私、本当の神子だけど旅に出ます!
私の住むこのブラム王国にはとても可愛い誰からも愛される女の子がいる。
その女の子の名前はミシェル・ハーベルという名前で、私ことアイーシャ・クロエの幼馴染みである。
そして、つい先日だが誰からも愛される自身の幼馴染のミシェルはこの国の神子として王宮にある神殿へと行くことになったのだが私はこれが心底嬉しくて仕方ない。
だって、今まで私にベッタリだったあのミシェルがここから居なくなるのよ!
ミシェルは誰からも愛される女の子。
それでも、私は昔から彼女のことが嫌いではなかったけれどとてつもなく苦手だったのだ。
まあ、それは恐らくだけど私が本当の神子というものだからだと思うけど。
私は自身の目の前で色んな人に囲まれながら苦笑を浮かべるミシェルを見つめ、小さく溜息を吐く。
すると、そんな私の溜息に反応したのは自身の近くにいた一匹の真っ白な狼。
彼はゆっくりとこちらに近寄っ来たと思うと、そっと私の足に頭を擦り付けながらこんな事を言った。
『どうした、クロエ。あの小娘をやっと食っていい気になったか?』
鋭い歯をミシェルに向けながらニヤリと笑うノア。
私はそんなノアを見ると、軽く彼の頭を叩きながら首を横に振った。
「そんな訳ないでしょ。あの子が居なくなったら困るのよ」
その瞬間、ノアは詰まらなさそうな顔をしたと思うと自身の頭を足で掻きながらこんな事を告げた。
『なんだ、もしかしてまだあの小娘を神殿に送って自分は外の世界でのんびり過ごそうっていう魂胆か?』
「えぇ、そしたらミシェルは神殿で贅沢な暮らしが出来る。そして私は私でミシェルから解放されて好きに色々な場所を旅する生活を送れるようになるでしょ?」
途端に大きな口を開けて笑い出すノア。
ノアはゲラゲラと笑いながら私の発言に対して首を横に降った。
『ハハハハッ!クロエ、お前は今の神殿の長を舐め過ぎだぞ!!』
「……何、それはどういうこと?」
『ははっ、簡単なことだ。お前はジェルバールの小僧を甘く見過ぎた。あやつはお前以上に神子という物を理解している』
「何がよ。聖下とはいえ相手はただの人間でしょ?」
『ただの人間、なぁ?そうだといいなぁ?』
このノアの様子からして、ジェルバール聖下には何かしらのノアにこんなことを言わせるような力があるという事だ。
それは一体どんな力だというのだ……。
私はこちらを見上げながら地面に伏せてニヤニヤと笑うノアの横腹に軽く蹴りを入れると『痛いなこの乱暴娘!』と喚くノアを鼻で笑い飛ばす。
兎にも角にも、ジェルバール聖下が何者であれ私が神子であることがバレなければどうってことない話でしょ?
私はクスリと笑みを零すと、こちらを見上げて不思議そうな顔をしたノアの頭を一撫でするとその場に背を向けながら彼に対してこう呟く。
「ノア、私はこのままミシェルが王宮に行く前に旅に出るけど貴方はどうする?」
すると、その場から歩き出した私の隣にピッタリと引っ付きながらノアは『俺はお前について行く』と嬉しそうに目を細めて笑う。
「なら、決まりね」
私はそう呟くなり大きく伸びを一つすると、いつの間にか大人を二人ぐらい余裕で乗せられるぐらい大きくなったノアの上に跨る。
『で、クロエ。お前が行きたいところは?』
「別に何処でもいいかな。あっ、でもノアが昔話してくれたノアの友達だって子達には会いたいかも」
『友達?馬鹿な事を言うな。あいつらは私のパシリだ!』
「はいはい、どうでもいいからミシェルに見付かる前にさっさと行くよ」
『先ずはどいつの元に行く?』
「ギルバードで」
『なんでそいつなんだ』
「ノアと仲が悪いって聞いたから」
『この性悪め……ッ!!』
「そんな性悪と一緒に行動するって言ったのは何処の誰よ。いいからさっさと飛んで」
途端にグチグチと文句を言いつつではあるものの、地面を蹴ってその場から跳躍したノア。
そこから見えるのは夕日に照らされた王都の景色。
私はノアの背中に抱き付きながら、小さくこんなことを呟く。
「……私、ノアの背中の上から見る景色が一番好きなんだよね」
そうすれば、そんな私の声が聞こえたのか鼻を鳴らしながら『そうか』と笑うノア。
この日、ブラム王国から私ことアイーシャ・クロエが消えた。
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物凄く前からメモ帳にあったネタみたいなもの。
取り敢えず、今ある続きとしてはクロエが旅に出た二日後にミシェルが神殿に行ってジェルバールから『こいつは神子じゃない。でも、こいつは本当の神子の傍にいた』と言われて、ミシェルの一番近くにいたクロエがもしかしたら神子かもしれないということでクロエとクロエ捜索隊の鬼ごっこが開始する。