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狐憑きのわたしが嫁いだ相手は軍人将校さまです。  作者: 陸奥こはる
2章 狐憑きと旦那さまの結婚式編。
21/24

2章番外編 夏祭り1/2

タイトル通りになります。2章番外編です。

 日が僅かに地平線に姿を見せたころに深雪は目を覚ました。そして、隣で眠る崇正の横顔に気づいて、ぼんやりと昨夜のことを思い出して――一気に顔が火照った。


 ――今までにない深い愛され方をされてしまった。夫婦が同衾するというのは、ああいう風に愛される為だったんだ……。


 顔の火照りが、頭の中にまで回ってしまったのかも知れないと思うほどに、深雪の思考はぐるぐると回った。

 けれども、それは決して悪い気分ではなく。

 心が満たされるような感覚もあって、深雪は自分自身でも気づかないうちに、なんとも幸せそうに微笑んでいた。





 崇正はしばらく休みを取ってはいるものの、しかし、だからといって深雪の仕事まで連動して休みになるわけではない。

 まだ崇正が眠っているうちに、深雪は朝食の支度を初めて、いつも通りのやる事をこなしていった。日課のようになりつつあるお陰もあってか、何も考えずとも手が勝手に動く。


 そうこうしているうちに、崇正が起きて来た。


「おはよう……」

「おはようございます。朝食の準備は出来て……」


 二人はそんな朝の挨拶をしつつ互いの顔を見やり――それと同時に、揃って固まり押し黙った。

 両者ともに顔が赤らんでいる。

 理由は考えずとも分かる。

 二人が思い出しているのは、互いに、昨夜のことなのだ。


「その……」

「……は、はい。なんでしょうか」

「僕なりに優しくしたつもり……なんだけれど、嫌じゃなかったかなって」


 頬を掻きながら、崇正がなんだか少し不安そうな表情になった。

 深雪はその様子を窺いつつも、本音を言うことにした。嫌だとは微塵にも思っていないので、取り繕う必要もウソを言う必要も無いからだ。


「嫌では無かったです。満たされるような感じがあって、その……とても嬉しかったです」


 そして、再び二人はしばし無言になった。お互いの顔は林檎よりも赤くなっていた。


 と、その時であった。

 外から微かに騒がしいような物音が聞こえたのだ。

 深雪が慌てて二階の窓から様子を確認すると、少し離れたところに見える大通りの方向で、なにやら屋台を組み始めている人たちがいた。


 あれは一体……?


 深雪が首を傾げていると、遅れて深雪の後ろから窓の外を眺めた崇正が、「あっ」と何かに気づいたような声を上げた。


「えっと……旦那さま?」

「今日は夏祭りだったんだっけ」

「夏祭り……?」

「うん。あれはその準備だね。的屋さん。お昼が終わったら本格的に始めるのかな。……そういえば、深雪はお祭りとか行ったことないよね?」


 あるわけがない。なので深雪は頷いた。すると、崇正が笑顔になった。


「じゃあもう少ししたら……夕方あたりになったら行ってみようか。その頃から花火もやるハズだから」


 お祭りも花火も、言葉自体は知っているけれど、実際に体験するのは初めてだ。少し楽しみだ。


 深雪はふと思った。


 ――座敷牢にいた時には考えられなかったような、外の世界の楽しいと嬉しいに触れられて。

 ――そのうえ素敵な旦那さまがいて、愛しても貰えて。


 今の自分はやはり幸せなのだ。そうに違いないと、深雪は現実を認識した。

座敷牢にずっといたし、多少は幸せになって誰も文句は言わないはず……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが気になります。甘々な様子も見たいし、外の世界の楽しい事を経験させてあげたいですね。 実家の人達にはちょっぴりざまぁも欲しいところです。
[良い点] ハッピーエンドの所 [気になる点] この世界に狐以外にたぬきとかのもふもふに憑かれた存在がいるのかどうか 尻尾はないのでしょうか?何度もすみません [一言] おまけありがとうございます。妖…
[良い点] ご自分の世界を、綺麗に描いてあって、好感が持てます。確かに、飛び抜けて上手とは言えないかも。標準以上はある。このまま同系統の、設定が異なったり、展開が違ったり、もっと大掛かりだったり、逆に…
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