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絶対に元の世界には帰らない!  作者: 401
第二章 攻略編
28/49

こうして魔王城は消滅し人々の平和は守られたのだった

 なんやかんやで魔王を倒してしまった。


「(はぁ……。これからどうするかなあ……)」


 光弥達の方を見ながら、小さくため息をつく。


 とりあえず、まずはシエディアを助けにいかなければならない。

 どこに召喚されたかはわからないが、恐らく魔王城か、その付近だろう。

 四天王とかいうのがいるそうだが……まあ、魔王と違って物理攻撃が効くならどうとでもなるはずだ。


「……カゲヤの先程の力や、伝説が魔王の作った偽りだったなど、色々思う所はありますが……とりあえずは、魔王の心臓を回収して、星王国へと帰還しましょう」

「そうだね、この――」


 光弥が急に黙り込み、魔王の方へと振り返った。


 ……嫌な予感を感じながら、俺とエイシア、アングもつられて魔王へと振り返る。


「そんな……!」


 悲痛な叫びを上げるエイシア。


 全身を余す所なくズタボロにされ、身体を内部から焼かれたはずの魔王が立ち上がっていた。


「か、は……やってくれたな、人間共……!」


 魔王は身体に刺さった聖剣――否、星幽剣を自身へと同化させていく。


「同化させてすぐでは、この傷を完全に修復するには至らんか……。しばしの間、身体を癒やし、力を馴染ませる必要があるな……」

「しまった……!」

「ふん……これで、星幽剣の契約が断たれ、成長力と遮断無効の力が勇者の元へ帰ってしまったが……。まあいい、星幽剣の成長は予想以上だ。これなら、人類全てを滅ぼすことも容易い……」


 ……ん、待てよ?


「(じゃあ、もし光弥を殺して契約を断っていたら、星幽剣から遮断無効の力が無くなってたってことか?)」


 勘違いに気づき、顔が青ざめる。……そりゃ、そうだよな。勇者が死んでも奪った能力が剣に残るなら、わざわざ光弥に遮断要石を壊させる必要なんてないもんな。ゲーム的に言うなら、レベルアップした能力値は剣の物だが、スキルは借り物、という感じだろうか。


