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【コミカライズ配信開始!】魔王軍四天王の最弱令嬢は自由に生きたい!  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ


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好きな人を絶対助けたいって思ってるエルル様


「エ、エルルさん! わた、私! ご、ごめんなさい! 私は……、私は……! 皆さんを、助け、たい……!」


 嗚咽が混ざりながら、アエラがそう叫んだ。


 分かってる、分かってるよ、アエラ。


 アエラは、私の心臓と引き換えに、皆の命を助けたいと思っている。


 でも、その『皆』の中に、私は入らない。


 私はアエラがこれから使う蘇生魔術の「にえ」だ。


 「贄」は、蘇生魔術の対象になり得ない。


 それを代償にして、魔術を発動することになるのだから。


 私は、苦しそうに泣くアエラに微笑んだ。


「いいわよ。私もそうして、欲しいし、私のこの心臓を、捧げるだけで、みんなが……」

 と答えながら、左胸に向かって右手を持って行こうとしたら、誰かに手首を掴まれた、ような気がした。


 けれど、誰も私の手首を掴む者はいない。


 気のせい。気のせいだと思う。


 でも、気のせいだと思うのに、何故か、心臓に自分の手を持って行く気になれなくなった。


 自分の命を惜しんでいるんだろうか。

 自分の心臓を捧げるのを恐れているのだろうか。


 いや、違う。


 それは、違う。


 私の心臓が脈打つのが分かった。


 ……ユリウスは、私に、最後、何かを伝えようとしていた。


『力の本質を見誤るな』

 そう、ユリウスは、最後に私に言った。


 ユリウスの言葉を頼りに、私はローランのいた村での事を、思い出す。

 ユリウスが私の、特異な力に気づいた瞬間だ。


 私は、魔神官もらった治癒薬を村全体にかけるために、霧と治癒薬の体積を増やす増幅の魔法陣を使った。


 その時、治癒薬に込められた魔神官の治癒の魔力まで増やした私を見て、ユリウスは、魔力の永久機関になれると言ったのだ。


 私が、魔力を魔力で増やせるから。


 もし、私の無限の魔力というのが、私の魔力の性質によるものだとしたら……ユリウスの考えとクラークや魔王が考えていることと、根本的に異なっている。


 魔力は血と共に作られる。その血は心臓が作る。


 だから、心臓が魔力を作る根幹だ。

 だから、魔王は、私の心臓が無限に魔力を生み出せる心臓なのだと思っている。


 その心臓を贄に捧げれば、アエラが無限の魔力を手に入れて、人体蘇生すら可能だと、魔王は思っている。

 あの、すごい魔法陣を描いた魔王が、私の力をそう解釈したのだ。


 でも、それが間違いだとしたら?


 私の心臓が魔力を無限に生み出してるんじゃない。

 私の力は、その場にある魔力を増やす力。

 だって、ユリウスが最初そう言ってた。


 私が、この世界で一番すごいって、強いって、信じてるのは、魔王なんかじゃない。


 このエルル村の村長である私が、この世界で一番すごいって、強いって、エルル村の副村長にしてあげてもいいって、そう思っているのは、ユリウスだ!


 そのユリウスが、私の力は、増幅させる力なのだと言っていた!


 だとしたら、そうだとしたら……。


 私は……!!


 私は、ゆっくりと立ち上がった。

 そして、少しばかり訝しげな顔をしたクラークがかすかに目を眇める。


「クラーク、あなたの望み通り、見せてあげるわ。このエルル村の偉大なる村長の力をね!!」


 私はそう高らかに宣言すると、呆然と私を見ながらアエラが「エルル、さん?」と問いかける。


「アエラ、力を使って」


「でも、私の、力だけでは、もう死んでしまっている人の蘇生は、できなくて……!」


「大丈夫よ! このエルル様を信じなさい! 何せ、我こそは! 最年少でアナアリアの四天王の一角を担った可憐な少女にして、その後偉大なるエルル村を作り上げた創始者! 震撼のジャスパー、鉄壁のローランに、伝説の料理人メイデ、可愛い過ぎるカンナを四天王に据えて、エルル村周辺に君臨する絶対なる支配者! それでもって、これから、白髪のオジジとかデカパイのセレニーエルを八神将に加える予定とかまで考えている策略家! そして、そして……」


 私はそこまで言い切って、そして、ユリウスの顔が浮かんだ。


「ユリウスを……好きな人を、それにここにいるみんなを、絶対、絶対絶対、ぜーったい! 助けたいって思ってるエルル様なんだからね!」


 私が、そう言い切ってアエラの方を見ると、泣くのやめたアエラが目を見開いて私の方を見ていた。


 なんか、驚いている、みたい。でもしばらくして、アエラは口を開いた


「そうですよね。エルルさんだって、助けたいに決まってます。私、エルルさんを信じます! だって、私達、一緒です。恋する人を絶対助けたいだけの、ただの女の子なのですから!」


 そう言ったアエラが微笑むと、大きく頷く。


 そして目を瞑った。両手を組んで祈りのポーズをとる。


 すると、アエラの全身から、少し緑がかった魔力のオーラが見えてきた。


 これだ。この魔力だ。


 私はそれを認めて、足元の砂場に指で、魔法陣を描いた。

 そよ風の魔法だ。


 アエラのこの魔法が遠くに遠くに、この魔力暴走に巻き込まれた人全員に優しく届くように。


 そして、私は、自分の抱える魔力を解放した。


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魔王軍四天王の最弱令嬢は自由に生きたい!のコミカライズがCOMICスピア(Renta!)さん にて8月23日配信開始

acca先生のエルルが可愛すぎる上に、ユリウスもカッコ良いので是非見てください!

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