第11話 ほんの少しの幕間に
ん……今、朝か。まさか宴ムードに巻き込まれた結果、疲れて寝てしまったらしい。周りにも俺のようにテーブルに突っ伏して寝ている人たちがたくさんいた。
誰だ? 少しだけ話し声が聞こえる。
「悪いな、エミネさん。毛布貸してもらっちゃって」
「別に構わないのです。それにしても……リュウタさん結構いいとこあるのです?」
俺はこの時、起き上がっておかなくてよかった、と心から思った。龍太とエミネが話しているところを見れたから? 違う。エミネは明らかにからかう側だ。ニヤニヤとした笑いを浮かべている。
重要なのは龍太がミナに毛布を掛けていた。この事実は重要だ。直ちに拡散……なんて事はしないが。とりあえずもう少し様子を伺おう。
「別にそんなんじゃねえ。ただ、俺はこいつがよく分からねえと思った。ただ、そんだけ」
まずいな。我慢しろ。俺。絶対に笑ったりはしてはいけない。普段の龍太とギャップがあるからって、そういうのはいけない。
「じゃ、俺ちょっとトイレ行くわ」
よし、このまま寝たふりもしんどかったからな。助かった。
「エミネさん。ちょっと伝言してもらっていいかな?」
体を起こし、エミネに話しかける。
「あ、ユウジさん。おはようございます、なのです。伝言ってなんなのです?」
「俺は先に戻ってる、と伝えて欲しいんだ。あ、あとできればあれ見てたのは内緒で」
「あ! 見てたです? 了解したのです」
エミネさんは笑って了解してくれた。バレて龍太のミナへの態度が変わるのも面白くないから良かった。
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「うう……なんか朝に起きたばかりの時みたいな気分だな」
ゲームの中で寝ただけなのだが。少し、朝のように体がだるい
。軽く外を走ったりしてもいいかもな。今日は天気がいい。あ、その前に昼飯か……作るのは面倒だからファミレスにでも行くとしよう。
「どこか、行くんですか?」
そういや沙夜もいるんだった。俺は昼飯の事を話す。
「あ、じゃあ私もいくので、少し待ってください」
まあ、沙夜は家にいる時ほとんど寝間着だもんな。着替える時間もいるだろう。しばらく待った後、沙夜はブラウスと……キュロットスカートかな。全体的に白い感じの服装に着替えていた。沙夜は白色の服がとても似合う。アクセサリーなんかはつけてはいないが、それをつけるよりも、柔らかな印象の今の服装がいいだろう。
俺がある程度、ファッションなどが分かるようになったのは、何度も沙夜の買い物に付き合ったからだ。あれは……まあ、そこそこきつかったな。
「じゃあ、行こう」
俺は扉をあけて外に出た。夏も明けて、涼しくなってきている外を、心地の良い太陽が照らしている。俺は軽く体を伸ばす。
「心地が良い日ですね」
横を見ると彼女も伸びをしている。
「ああ。ファミレスまではすぐだから、歩こう」
俺たちは歩き出す。
その途中に、さっきの龍太のことを話した。
「じゃあその人と霧矢さんは結構お似合いだったりするんでしょうか?」
「そうかもな。仲がいいようで、悪いみたいなそんな感じじゃないか?」
ただ龍太はともかく、相手のミナの方はどうだか分からないしな。相手に嫌われていたら悲惨だ。今度適当に探ってみるのもいいかもしれない。
「それより……大丈夫ですか?」
「……何が?」
何食わぬ顔をして答える。
「さっきからたまにフラついてます。それに、顔色も悪いです。それに、その感じはまるで」
やっぱり沙夜にはバレてしまうか。寝たようなだるさなんて優しいものではないとわかってはいた。それに、これは風邪を引いただとかそういうものでもない。
「大丈夫だ。症状も似てるだけ。それに、この世界で起きるわけないだろ?」
「……そうですか。倒れたりはおねがいですから、やめてください。体を大事にしてくださいよ?」
「ああ、気をつけるよ」
俺は少し笑って答える。頭の片隅に浮かんだ仮説を無理矢理消しながら。




