第6話 勇者以外もやっぱりチート
俺は割れた浄牙を、インベントリにいれた。もう二つになってしまったレアウェポンは、レアウェポン扱いではなくなったらしい。エミネさんに他の武器に変えるです? と心配そうに言われたが、これはこれで用途があるので別に気にしていない。
さて、龍太は何処に居るだろうか。沙夜を迎えに行く時間が近いから最初の場所近くにいればいいのだが。
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龍太はその付近にいたらしい。しかし。
「おーきたきた」
「悪い、遅くなった」
まさか、最初の門に行くまでに迷うとは思わなかった。地図とかあると便利だな……買うか。
「ところで、龍太。ちょっと相談があるんだが」
龍太に折れた浄牙を見せる。龍太はそれで俺の意図を察したようだった。
「今この武器は、折れた浄牙×2っていう扱いになってるらしい。だからさ……」
「ああ、やってみるか! 《創りし者》起動!」
龍太の手元にメニューと同じように画面が出現した。見た所合成みたいな感じか?
「どんなのがご所望だ?」
「もし、スキルみたいなのがあれば、速さが欲しいな。聖属性は正直ついてさえいてくくれればいい。あ、日本刀の形にはしてもらいたい」
そう言ってから、龍太は目を閉じて、集中する。しばらくすると、手には前と同じような日本刀が出ていた。前と違う点は、鞘がある、ということだ。
「うし、完成だ! 中々の自信作だ。雄二、この武器はな……」
「助けてくれェーーーーーーーーーーーーー!!」
そんな男の悲鳴が唐突に響き渡る。
「龍太! 話は後だ!」
「多分あっちだ! 行くぞ!」
俺たちは迷わず方針を決定する。この世界では復活すると言っても、普通に痛みがあるのだ。プレイヤーだろうと、NPCだろうと、スルーはできない。
「前よりだいぶ早く行けるな。レベルアップしたからか」
ハッと龍太を置いて行ってしまったかと思ったが、普通についてきていた。ステータスはやはり重要ということか。
「急ごう!」
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俺が声がしたと思われる道に入った瞬間、一人の男が、壁に叩きつけられ、光の塵となった。
俺はハッとして状況を確認する。三人のガタイのいい男達が全員震えている。そして相対するするのは、一人の白髪の女の子。ん? 白髪の女の子?
「力加減がまだ、分かりませんね。まさかいきなり死んでしまうとは思いませんでした。でも、貴方達の動きは手馴れていましたね? 大方何処かの女性を襲ったってとこでしょうか?」
「ヒ……ヒィ!」
「図星ですか。つまりあなた達を殺しても私はpkにならないということです」
ひとつ言っておくが、三人なのは男で、武器も持っているが、彼女は素手だ。
「私にはあなた達を殺すメリットがあります。これ以上は続けないことをお勧めしますが?」
「ちょ、調子のんな! このクソ女!」
ああ、ご愁傷様だわ。
「おい、雄二これ助けなくていいのか?」
「うーん、微妙だな。あの男達を助けたほうがいいか? でもあいつら自業自得だしな」
「そっち!?」
え、そっち以外に何がある。
三人の男は突っ込んで行った。まずナイフを持った男が最初に突っ込み、首にその獲物を突き刺そうとする。白い髪を揺らしながら、手首に手刀を打ち込み、ナイフを男が離したとことろで奪い取り逆に首筋へ突き刺す。その返り血を受ける前に、素早く沙夜は移動し、二番目の男の首にそのナイフを投げる。正確に当たったナイフは、その男も絶命させ光の塵とする。そこら中にはナイフの落ちた音が響いた。
「て、てめえ……よくもおおおお!」
最後に大剣を振り下ろそうとする男。
「力というのは、一瞬で人のものに変わるものですよ?」
男は吹き飛ばされる。大剣を振る勢いを利用して、手刀を放ったのだ。かわいそうに、あれは喉が潰れただろう。早めに撤退しときゃよかったものを。
「おしまいです。光弾」
そう唱えると、光りの弾が最後の男も光の塵とした。沙夜はため息をつく。
「ふう。始めたばかりで面倒な人に絡まれたものです……あ、雄二さん」
「よう。なんかやらかしてるみたいだな」
「その言い方はやめてください。っていうかいまの見てたんですか!? 少し、恥ずかしいです……」
沙夜がちょっと慌てた。アバターはやっぱり彼女もほとんどいじってないのか。ほとんど現実のまんまだな。
「まあいいです。雄二さんも多分そのうち同じようなことやりますよ」
「ああ、もうやった」
「早すぎです」
いや、ねえ。というかこの街なんか治安悪くねえか。なんか起こるのかねえ。
「コェェェェェェェェェ……」
龍太が小声で言ってる。うん、女は甘く見ると怖い、ってどっかの誰かが言ってた気がする。
「俺もあんな感じだったか?」
「ああ」
「……以後気をつける」
よし、とりあえず沙夜にパーティの申請送っておく。
「えっと……そっちは霧矢さん……でいいのですね?」
「はい、問題ありません。そちらはなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「なんで無茶苦茶な敬語使ってるんですか……?」
