囚われの美少女姫騎士とかいうめちゃくちゃくっころなこの感じ
Q.なんで主人公はわざわざこんな大掛かりなことをしてるの? これだけ便利なチートがあるならもっと色々方法取れるでしょ?
A.引っ込みがつかないぐらい話を大きくしないと吹っ切れることができないチキンだから。
今回は少し短め。
「ええっと……確か、隠し部屋があるのは……。……この辺か」
三階の壁に手をつけ、改造魔法を発動させる。
紫電が舞い、壁に穴が開いて隠し部屋へ繋がる。通った後は穴を塞いでおく。
剣で鉄を斬れる光弥が牢獄に移動したが、どうやら光弥達はまだ牢獄を脱出していないようだ。
あんまり手酷い傷を負わせたわけではないが、結構深く気絶させたのでまだ目が覚めていないのだろう。だが、錬金術で薬を作れるアングがいる以上それも時間の問題だ。あいつ地味に優秀だな。
しかしどうする、カゲヤでも破壊できないような牢獄なんてないぞ。自慢だけど、物理でも魔法でも可愛さでも最強の美少女魔剣士だし。
とりあえず三人がいる牢獄から少し離れた場所にもう一つ鉄格子の牢を作り上げるが、この程度の牢獄ではカゲヤを閉じ込められない。囚われたままでなければいけなかった理由が必要だ。
『うっ、うう……、ここは……』『エイシア様! コウヤ殿が目を覚ましました!』『本当ですか!?』
向こうにある牢獄から、光弥達の声が聞こえてきた。もう目が覚めたらしい。早いんだよ畜生。
もう数分と経たずに光弥達はこちらの牢獄にやってくるだろう。
やばい、どうする。焦って考えがまとまらない。早く理由をでっち上げないといけない、こう、動けなくなってたとか――
「……! これだっ!」
とっさに思いついた案に運命を委ねて、俺は改造魔法を発動させた。
懐から魔力抵抗が高い頑丈な金属を取り出し、鎖と手枷を作成!
鎖の片端を適当な場所に放り投げて融接し、もう片端を手枷と繋ぐ!
そしてその手枷を自分に嵌める!
そのまま膝をついてつま先で改造魔法を発動し、床から拘束具を出して足を拘束する!
これで俺は動けない! 言い訳は完璧だ!
「よし!」
…………。
…………いや、よし、じゃないよ! 何も良くない! 俺は馬鹿か!
なんかお尻突き出しながら前かがみになって胸を強調してるようなポーズになってるし! こんなの地下室の撮影スタジオでもやったことないのに!
「いや、拘束するのはいいけど、これ恥ずっ……もうちょっと何とか……!」
「影耶! 大丈夫か!?」
「あああああああ!? ちょ、ま、待って!」
制止するのも聞かず、光弥が牢の前にやってくる。
俺を見た光弥は、少し赤くなりながらこちらに声をかける。
「え、えっと、怪我はない?」
「ない! ないからこっちを見るな!」
こういう時だけ照れるのやめろよ! いつもみたいになんでもない顔してろよ!
「コウヤ殿、カゲヤさん、どうし――」
「来るなアングッ!」
「ぐああああ!?」
手首のスナップで太もものホルダーから投げナイフを抜き放ち、アングの手前で軽く爆発させる。くそ、もう一本装着できるようにしておけば光弥にも投げれたのに!
「い、今から出してあげるから」
こっちをチラチラと見ながら、光弥が鉄格子を切断し、牢の中へ入ってくる。
「えっと……」
「て、手枷だけ斬ってくれれば自分でなんとかするから!」
「う、うん」
光弥が剣を軽く振りかぶって手枷を狙う。こちらを見ながら。
「見るなってば!」
「い、いや……よく狙わないと危ないし……」
そう言いつつ、光弥が手枷を斬る。
俺は即座に剣を抜き、鎖と手枷、足の拘束を切断した。
剣を納めて顔を抑える。めっちゃ熱い。もうやだ、いつもの地下室に帰って引きこもりたい。
※
なんだかんだで四階へとやってきた。
顔を見られたくないので先頭を進んでいく。背中から刺さる視線が痛い。もう嫌だ、泣きそう。
……いや、気を取り直そう。もう少しの辛抱だ。
四階は広い通路に適当に作ったゴーレムを大量に配置してある。弱くて小さいゴーレムばかりだが、材質は物理攻撃に強く魔法に弱い素材で作った。最上階に着く前に、少しでも光弥たちの魔力を減らしておこうという考えだ。
俺もいくらかは魔法を撃つが、仮にもチート能力者である俺の魔力量は莫大だ。この程度では大して減りもしない。
「くっ、強くはありませんが、こう多いと厄介ですね! 《星結界――天秤座の分銅》!」
「だけどっ、イーヤがこの先にいるのは間違いない、な! 《双聖一刀・白龍剣》!」
エイシアが重力を操る魔法でゴーレムを一箇所に集め、光弥がそれを強力な一撃で粉砕する。というかもうあの技使いこなしてやがる。チートかよ。
「そういえば、コウヤ殿はどうして気を失ってたんですかね?」
「……わからない。確か、僕だけ二階に落とされて、イーヤと一対一になったんだけど、そこからの記憶が頭の中をかき回されたみたいに曖昧で……」
