笑えよ!
みんなと集まる日になり、今日俺は穂希に誤解を解きそして告白しようと決めた。
心臓がバクバクしている。
既に緊張がヤバめ。
「あけおめー!」
「中島くん杏さんあけましておめでとう!」
「おーす!おー佐久間も来たな!後は地味子ちゃんだけか!」
皆いつも通りだ。
特に年が明けだからって何も変わった様子は無い。
「穂希ー!あれ?今日はいつもの穂希ね?」
「杏ちゃん明けましておめでとうございます。ちょっとやっぱりこっちの方が落ちつくし、気にしないで!」
穂希は地味子さんスタイルで登場してきたのだ。
これはこの前の事がキッカケなのか!?
「カラオケ行こうぜー!」
「健人好きだよねぇ〜」
皆とカラオケへ行く事になり、未だ穂希とは会話をしていない。
しかも、こっちを全然向かないし微妙な距離感もある。
絶対避けられてるよな。
マズいな。
「私、友達とカラオケ来るの初めて!いつもは1人カラオケだから。」
「寂しいこと言うんじゃねーよ古谷ー!いつでも誘え!」
「ありがとう!今日は歌っちゃおう!」
古谷がテンション上がりトップバッターを務めた。
上手い。
普通に上手い。
1人カラオケで鍛えていたな。
穂希はそれを聴きながら楽しそうに手拍子をしている。
「穂希!一緒に歌お!」
「い、いや私はいいです!」
「穂希上手いじゃん!はい!マイク!」
クリスマスパーティーの時のライブで歌っていた曲を杏と穂希がデュエットしている。
穂希の声は良いな…
「杏ちゃん地味子ちゃんめちゃくちゃ良かった!佐久間もなんか歌えよ!」
「え、あ、あぁ。」
一応その場のノリで俺も歌った。
カラオケはあまり得意ではない。
穂希は画面だけ見て手拍子すらしていない。
ちょっと俺傷ついちゃうって!!
「なんだ〜光も案外上手いのね?ね、穂希!」
「え、う、うん…」
中島が小声で俺にまだお前らあの日のままなの?と聞いてきたので俺は頷いた。
「そー言えば、ドリンクバーだったよなここ!!佐久間ちょっと皆の分のジュース挿れてきてよ!」
「え?!」
「ごめーん地味子ちゃんちょっと手伝ってやってよー!今から3人で歌わないといけないからさ!」
「あ、ハイ!」
穂希とジュースを取りに行く事に。
中島は良い機会を作ってやったとばかりに俺に親指を立てて笑った。
あいつ…俺も何を喋ったら良いのか…
「わ、悪いな!手伝ってもらって!」
「いえ、全然です。」
穂希は全く目を合わせてくれない。
「中島はコーラで古谷はりんごジュースで」
「杏ちゃんはミルクティーです。」
「あ、あのさ、この間の事なんだけど…今聞くのも場違いかもしれないけど、あの日…最後まで聞かないでゴメン。」
「………。」
「こ、告白してくれようとしたんだよな…?その…俺あの時色々考えがまとまってなくてさ。
すぐに答えが出せそうになくて…それで俺も…」
「告白なんてしようとなんてしてませんよ?光くん面白ーい!あははは!」
「え…?じゃぁあの時なんて言おうと…?」
「え?ん〜あまり覚えてないです…光くんが急に会話を止めた時ですよね…?
尊敬…そう!光くんの事尊敬してます!って言おうとしたんだ!
ちょっと待ってくれって言うからそれでなんか雰囲気がおかしくなってきちゃって…」
「そ、そうなんだー!あははは…なんかワリーな!く、空気読めてなかったな!あははは!」
「皆飲み物待ってるから早く行きましょ!」
「だな!早く戻ろ!」
戻ってからは俺は1人灰のように真っ白になっていた。
心ここに在らずだ。
マジで?
え、告ろうとしたんじゃないの?
おいおい、まさか本当に俺の勘違いパティーンとか。
桐ちゃんの爆笑する姿が目に浮かぶ。
「…くん。佐久間くん!」
「お、おぉ古谷。」
「大丈夫?佐久間くん次順番!」
「オッケー…」
もうヤケになった。
とりあえず今はみんなが居るし普通にカラオケを楽しもう!
歌って辛い事なんか吹き飛ばそう!!
「古谷一緒に歌おうぜ!」
「良いよ!よーし!」
カラオケはなんとか盛り上がりなんとか俺も平常心を保っていた。
「あーもう声がガラガラだー。そろそろ帰っか!」
「健人ーちょっとお茶して帰ろうよ!穂希も行こうよ!」
「良いの?」
「良いわよ!光と古谷くんは?」
「悪い。俺は帰るわ!今日はありがと!おつかれさん!」
「あ、私も帰るね!ちょっと待ってよ佐久間くん」
穂希とはこれ以上一緒に居られない。
俺の心が壊れてしまいそうだった。
「佐久間くん、何かあった?」
「言わない。笑うもん。」
「笑わないよ!」
公園でホットコーヒーを買い俺はドリンクバーでの事を語った。
「そっか。」
「笑えよ!!」
「どっち!?でも、笑わないよ。」
「笑って馬鹿にしてくれ…。こんな勘違い野郎の事なんて…」
「佐久間くんは穂希さんの事好きなんだよね?」
「なぜそれを。」
「泉ちゃんをフッたでしょ?」
「なぜそれも!?」
「実はさ、その日泉ちゃんから泣きながら電話があったんだ。」
古谷はその時の事を教えてくれた。
泉は最初大泣きで何を喋ってるか分からないくらいだったらしい。
「少し落ち着いてからさ、佐久間くんの心配ばかりしてたよ。」
「ひーくんは地味子ちゃんの事が好きなんだって。ひーくんは優しいから私を傷つけないようにしてくれて…
でも、ひーくん告白とかした事無いだろうし大丈夫かな?
地味子ちゃんもすごい良い子だから私は応援したいな…
上手く行って欲しいな…
地味子ちゃんを選んだんだから全力で向き合ってあげて欲しいな…
でもひーくんが他の子と付き合うって考えたら辛いな…
でも私フラれたんだからこんなにずっとウジウジしてても駄目だよね!
あーもう!絶対ひーくんなんかより良い男見つけてやる!!
やっぱり泉が良いなんて言っても遅いわバーカって後悔させてやる!!」
「て、言ってたよ。最後は後悔させたそうだったけど」
泉は最後まで俺の事を考えてくれていた。
俺もこんな事で引き下がれないよな
「穂希さんやっぱりその時告白しようとしてたと思うんだけどな〜。女の勘!」
「いや、まだ女じゃねーだろ。」
「あははは!佐久間くん、まだそのくらいで諦めたらダメだよ!泉ちゃんの為にも最後まで頑張らなきゃ!
結果は分からないけど、後悔はしないようにね!」
「ありがとな。」
「じゃあ、明日泉ちゃんとデートしてくるから今日の事報告しとくね!」
「言わんで良いわ!」
「佐久間くんの見張り役なんで!」
古谷は良い奴だ。
あいつはなんでも知っていそうなそんな気にさせる。
「弟!今日どうだったの?ジミーちゃんに会った?」
「会ったよ。」
聞くまで離れないので俺は色々と説明をした。
「プーっ!ククク…クスクス!ゲラゲラ!あーっはっはっは!ヒーヒー!腹痛い!死ぬ!あ…あんた私を殺す気…!?」
俺は悔しすぎて少し涙が出た。
「ドンマイ。」