まあ、怖かったからしょうがない。
「ところで、沙夜。ステータスは?」
「はい。こんな感じですね」
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名前 サヤ・ストレニア
職業 勇者 Lv4
HP 10
MP 87
STR 10
DEF 10
INT 48
AGI 21
DEX 20
LUK 10
スキル 《詠唱蓄積》 詠唱した呪文をストックしておく事ができ、好きな時に放出ただし、ストックする際は、本来消費するMPの5倍を消費する。
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「まあ、順調に前の能力がついたってとこか?」
「そんなところですね」
沙夜の《詠唱蓄積》からの解放は非常に強力、かつ圧巻できるあり、また見るのが楽しみだ。
「えっと……お二人さん。これからどうする?」
「「レベル上げだな(ですね)」」
俺と沙夜の声がかぶる。
「やっぱりステータス上げたいな。その方が動きやすいし」
「まだ魔法も光弾しか使えないので、新しく習得したいという気分もありますが」
「じゃ、もう一度迷宮行きますか」
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という訳で三人でやってきました迷宮。
「今回は最下層まで行こうぜ。ボスもいるらしいし」
「ボス? 討伐されてないの……ああ、定期的に湧くのか」
「そゆこと」
俺たちは、迷宮に入って早々スケルトンに遭遇した。ただ、めっちゃ楽です。俺の武器がすこぶるいいしな。
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名前 浄牙|(鞘付き)
スキル 〈聖属性付与Lv1〉〈抜刀術|(光迅)
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〈聖属性付与〉は魔力を流した時だけ、聖属性が武器につくというスキルだ。常時つけるというわけにはいかないものの、威力は上がる。二つ目は……お楽しみにしておこう。
俺たちは今余裕で迷宮を進めている。
スケルトンやらゾンビやらが出る。沙夜と龍太が魔法を一発づつ。その隙に俺が首を落とす。これで終わる。いやー楽だね。レベルもどんどん上がるわ。
そうして、余裕で進んでいくと、怪しい扉にぶち当たった。かなりヤバそうな気配が扉から漏れている。
「これボスくさくね?」
「ですねえ」
「討伐はどうしますか?」
「「していこう!」」
いや、だって楽しそうじゃないですか。俺たちは扉をを押し開けた。そこには、骨でできた巨人……いわゆるゴーレムのようなものがいた。俺たちは入ろうとする、が。
「あ、ちょっと待ってください。これ私入る意味ないかもしれません」
ん? どういう事だ?
「これ、中は魔法が使えないみたいです。今は武器も持ってないので、あれにダメージを入れるのは難しいかと。私の『目』によれば、ですが」
「ん、『目』?」
勇者には召喚された際、いくつか特殊な体質がついた。彼女のものの一つは目だ。どんな言語でも瞬時に解読できる。例えば魔法を言語と見れば、効果などを解析できる。それは、ゲームにも忠実に反映されているようだ。俺の体質も反映されているようだ。
「便利なもんだな。あと、このボスは部屋の構造から見て遠距離専用かな?」
ボスの部屋は一直線になっていた。広さとしては縦横3mってとこか。
「じゃあ部屋の外にいればなんもしてこないみたいだし、俺が一旦入って、様子見を……」
「あ、それもやめた方がいいですよ。そこに入ると移動速度低下のデバフが何重にもかかってほとんど動けなくなるみたいです」
「それは辛いな」
どうしたものだろう。最初に俺が様子見すれば離脱もできるし、最善かと思ったがそうでもないらしい。
「ふっふっふ。君たち俺のことを忘れてないかい?」
龍太がなぜか得意げに言ってきた。任せてみるか。龍太はなんの強さを持っているのかが、見て見たいしな。
「なあ。辻崎さん? あいつは部屋の外にいれば何もしてこない。扉を開けててもそうだよな?」
「はい。そうなりますね。ただ魔法は結界で無効化されますよ?」
「りょーかいりょーかい。二人は下がってろ」
そうして前に出た龍太は、あるものをインベントリから取り出し、扉を開けて、部屋の外から構える。
「行くぜッ! RPG-7!」
そうして発射されたロケット弾はゴーレムに着弾し、爆音をあげる。
「まだまだあるぜ!」
インベントリからから替えのの弾頭を取り出した龍太は、もう一発発射する。
「ラストーッ!」
最後の一発が発射され、煙がなくなると、そこからゴーレムは消えていた。
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[王の墓標]のボス、タレットゴーレムを討伐しました!
レベルが14に上がった!
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いや、現代兵器強いね。ほんと。