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クー
初投稿です。読んで頂ければ嬉しいです。
クー。
こげ茶色の雑種の雌犬。
16年前に家に拾われて以来、ずっと一緒だった。
そして今。
力なく身体を横たえ浅く早い呼吸をしている。
「クー」
そう呼びかけると
ほんの少し尻尾を動かすが、再び動きが止まる。
「クー」
涙声で微かに呼びかけると
拾われてきた日の夜
その名の由来になった
淋しげにずっと鼻を鳴らしていた時と同じように
くー
そう鳴いて
その直後
痩せ衰えた身体から
すぅっと何かが抜け出したような感触がして
クーは呼吸を止めた。