コミカライズ配信記念後日談:偉大なるエルル村村長は、ガイア王国で暴れたい!4
【宣伝】
魔王軍四天王の最弱令嬢は自由に生きたい!のコミックがとても面白いので、みんな読もう!
現在現在Renta!にて一話配信中です!
そして、別作品ですが、『転生少女の履歴書』のコミック(単行本)が9月9日発売予定です!
元気でつよつよ女主人公が好きな方は絶対楽しめまするよ!
とうとうガイア王国の王都にやってきた。
ローランと、透明化して姿を隠した私とユリウスは、グイード殿下暗殺計画の流れを首謀者であり、あのエロ使者の主人である元エルル村周辺の領主をしていた伯爵に会うことになった。
これがまた、エロ使者と似た感じで、偉そうで傲慢そうな性悪貴族って感じである。
あの使者にして、この伯爵ありってところね。
そしてその性悪伯爵から、今回の計画の流れを聞いた。
どうやらこれから始まる夜会にローランの魔法でグイードとアエラを襲って欲しいらしい。
晩餐会中の不意打ちで、うまくグイードとアエラを殺せればラッキー。
失敗しても、グイードの統治に不満を持った善良な村人が犯人だとわかれば、グイードに統治者としての資格なしみたいな流れになって失脚を狙えるとかなんとか。
なにそのちんけな計画は……!
という感じだったけど、性悪伯爵は自信満々な笑顔でそう言ってたのでそういう計画らしい。
そんな計画のあらましを聞いた私とユリウスは幻術系の魔法で変装すると、例の夜会の端の方で壁に寄りかかりつつ様子を眺めていた。
ローランは例の性悪領主の近くにいる。
「久しぶりにアエラに会えるわね!」
まだアエラ達は夜会に来てないけど、もうすぐ会えるはず!
「そうだな……。それにしても、グイードとアエラの置かれている状況は、思ったよりも良くないらしいな」
と、髪を幻術で黒髪に染め、目立たない外見に変貌しているユリウスが深刻そうにそう言った。
「よくないってどういうこと?」
「この夜会に参加している貴族のほとんどが、グイードに反感を持っている派閥の者達だ。そもそもこの夜会は、グイードに対立する貴族達が、グイードと友好な関係を築きたいと言って開いたパーティーのようだが、友好を築く気はさらさらないらしい。グイードを油断させ、誘い出すための口実ということだ」
「え、なんでわかるの!?」
「魔法で、話し声を拾った。先ほど元領主から聞いた計画は、ここにいる貴族のほとんどが知っている。しかもグイードを襲うために声をかけた刺客は、ローランだけではないようだ」
「まじで!?」
「グイード派の貴族は、妨害に会っているようで城の外で立ち往生しているな。門前で戸惑う人の気配が複数ある」
そんなことを言うユリウスを見ると、ユリウスの左目に魔法陣の光が見えた。
どうやら探知魔法を使っているらしい。
「じゃあ、この夜会。グイードやアエラを嵌めるために開催されたってこと?」
「そういうことになるな。ここにいる貴族からは、これから起こることに対する期待の色が見える。そして恐れも。それは、グイードとアエラに対する恐れだ。グイードとアエラの魔法の力は、ガイア王国では異端だ。アナアリアとの戦争が終わり、自分達の手に負えない恐ろしいだけの力だと思うようになったのだろう。だから排除しようとしている。愚かな人間の考えそうなことだ」
そう言ったユリウスの目には、違う魔法陣が浮かんでいた。あれは精神感応魔法系の陣だ。
この会場にいる貴族達の心の機微を読み取っているのだろう。
つまり利用できる時だけは調子よく利用して、用済みになったらポイッて捨てようとしてるってことね。
私はムッと唇を尖らせた。
アナアリアを建国した魔王も魔王でひどかったけれど、ガイア王国の貴族もこれはこれでひどい!
「ローランにもこのことを伝えた方がいいわよね?」
「今、魔法で伝言を飛ばした」
ユリウスがそう言うと、ちょっと遠くで性悪伯爵についていってるローランがこちらを向いて心得たとばかりに頷いた。
もう、伝えたってこと? はやっ! て言うかユリウスって便利すぎない?
一目見ただけでこの会場の全容を把握してるし……ユリウスさんが優秀すぎてむしろ引く。
なんか、私の見せ場があるのか不安になってきた。正直、ユリウスがいればこの騒動全て片付くのでは……?
