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※2025年10/30-リメイク中。読書中の方は活動報告をご覧ください【二章完結】ヒロインなんかじゃいられない!!男爵令嬢アンジェリカの婿取り事情  作者: ayame@キス係コミカライズ
第二章「温泉まちおこし」編

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裏お見合い大作戦です2

「うちの3番目の兄が、馬車の修理や馬の管理をする部門にいるのですけど、座面の布の張り替えのこと、ちらっと言っていたような……。修理だけでなく新しい部門を立ち上げる予定もあって、そこも任されるみたいで、“忙しくて泣きそうだ”ってぼやいていました。2番目の兄は数字に強くて経理部門を担っているのですけれど、その兄も、“父が引退状態でただでさえ忙しいのに、新たな事業用の土地を探して買収しろって狂気の沙汰だ”って嘆いていて……」


 兄弟仲は悪いわけではなくむしろ良好で、だが仕事の忙しさから最近はなかなか話ができる状態になく、それゆえに強制的なお見合いやシュミット先生とのことも、2番目・3番目の兄たちに相談できないのだと、彼女は付け加えた。


「ふむ。リンド馬車は馬車座面の布の張り替えを計画していて、その発注がガイさんの工場に来ている、そしてさらに新規部門の立ち上げを検討している、というわけですね」


 ロイがまとめた話には特段おかしなところはなかった。座面の布なんて消耗品だろうから、いつかは張り替えなければならないと想像はつく。


 となれば、怪しいのは新規部門の立ち上げの方だろうか。とはいえなんの部門を作ろうとしているのか、こちらは見当がつかない。だがこのタイミングでガイさんの家にお見合いを持ち込んでいるのだから、新部門とガイさんの工場は無関係ではないはずだ。


 野心を持っているエミール新社長の、妹を無理矢理結婚させようとする強行姿勢。新規事業のために土地の買収まで検討している状況。そこから導かれるものは——。


「……リンド馬車は、ガイさんの工場の乗っ取りを計画している?」


 思わずこぼれた私の思いつきに、ガイさんが慌てて首を振った。


「そんな、まさか! うちはどこかに乗っ取られるような、そんな貴重な工場ではありませんよ。ただの卸業ですし。うちなんか乗っ取ったところで、商売の足しにもならないでしょう」

「でも、リンド馬車は新規事業を立ち上げようとしているのでしょう? それって、エリザベスさんとガイさんを結婚させて身内にした上で、工場ごと自社に引き込むつもりで準備しているって考えられるんじゃないかしら。だからこそ土地が必要とか」


 エリザベスさんの手前10歳児を演じてきたが、ついボロが出てしまった。だがそんなことに構っている場合ではない。


「そもそも座面の布って、そんなに一気に取り替えるものですか? 古くなったものから徐々に変えていくのが普通じゃないでしょうか。年間の予算だってあるでしょうし、大型発注するほど一気に取り替えるっておかしいと思います」

「それは……確かにそうですが。あぁ、ただ今回発注いただいた布は、うちのオリジナルの新商品なんですよ。それをリンド馬車の新社長が気に入ってくださったと聞いています。今あるものをすべて欲しいと、そう申し出があったそうです」

「新商品? どんな商品なんですか?」

「ええっと、リンド馬車は父の担当なので、私もそこまで詳しくは聞いていなくて。布も、うちの従業員でもあるいとこが作ったものなんです」

「いとこ?」


 ガイさんの話から、以前サウル副会長から聞いた情報を思い出す。織物商を営むオコーナー家は家族経営。一人息子のガイさんの他に、身内があと2人働いているという話だった。


「父の妹夫婦が流行病で早くに亡くなりまして、残された子どもたちを幼いうちに両親が引き取ったんです。そのうちの1人が機織りが得意で、それが高じて新しい布を開発したとかで。父がその話をリンド馬車のエミール新社長にしたのだと思います」


 オコーナー家の商売は家族経営だが、なんとなく役割が決まっているらしい。父親は工場の管理と既存顧客対応で、ガイさんは仕入れと新規顧客対応、母親は経理部門と在庫や発注担当、いとこ2人のうち長男は地元で両親の補佐、そしてその妹は布のサンプル見本を作ったり入荷品の仕分けをしたりなどしているそうだ。合間を見つけて新たに開発した布を、ガイさんの父がたまたまリンド馬車のエミール社長に持ち込んだらしい。


 自身の仕事で手一杯、かつしょっちゅう地元と王都を行き来している事情から、いとこたちとゆっくり時間を過ごす暇もないガイさんは、新商品の詳細を知らないとのことだが。


「その新商品とてつもなく怪しいわ! どんな布なのか至急調べてください!」


 エミール新社長が気に入って発注した布。さらに直後にエリザベスさんとガイさんの婚約を打診し、新規事業のために土地探しまでしている。ガイさんの家の事業を取り込み、その布を大量生産するための下準備と考えることができるんじゃない!?


(突破口、見つけた——!!)


 思わずガッツポーズをした私を、集まった面々は三者三様の思いで見ていたようだが、そんなことに構っていられないほど、私は興奮していた。


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