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2話

 リジィナ達が退室した後、軽く部屋を見て回る。

 トイレと風呂場、寝室とリビングがあるちょっとしたホテルの部屋のような造りで、特に見る所もないが……何処に何を仕掛けられているか知れたものではない。

 とりあえずリビングに戻り、窓際の椅子に腰掛ける。


 先程からドアの横にある椅子に腰掛け、微動だにしない侍女に


「すみません、お茶のおかわりを貰えませんか?」

「わかりました。先程と同じものでよろしいでしょうか?」

「どのような飲み物が?」

「先程の香草から入れた香茶、豆をいり焦がした苦茶、麦などから作った穀物茶などがございます。お酒はエール、ワイン、蒸留酒、蜂蜜酒がございます」

「じゃあ苦茶をお願いします」

「少々お待ち下さいませ。後私に対して敬語や遠慮は不要です。この部屋から出る事以外であれば、どのような事でもお申し付け下さい。可能な事ならば、ご要望にお答え出来るかと。お望みであれば、夜伽も致しますので。しかし私に対する個人的な詮索はご遠慮願います」


 そう告げて、ドア横にある何かの仕掛けに向かう。先程のエレベーターに付いていた虹色の石に手を当てて、横にある筒状のものに一言二言話しかける。

 程なくインターホン(?)の石が光り、下にある小さな扉が開く。

 トレイに載せられた苦茶の入っているらしいポットと白い液体の入ったガラス状の小瓶、小壺と空のカップをこちらへ運んで俺の前に置く。


「お好みでミルクと砂糖をお入れ下さい。この国ではミルクと苦茶を半々にして飲みます。砂糖は女子供はたっぷり入れたものを好みます。ではごゆっくりどうぞ」


 再び扉の横に戻って侍女は椅子に腰掛ける。

 多少気にする素振りをして見せつつ、苦茶とやらを飲んでみる。

 うん。コーヒーだな。酸味が強めで好みではないが……

 コーヒーを口に含みつつ、窓の外を眺める。


 この状況……

 自分達の都合で俺を召喚して、言う事を聞かない可能性があるから軟禁中という所か。

 ここにいる侍女も、ただの侍女ではないだろう。俺が召喚された部屋で、壁にかかっていた剣の(そば)に控えて居たのも、王女であるリジィナを、錯乱するかも知れない俺から守るためだったのだろう。剣の腕もそれなり以上にある人材が選ばれたと見るのが妥当だろうな。そしてそういう人が俺を今現在も絶賛監視中と。


 全てにおいて利己的な行動か。

 自分達の意に沿わせるためには自らが下手に出るのも(いと)わないってのも厄介っちゃ厄介だ。

まぁ全ては明日以降だな。それによって多少の自由が手に入るかどうかって所だろうし。


しかし……一体俺はどうしたんだろうか。ろくに動揺もせず、この状況をあるがままに受け入れ、分析し、冷静に判断している。

俺ってこういう人間だったか?確かにそういった部分はあったと思うが……混乱する前に楽しんでないか?今の状況を。


どちらにしろここで出来る事はもうない。風呂入って寝ようか。


次の日。

王に謁見するために、廊下をリジィナに連れられて歩く。

今日は護衛という名目で、騎士らしい男性が3名後ろについて来ている。まぁ誰に対しての護衛なんだか……


夕べは寝室に入った所で侍女が乱入してきたりというイベントが発生したが、そういう気にどうしてもなれないという事で押し切り、ご退場願った。


もったいない気はしたが……こんな怪しい女に手を出す程飢えちゃいない。

いない筈だ。……多分。しかし巨乳だったな。


「勇者様をお連れしました」


扉の前に立つ騎士にそう告げ、扉を開けさせる。


公的な謁見ではないためか、おそらく執務室であろう部屋の奥に王はいた。


「勇者様をお連れしました。お父様」

「うむ。こちらが勇者殿か?初めてお目にかかる。アーフェルト王国の国王ルッスリア・ダグ・ガイラーと申す」


堂々たる体躯に、リジィナと同じ金髪碧眼の50代くらいか?

1国の王としての威圧感は隠し切れない。


「はじめまして。ダイジュ・サイトウと申します。王様と謁見するような事は初めてなので、王に対する礼儀を知りません。申し訳ございませんが、無礼をお許し頂きたいと思います」

「よい。こちらが呼び付けたのだ。気にする事はない。さて……」


リジィナにも感じた事だが……こいつらやけに手慣れてるな。一体何人召喚してきたのやら。


「娘からも聞いているだろうが……今この国は『触れえざる獣』の脅威にさらされている。奴らは人の手では対処出来んのだ。そこで勇者殿の力が必要になって、今回召喚の儀を行ったという訳だ。異世界からの来訪者では、わからない事も多かろう。聞きたい事があるならば何でも問うが良い」

「ではまず『触れえざる獣』とは?」

「奴らはこの世界の生物の頂点と言える存在だ。今現在4種存在すると言われている」


害獣駆除で呼ばれたって事か。便利屋扱いだな俺。


「その4種は『ブレイドトゥース』『ソードフェザー』『ケルベロス 』『クラーケン』。それぞれ別種ではあるが、強大な体躯に人を遥かに超える叡智を持つとされる。」

「人を超える叡智を持つ存在が何故人の暮らす場所に?」

「理由などわかるものか。奴らに聞け」


ご立腹なご様子。

そこにリジィナが


「何らかの理由はあるのではと予想はされておりますが……人が人を超える存在の行動理由を推測する事は所詮無理な事なのでしょう」


そこで思考停止して投げる訳か。


「勇者でしか倒せないと言われましたが、前例はあるのですか?」

「無論。ソードフェザーを倒した『チョウ』、ブレイドトゥースと戦い撃退した『ユーリ』などがいた」

「いた?」

「我が国の伝承にはそう記されている。証拠としてそれぞれの身体の一部が残されている。数百年前の話だがな」

「その勇者が残したもの……日誌などはないのですか?」

「残念ながら遺失している。口伝という形であれば多少残されているが……」


他人が間に入った事で変質していると見た方がいいという事か。しかし『チョウ』に『ユーリ』か。中華系にロシア系の名前って事は、地球からの召喚って考えた方がいいだろう。


「それで……この国に迫っているのはどの『獣』なのですか?」

「ケルベロスだ。七日程前か……突然この国の外れ、『涯無しの森』に現れたのだ。」

「『涯無しの森』とは、この国から始まる大樹林の事です。山裾を沿うように延々と続いているためそう呼ばれています。調べようとしても、森の中には様々な魔獣が生息しているために、国が出来る遥か昔から手付かずのままなのです。今回は、森の境界辺りにケルベロスが出現し、それをたまたま近くに住む猟師が見かけてわかったのです」


と王の言葉に補足を入れるリジィナ。


……一週間程で異世界召喚が可能だったって事か。召喚の条件が甘いのか偶然召喚可能な状況だったのかで判断が変わるな。

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