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魂魄機動 霊魂騎士ーソウルナイトー  作者: ワンサイドマウンテン
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ヤマトとサクヤ

 その後、シズオカは放棄。迅速にカナガワで前線が整えられていた。北の前線もナガノまで後退している。

 僕はと言うと、そのカナガワにある基地に招かれていた。


 結局、神たちを味方には付けられなかった。だけど、人間は僕のことを、少なくとも好意的に受け止めてくれたようだ。

 機体を整備してもらっている間、エノシマを眺めながら、ヤマトにさっきのことを聞いていた。


「さて、聞かせてもらうよ。なんでヤマトが霊魂騎士に乗っているのか、あの霊魂騎士はなんなのか」


「突飛すぎるけど信じられるか?」


「もちろん」


「あの霊魂騎士、実はサクヤなんだよ」


「え?」


「だから、あの機体の正体はサクヤなんだよ。言っただろ突飛すぎる話だって」


 自分もよくわかっていないことだから、それ以上は何も言えないと言外に言っていた。


「……サクヤが霊魂騎士に変身? したってこと?」


「多分そんな感じだ。よくわかんねーけど、いきなり様子が変になって、そしたらなんか霊魂騎士になってた。俺が乗ってたのは、変身はできるけど自分一人じゃ動かせなくてパイロットが必要なんだと」


 ヤマトは俺が分かるのはこれだけだと、その時の状況を説明してくれた。


「そっか。今、サクヤは?」


「人間の姿に戻って休んでる。すげー疲れたってよ」


「わかった。サクヤには後で話を聞くよ」


 一息つくと話題を変えてヤマトが話し始めた。


「しかしあれだな、この一年でさらに逞しくなっちまったな。やっぱあれか? 今回のことは前から決めてて、鍛えたりとかしてたからか?」


 僕の身体を上から下までさらっと見てヤマトは感心したように言う。


「うん、そうだね。他にも色々あったし。全然自覚はなかったんだけど」


「だよなぁ。あの武神と正面から対峙できてたくらいだし」


「それを言うならヤマトだって凄かったよ。霊魂騎士に乗ったの、さっきのが初めてでしょ?」


「ああ、成り行きで乗っちまったけど、案外どうにかなるもんだな」


 大したことはなかったな、と言うヤマトに僕は苦笑する。


「普通はどうにかならないって」


「まぁ、サクヤのおかげだな。色々とサポートしてくれたからよ」


「そのことなんだけど、様子がおかしくなったって、どういう経緯だったの?」


 人間が霊魂騎士に変わるなんて話、聞いたことがない。なにかがあったはずだ。


「戦争が始まった辺りから、少し体調が悪い感じだったけど、今日、俺があの戦場に現れる数十分くらい前に、頭を押さえたと思ったら霊魂騎士になった」


 それを聞いたところで、特になにか分かったわけでもなかった。やっぱり本人に聞いた方がよさそうだ。


「そうか。あの時は助かったけど、これ以上ヤマトを僕の戦いに巻き込みたくない。だから、どうか今後は戦いに出ないでほしい。サクヤにも」


「いや、そういうわけにはいかないな。その頼みは聞いてやれない」


 そんな僕の願いはきっぱりと拒否された。

 僕がなんでか分からないという顔をしていたのだろう、ヤマトは続けた。


「ニニギに全部押し付けたくねぇんだよ。俺たち人間のために戦ってくれてるのは、すげーうれしいけどよ。俺ら友達じゃん? 黙って見てるなんてできねーよ。だから、俺とサクヤにも協力させてくれ」


 真剣な眼差し。ヤマトは本気で言っている。つい昨日までは、軍の関係者でもなんでもなかった一般人がいきなり戦いにその身を投じる。


 その戦いがどんなものかを知っていながらだ。

 それでも覚悟を持って言っている。

 なら、たとえここでそれを受け入れなくても、勝手に戦いに加わってくるんだと思う。そんな風に加わられるくらいなら、ここで受け入れた方がいい。その方が納得できる。


 それに、人間と神という立場以前に僕とヤマト、サクヤは友達だ。友達の真剣な申し出を断るわけにはいかない。

 理由なんていらない。友達だから。

 利用したなんて言われても構わない。この感情が分からない奴のいうことなんて気にしていられない。

 それくらいに強いものだから。

 この、絆という力は。


「……真剣な友達の思いを無下にするなんて僕らしくない、な。ありがとう、ヤマト。友達として、力を貸してほしい」


 僕がそう言って頭を下げると、ヤマトは満足そうにニカッと笑って「おうよ」と意気込んだ。


「俺たちで新しい世の中を作ってやろうぜ!」


 夕暮れ時に映える美しいエノシマの風景をバックに僕たちは誓った。


「ところで、ヤマト、カナガワ前線いや、統括司令部の場所ってわかる?」


 感傷に浸っていたかったが、そうはいかない。そもそもこの計画は超電撃戦だからだ。

 尤も、超電撃戦というには、既に時間を食いすぎてしまってはいるが。


 それでも早く行動に移すに越したことはない。いや、移さなければならなかった。やることはたくさんある。

 結果的に僕は人間の勢力に加わったが、人間側に僕の計画が承認されたわけではない。組織としての協力を取り付ける必要がある。


 高天原で孤軍奮闘している、サルタヒコのこともある。迅速に事を運ばせなければならない。

 サクヤに話を聞かないといけないし。


「そういや、俺とサクヤってどうなるんだ? 立場は民間人だし」


「その辺も含めて話に行くんだよ」


「ま、最悪サクヤと協力して抜け出して一緒に行くさ」


「無茶はしないでね? そうなるかどうかは僕にかかってるんだけど」


 ヤマトに司令部の場所を聞いた僕は一旦、ヤマトと別れ司令部に向かった。


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