「そうですか……。これは、慎重にいった方が良さそうですな……」
アングと光弥が話しているのを聞きながら、リモコンの通信スイッチを入れた。ドンゴ二世、ドンゴ三世、アルティメットイーヤ、全てに通信をつなげる。
「(アルティメットイーヤ、もう少しで最上階に着く。準備は万端か?)」
『問題アリマセン』
「(よし。ドンゴ二世はダメージを受けたフリをして地上で倒れてろ)」
『OK』
「(ドンゴ三世は予定通りに。タイミングは十秒後だ)」
『Roger』
スイッチを切り、四階の最後の部屋へと入る。
最後の部屋は大きくスペースを取ってあり、天井も高い。わかりにくいが、壁を薄くしてできる限り広くなるようにしてある。
部屋の奥には最上階へと続く階段が設置されており、他には特に何も置いていない。
ドンゴ三世に指示したタイミングに合わせ、立ち位置をさり気なく整えて事前に考えておいたセリフを叫ぶ。
「……強い魔力を感じる! 近いッ!」
――俺の言葉に光弥達が反応するより早く、三世が壁を突き破って勢いよく部屋へと入ってくる。
「GAaaAAAaa!」
三世は見掛け倒しの幻炎を俺に向かって吐きかける。
俺は三世の動きに全力でシンクロし、炎の中に紛れて三世の陰へと隠れる。
そのまま三世はまだ炎が残る中、先程まで俺が立っていた位置に光線砲を撃ちこんだ。
あたりに煙幕が立ち込める。光弥たちからすれば、俺が炎を浴びた後に光線砲を食らい、煙幕により姿が見えなくなった、という感じになるはずだ。
「(《瞬間着替え》! 《初期化》ッ!)ははははは! あの最強の美少女魔剣士、カゲヤさえ倒せば我に負けはない! (《自己改造》! 《瞬間着替え》!)」
「ッ! イーヤ――」
三世に隠れたままイーヤになって、セリフを一言だけ叫んでからカゲヤに戻る。今思うと録音機を三世に持たせておけばよかった。プランCまでいくとは思っていなかったので、色々と計画が甘い。
「Ooooo……」
「巨大ドンゴ……!」
三世がそれっぽい動きと口から炎を漏らす演出で光弥たちを威圧する。同時にさり気なく尻尾を動かし、俺は匍匐移動でその尻尾に隠れて元の位置へと戻っていく。
だが、胸が大きくて匍匐がしづらい。これは想定外だ。
頼む三世、それっぽい動きと演出でできる限り時間を稼いでくれ。
「まさか、カゲヤさんが一撃でやられるなんて――」
「――この程度で私が倒れると思っていたのか? 心外だな」
なんとか元の位置に戻り、剣圧で土煙を吹き飛ばす。
「影耶!」
「イーヤは最上階に上がっていった。このドンゴは私が抑えておく。光弥達はイーヤを頼む!」
三世に向かって斬りかかりつつ、光弥たちに叫ぶ。
「けど――」
「いいから私を置いて先に行け! あいつはああ言ったが、私とイーヤでは相性が悪い! 私でもこいつを長く抑えておくことはできない、早くしろ!」
ドンゴ三世と本気で戦いながら、最上階へ進むことを促した。流石にここで手を抜くとバレる。
「GuAAaaAa!」
「く、ッ!」
「Feuerrrrr!」
「《黒夜の龍砲》!」
三世の全力の爪をなんとか剣で受け流し、手加減の一切ない超強力な光線砲を魔法で相殺する。くそ、もう少し三世弱く作っとくんだった。結構しんどい。
だが、光弥達はしんどいどころではない。俺たちの攻撃の余波だけで吹き飛ばされかけている。
「はぁっ!」
「AaaAAAaa!?」
そんな戦いの中、基本的に防御に回りつつも次々と三世の(飾りの)角や棘を斬り落としていく俺を見て、光弥達は階段へと走っていく。
「っ、後で必ず戻る!」
いいからはよ行け。俺が作ったゴーレムの中でも最強クラスの三世と戦い続けるのは流石にキツい。
……三人が最上階に行ったことをしっかりと確認して、戦闘を中断する。
「……よし、もういいぞ、三世。そこの壁の奥に魔法陣隠しておいたから、そこから拠点の倉庫に転移で帰還してくれ」
「Year」
爪で壁を壊し、拠点へと帰る三世を見送った。できれば三世も戦いに加わらせたいところだが、三世は手加減に向いていない。力をセーブしながらの戦いでは、あっさりやられてしまう可能性がある。
俺との戦いで少し壊れてしまったし、全壊する危険を冒すぐらいなら、拠点に戻しておいた方がいいだろう。
改造魔法で壊れた壁を修理した俺は、リモコンを取り出す。通信先はアルティメットイーヤだ。
「《瞬間着替え》、《初期化》。……アルティメットイーヤ、最上階カメラの映像を送信してくれ。セリフは俺が言うから、お前は戦闘に専念しろ。音声の中継を始めていいぞ」
『リョウカイ』
さて、ようやくプランCの発動開始だ。
Q.カゲヤちゃんのおっぱいは具体的にどれぐらいなの?
A.魔粘生女帝の核二つぶんぐらい。




