第3話 ゲームスタート
(ようこそ、アナザー・ライフ・オンラインへ。これから貴方の自由な冒険が始まります)
装置の電源を入れると、俺には最初にこの声が頭に響いた。声の感覚は中性的、というか機械的だな。ゲームのAIかなんかだろう。今の所、ただ真っ白い空間に立っているだけなのだが、これからチュートリアルとかがあるってことか?
(まずは、貴方がこの世界で動く体を作成します)
最初はキャラクリですか。ていうか今は体がない状態なのか。道理で、視界はあっても体が動かない訳だ。
(最初は貴方の記憶を元に現実世界と同じ体が作成されます。それを元に体を作成してください)
一瞬視界が真っ白になり、何も見えなくなった後、次の時には体が出来ていた。しかし、驚いたな。動かす感じも現実とそっくりだ。沙夜のお父さんって天才だな。
少し……ワクワクしてきた。
体は戦うことを考えるとなるべく変えたくないな。顔も別にそのままでいいか。特に、顔を変えたいと思ったこともないし。
(終わりましたら、次は名前を決めてください)
名前か……特に思いつかないな。ユウジは流石にダメか。
(ファーストネームとファミリーネームが必要です)
ファーストネームか。何か良いのがあるだろうか。さすがに全部そのままはまずいだろう。
そういや、向こうで呼ばれてた名があったな。懐かしい。なんか2つ名みたいなのも色々つけられてたしなあ。その中から選ぼう。
よし。
(ユウジ・アーマフォートでユーザーネームを決定しました。最後に、貴方のステータスを作成します。メニューと唱えてください)
「メニュー」
なるほど。ゲームでよくあるメニューが空中に出てくる訳だ。えっと、インベントリ、ステータス、クエスト……色々あるな。まずはステータスを押せば良いのだろうか。
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名前 ユウジ・アーマフォート
職業
HP
MP
STR
DEF
INT
AGI
DEX
LUK
スキル
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出て来たな。名前以外空欄なのは今作ってるってことか。
(ステータスにポイントを振ってください。ポイントは50。ここでポイントを振った量によってステータスは成長する度合いを変えます)
素質値みたいなもんか。
……よし。
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名前 ユウジ・アーマフォート
職業
HP 10
MP 10
STR 10
DEF 10
INT 10
AGI 60
DEX 10
LUK 10
スキル
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(ステータスの作成を完了しました。スキル、及び職業は貴方の記憶を元に作成します。職業によってステータスも多少変化します。また、作成されたものはゲーム開始時に確認できます)
よし、これで大体終了だよな。
(これで、基本的な設定は終了しました。貴方のまだ、知らない世界へ旅立つ前に、簡単な説明をさせていただきます。まず、この世界はどんな事をしても構いません。貴方に今までしたことのない体験をさせるのが我々のコンセプトです。また、リアルさを追求するためこれ以降は管理AIは基本的に関与しなくなります。メニューの使い方などもあちらで学んでいただくことになります)
結構徹底してるんだな。
(説明は以上です。最後に、同じ場所からこのゲームを始めようとしている方がいるようです。その方と同じ場所に転移するよう設定しますか?)