「ねえ、ユリウス、一番の見せ場は私に譲ってくれるのよね……?」
心配性な私は恐る恐るそう確認すると、ユリウスは頷いた。
「勿論だ。そう約束した」
絶対だからね? 信用してるからね? 私の自己紹介タイムも用意してるよね?
私がそう思ってユリウスを見ていると、少し会場が騒がしくなった。
大物の登場っぽい雰囲気に扉を見ると……。
「あ、アエラ達よ!」
そう声を上げた。
扉から入ってきたのは、深緑の燕尾服をきっちり着込んだグイードと、フリルがたくさんついた薄紅色のドレスを着たアエラだ。
その側には、ゴレアムも二人を守るゴーレムのように立っている。
久しぶりのアエラ達に目をかがやかせていると、「エルル、まだ話しかけに行くのはだめだ」と笑いをこらえるようなユリウスの声が聞こえて着た。
「わ、わかってるわよ!」
一瞬、アエラ達のところに言って『私よ! エルルよ!』と名乗り出るところだったけど、それをしては計画が丸つぶれだ。
私もわかってる。
「もう少し二人の目の届かないところにいこう。グイードはともかくアエラは鋭い」
ユリウスがそう言って、私たちはバルコニーの方に出てパーティーの成り行きを見守ることにした。
遠くから見守るパーティーは、華やかだけどどこか薄ら寒い。
グイード達の周りには貴族達がいて、笑顔を貼り付けて談笑してるように見えるけど、彼らはみんなグイードを嵌めようとしているのだ。
「いつ動くのかしら」
「そう長くはかからないはずだ。このパーティーに感づかれてグイード派の貴族が乗り込む前に決着をつけたいはずだからな」
ユリウスがそう言ったちょうどその時、動きがあった。
「この魔女め!」
という一言とともに刺客の一人が飛び出してきた。
狙われたアエラをかばうように前に出たグイードが、刺客の手首を掴んで、その凶刃を止めた。
グラスが割れる音や人々のどよめきの声が響く中で、続けて新たな刺客がナイフを持ってグイードに襲いかかってきた。しかも複数人。
けどそれも、そばにいた護衛のゴレアムがあっさりと止めて、全員を投げ飛ばした。
グイードが、剣呑な雰囲気を漂わせて周りを睥睨した。
「私の派閥に入るための友好の会だときいていたが、やはり裏があったか。こんなもので私を殺せるとは思うな」
捉えた刺客を投げ飛ばしたグイードがそう言った。強い。グイードったら、また強くなったんじゃない?
そうこうしてると悪徳伯爵がローランをせっつき始めるのが見えた。
声は聞こえないけど、「ほら、いけ! お前の番だ!」みたいなことをいってるに違いない。
よし! もうそろそろ頃合いね!
「ユリウス、今よ!」
私がそう言うと、ユリウスが頷いた。そして……。
―――ドガアアン!!!
空気が震えるほどの破壊音が響く。
大きなものが砕ける音、そして豪風が舞う。
砂煙が入らないように目をつむっていた私は、ちょっと落ち着いた頃合いで目を開けて上を見ると、綺麗な星空が見えた。
よーし、うまく建物の天井を吹っ飛ばした!
突然天井が破壊されてなくなり、驚き戸惑う貴族達。瓦礫の破片は魔法で外に飛ばしたので、今の所、大きな怪我をした人はなし。
だけど、これだけじゃ終わらないわよ!
最初こそ突然の、天井が吹っ飛んだ事件で戸惑っていた貴族達だけど、我に返って慌てて外に逃げようと扉の方へと向かう。だけどこの会場には封じの魔法をかけている。
「なぜだ! なぜ扉が開かない!」
扉を前にそう喚き立てる貴族。
ふふふ、そうなの、ここからは出られないのよ!
「それならバルコニーから……!」
と言ってこちらに向かってくる貴族達を前に、私は笑みを作った。
とうとう! とうとうよ! 私の出番がやってきたわ!
後日談、まだ少し続きます!
可愛いエルル!人妻になってもエルルは可愛い!!!
元気なエルルをまた楽しみたい方は、是非ともRenta!さんにて配信中のコミカライズ版をよろしくお願いします。acca先生のお力でとても素晴らしい漫画に昇華しております。