 なんだか光弥への申し訳無さがどんどん深まっていくが、俺のそんな様子に気づくこともなく魔王は続ける。


「三ヶ月だ……。三ヶ月の間、余は眠りにつく」

「それを許すとでも思っているのか、魔王!」


 光弥が素手で構えを取り、エイシア達が魔法を準備する。だが――


「無駄だ。既に余の空間魔法は発動している。勇者……そして、シエディアの娘、カゲヤよ。余が復活するまでの間、残り僅かな余生をせいぜい楽しむがいい」

「ッ、《禊の――」

「《最果ての転移》」


 光弥が神聖魔法を発動しようとするが、それより早く魔王の姿が消え失せる。


「……くそっ!」


 光弥の嘆きが静まり返った室内に虚しく響いた。


※


 魔王城の一室。


 魔王が空間魔法で結界を張った、脱出不可能の独房「歪曲封牢」に閉じ込められたシエディアを見ながら、四天王達はため息をつく。


「……ふぅ、やっと入ったか」

「手こずらせやがって、この女……」

「まさか、右腕しか動かせない状態で我らを相手にあそこまで立ち回るとは……」

「魔王様の鱗の拘束も、既に壊されているか……」


 シエディアはガンガンと半透明の結界を叩き、集音のマジックアイテム越しに四天王へ罵声を飛ばす。


『ちょっと! 出しなさいよ!』

「この結界は一度閉じれば我らにも開けられん。開けられるのは魔王様だけだ」

『魔王に開けられるのなら、私でも時間をかければ――』

「はは、粋がるなよ魔人シエディア。もうすぐ魔王様が帰ってくる。我ら四人と、魔王様を相手にしてもその余裕が――」


 瞬間、転移魔法の青い魔力が輝く。


「む? おお、魔王さ――ッ!?」


 魔王の魔力を感知した四天王達が振り返る。


 だが、転移した魔王は、普段の威厳が見る影もない満身創痍だった。


「ハァ、ハァッ……!」

「ど、どうされたのですか、その傷は……!?」

「四天王か……余は一刻も早く眠りにつかねばならぬ。この場で何があったか説明する。……念の為、シエディアの独房との通信を切っておけ」

『あっはははは! 何そのズタボロっぷり! ねえねえサニウス、今どんな気持ち? 私を追いやって勝った気満々だったのに、ここまでボッコボコにされちゃって! 私の娘を舐めるからそうなるのよ、油断して負けるのが本当に得意なのね貴方って! それに――』


 プチッ、と通信が切られる。


 四天王達がこめかみをひくつかせる中、魔王の説明が行われた。

 一部始終を聞いた四天王達は、驚愕に声を震わせる。


「馬鹿な……! 人間ごときが魔王様を……!?」

「余はこれより星幽剣を同化させるため、三ヶ月の眠りに入るが……、その間に、勇者が余以上に成長しないという保証はない」

「むむ……」

「まだ軍備が整っていないが、仕方あるまい……四天王招集に伴い、都合よく城下に兵達が揃っているからな。……万獣将ブラク!」

「ハッ!」

「貴様に全軍の指揮権を預ける。――人類への侵略を開始せよ。勇者との戦闘を避けながら、呪いをまき散らすのだ。治療や浄化のための神聖魔法を使わせ、戦闘や修行を行えないように疲弊させろ。人間共は存分に痛めつけ、適度に殺せ。出来るな?」

「お任せ下さい!」

「龍刀将トーハ、貴様は呪いの武器を製造し、軍に配備せよ。鉄鬼将ヤイダは英雄級――Ⅴランク冒険者共を潰しにいけ。だが、カゲヤという魔剣士には接触するな。死霊将ドーペス……お前は、魔王城の防衛を頼む。四天王最強である貴様なら容易いだろう」

「了解しました!」

「御意!」


 四天王達の了解の声を聞いた魔王は、満足そうに頷いた。


 いくつかの細かい指示を出した後、残った魔力を全て消費し、強固な空間遮断の結界を作り出す魔王。


「死霊将ドーペス、しばらくはシエディアの監視をしておけ。二日も放置すれば魔界に帰るはずだ」

「はっ」

「この結界は、余自身でも時間が経たぬ限り出ることは出来ぬ……。あの娘の馬鹿げた魔力出力でも破壊は不可能だ。……後のことは頼むぞ。《星幽界の迷宮》」


 魔王が空中に作られた球形の黒い結界へと入り、その姿が消える。


 それぞれの指示に従い、己の持ち場へと戻る四天王達。


 魔王からシエディアの監視を命じられた死霊将ドーペスは、独房との通信を入れ直す。


『で、どうなったの?』

「はっ、教えるわけがないだろう」

『ふーんだ、いいもんね、どうせもうすぐうちの娘が助けに来てくれるし』

「助けに? はは、魔王城は大規模結界で覆われ、常に精鋭モンスター達の監視が行き届いている。転移魔法で侵入しようにも、魔王様ほどの魔力がなければ妨害魔力で弾き飛ばされ――」