龍太か。もう始めてるんだな。もちろん答えはイエスで。
(了解しました。では改めて、このゲームをお楽しみください)
また視界が白く染まり……という事にはならず、一瞬で景色が切り替わった。転移ってとこかな。
それにしても。
「すごいな……これは……」
俺はその世界に圧倒されていた。本当に仮想現実なのか……実際何も知らなければ勘違いしてしまいそうだ。
「それに、この匂いとか街の雰囲気とか……ちょっと懐かしいかな」
そう、ここへ来たとき周りに広がった草原の草の匂いがした。そして前には中心に城が置かれた活気のありそうな大きな街が見える。
「マジですげえよな、これ」
そう、声がした方を見ると、龍太がいた。現実世界と全く変わらない姿だからすぐわかった。
「お前はもう、こんなの見てたんだよな」
「はは。でも、前来たときはそんなに楽しむ余裕もなかったけど、な」
龍太がニヤリと笑った。
「じゃあ、今度は楽しもうぜ! そのためのゲームだろ」
「ああ、 もちろんそうするさ」
「お前の大好きな辻崎さんもくることだしな?」
お、お前……
「冗談だって。そういや、雄二はもうステータス見たのか?」
「ああ、そう言えばまだだった。メニュー」
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名前 ユウジ・アーマフォート
職業 勇者 Lv1
HP 12
MP 29
STR 11
DEF 10
INT 10
AGI 98
DEX 23
LUK 10
スキル 《勇者の記憶》 ゲーム内での一時間ごとに1|スキルポイント(SP)がたまる。それを消費することで、過去に使えたスキルを使用することができる。1つのスキルは1日に一回、3分までしか使えない。
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まあ、職業は置いておくこととして……面白いスキルがもらえたものだ。使用に制限はあるみたいだが。まあ、逆に完璧に使用できたら確実にバランスが崩壊するから仕方ないな。
「お前…… 中々イロモノなステータスだな。AGI極振りとは……」
「特化型の方が面白いだろ? そういうお前はどうなんだ?」
「ほれ。こんな感じ」
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名前 リュウタ・キリヤ
職業 アイテムマスター Lv1
HP 10
MP 10
STR 10
DEF 10
INT 10
AGI 10
DEX 179
LUK 260
スキル 《創りし者》アイテムをいくつか素材として新たなアイテムを生成できる。その際、調整を行うことができる。
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「……お前の方がステータス極端な気がするんだが」
「まあまあ、気にすんなって! スキルも面白そうだからいいんだよ!」
「でも、お前ステータスの合計値高すぎないか? 俺50ポイントしか割り振れなかったんだが」
そうだ、LUKとDEXに全部振った上で、職業補正があるとしても、50じゃ全く足りないはずだ。
「俺も50だったぞ? DEXは職業補正だ。まあそれ以外全く伸びてねえけど」
なるほどな。ただ極端すぎて、戦闘できるのだろうか。
「まあ、心配しないでれ。この先化ける可能性は十分にある。考えがあるんだ」
ほう、なら期待させて貰っておこう。
「お前こそ大丈夫だろうな? 勇者殿?」
「まあ余裕だろ。ところで今って何分ぐらいたった?」
「ゲーム内で30分ぐらいだな」
そんなに経ってたのか。それじゃあ沙夜ももうすぐ来ちゃうんじゃないか?
「まあ、落ち着けよ。ゲーム内では外の3倍早く時間が流れる。外の30分はここの90分。まあのんびり行こうぜ」
俺たちは、そうして街への道を歩き始めた。
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「あー情報収集の結果を発表する」
まず、この街はアトラー王国という国の王都だそうだ。そして、どうやって情報収集したかというと、シンプルに聞いて回った。そこにいた人達には、特に違和感もない普通の人たちだった。実際、ほとんど俺たちと変わらない。すごいの一言でまとめて、話を戻そう。
本当に情報が多すぎて、纏めるには困ったので、今、必要な情報だけ挙げていこう。
まず1つ目、この世界にはクエスト、というシステムが存在する。メニューの、クエストという機能によって周囲のNPCから、依頼されることがあるそうだ。
2つ目、メニューの機能にはパーティというシステムもある。これは組んでいる間は様々な恩恵があったりするそうだ。
3つ目、この世界では死んでも甦れる。が、様々なデスペナルティがある。
4つ目、この世界には魔物がいる。魔物は普通に居たりはするが、迷宮の中が一番多い。
「まあ、こんな所だよな。とりあえずパーティの申請送るぞ」
「承認っと。で、これからなんだが……まだ30分ぐらいあるし、行ってみねえか?」
「どこにだ?」
「迷宮だ。この王都に1つあるんだよ。戦闘の練習にもなるし、金稼ぎにもなる」
「行こう」
「即答!? ま、行こうぜ。王都の地下にある[王の墓標〕にな!」
[王の墓標]か。よくありそうな名前だな。しかし……ようやく戦闘か。
久しぶりに、手が疼く。あ、剣がないな。買わねえと……