだ。いずれどこかでぶつかるにしても、初端から絶望を叩きつけられたに等しい。


「ニニギ様の側近はどこで戦っているのですか?」


「入口だけど、もう移動していると思う。それに多分身を隠しているはず」


「では、我々は始めから武神と戦うと」


「そこは僕が戦う。タケミカヅチと戦って勝てるのは多分僕だけだから」


 タケミカヅチの機体――武双には試作品とは言えコトアマツカミが搭載されている。それに対抗できるのは完成品のコトアマツカミが搭載されている僕の金閃公だけ。あとはヤマトとサクヤの二人と力を合わせれば、勝機はある。


「我々はなにをしましょうか?」


「お婆様の近衛の相手をお願いします。近衛はタケミカヅチを倒すまではきっと現れない。だから、タケミカヅチを倒したら皆さん、お願いします」


「それは同じく入り口ですかな?」


「いえ、奥に進んでからです。居住区の中央に大きな道が一本真っ直ぐに、お婆様のいる社に向かって続いています。軍関係の施設まではそれで一気に抜けられるはずです。近衛とは軍関係の施設辺りで戦うことになるでしょう」


 それを聞くとイナゲさんはふっと小さく笑って言った。


「武神さえ倒せば一気に喉元まで迫れるとわけですな。分かりました。近衛の相手は引き受けましょう。それでやはりアマテラスは強いのですかな?」


「未知数です。大神のみが操れる伝説の霊魂騎士もありますし。ですが、僕には新システムのコトアマツカミがあるので」


「了解です」


 イナゲさんは将校たちに向き直ると言った。


「大体決まったな。パイロット各員に通達だ。作戦に合わせた改装、予備の武装も用意しておけ! 準備はどのくらいで完了する?」


 大体の情報が出そろうと、イナゲさんによって手早く準備が進められた。


「〇(まるよん):〇〇(まるまる)かと」


「なら、作戦開始時刻は〇(まるよん)四五(よんご)だ! フジサワから出撃する。作戦名は、そうだな……『アマツミカボシ』」


 最後に作戦名を発表すると、イナゲさんは僕にどうですかな、と視線で問いかけてきた。


「かつてお婆様に戦いを挑み、神の間では邪神とされる神の名ですか。これはなんとしても勝利して邪神の汚名返上と行きたいですね。あと、金星を指す神で明けの明星の時間帯とは洒落が利いていますね」


 僕にはその作戦名に込められた意図が分かったので、ほほ笑んで答えた。


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