 そこでドーペスの言葉を遮るように、轟音とともに部屋の扉が吹き飛んだ。


 現れたのは、黒髪の――男だった。


「シエディアぁ! お前、何酒なんて持たせてんだゴラァ!」

『ひえぇっ!? 夫が来た!』

「誰が夫だ! もういいから、さっさと帰るぞ!」

「き、貴様、何者だ!」

「ん? ああ、四天王か」

「どうやって入ってきたかは知らんが、四天王最強であるこの私、死霊将ドーペスに勝てるとでも――」

「死霊将? アンデッドが太陽に勝てるわけないだろ」

「ぐわぁあああああ!?」


 壁を融解させてドーペスに収束された太陽光が照射された。ドーペスは塵も残さず蒸発した。


 入ってきた男――陰矢は、独房の結界に手を当て、改造魔法で穴を空ける。


「ほら、帰るぞ」

「あ、うん。……そういえば、魔王が眠りについちゃったんだけど……」

「……あの黒い結界か。全力で改造魔法使えばいけるか?」


 バリバリと魔王城を染め上げるかのような強力な紫電が舞うが、結界には歪み一つない。


「硬った……これは、無理だな。魔王自身でも出れないようになってるんじゃないか? まあ、三ヶ月後までに光弥用の最強装備でも作っておけば大丈夫だろ」

「ねえインヤさん、せっかく魔王城に来たんだし、お宝とか漁っていかない?」

「魔王城建ってから三ヶ月ぐらいだし、そんな大した物ないと思うぞ。それに、もう時間がない」

「時間?」

「ああ――今から、この城は消滅する」


※


 俺は、シエディアと一緒に魔王城から遥か離れた山の頂上へと転移した。


 そろそろ季節は夏だが、今いる場所は標高が高いので少々肌寒い。

 だが、標高が高い分澄んだ青空が綺麗に見える。


 ついでに、そんな青空の中を落ちてくる隕石も。


「……えーっと」

「対魔王用に用意した兵器の一つ――名付けて、『隕石』だ」

「まんまじゃん」

「他にどう呼べばいいんだよ。環境に配慮して、核兵器は使わないようにしたんだぞ」

「どう考えても環境に悪いでしょこれ。人がいない僻地だからいいものの……」

「……まあ、小惑星を転移させるための打ち上げロケットが一本しか作れなかったから、もう使えないんだが……。その時はまた別の兵器を使うよ」

「こんな無体な物がまだあるの……」


 飛ばしておいたカメラドローン越しに、モンスター達が慌てているのが見える。

 一目散に逃げ出すモンスターもいるが、もう間に合わない。いくら早く逃げようと、せいぜい塵も残さず死ぬか、粉々になって死ぬか程度の違いだ。


「ああ、もったいないな、せっかくの貴重な素材達が……けど、あんまり時間かけると素材が逃げて、人様に迷惑かけちゃうしな……」

「……今更だけど、強力なモンスター軍に対する扱いじゃない……」


 そして、隕石が衝突した。


 魔王城、大規模結界、精鋭モンスター、四天王、魔王軍。それら全て、ことごとくが塵芥のように消し飛んでいく。


 立ち上るキノコ雲はなかなかに見事だった。


「……あ、一応補足しておくが、キノコ雲は莫大な熱量があれば核爆発以外でも起こるんだぞ」

「補足も何も、あんなの初めてみたんだけどね……」


 なんだかげんなりとしたシエディアの声を聞きながら、俺は自宅へと転移した。


「はぁ、疲れた……。今日一日だけで色々あったな……」

「ねえねえ、あの後どうなったの?」

「ああ、あの後……」


 今日あったことを大まかに説明する。


「ええ? じゃあ元の世界に帰っちゃうの?」

「まさか。ちゃんと作戦は練ってある。……けど、とりあえずは魔王が復活してからだな。準備はしておくけど、しばらくはゆっくりしようぜ。アイス食べる?」

「食べる」


※






 無残に焼け焦げた大地。元は魔王城があった場所に、固定されたように浮かぶ漆黒の結界。


「(クク……。待っていろ、勇者。そして、カゲヤよ……。我が四天王によって疲弊した貴様らをいたぶり殺すのが楽しみだ……)」


 結界の外で何が起こっているか知らない魔王は、微睡みの中で微かな笑みを浮かべるのだった。

ついでに他の諸々も攻略された第二章エピローグでした。

次話から、「第三章 日常編」が始まります。

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[一言] なんか魔王可愛いかも…
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