四天王第三位、剛腕のレグリス
翌朝、私達エルル村の戦力一同は、エルル村を旅立った。
村のことは我がエルル村の四天王の一人震撼のジャスパーと、同じく四天王のローランに任せたので安心だ。
ローランは、ユリウスから、防御とか隠蔽系の結界魔法のやり方を教わって、鉄壁のローラン、いや、エルル村絶対守るマンのローランに進化を遂げていた。
そして、ジャスパーには、こっそり私に万が一のことがあったら、偉大なるエルル村の村長としてみんなを引っ張ってくれるようにお願いした。
ジャスパーは信用できる。だって、震撼のジャスパーだもの。
そして、残りの魔王討伐パーティー全員で、転移魔法を使って、アナアリアへと到達。
現在は、ちょうど魔王城の入り口の真上に空飛ぶ絨毯を浮かせている。
ここまでの転移魔法、そして空飛ぶ絨毯での華麗なる到着も含めてユリウスさんのお力によって、スムーズ!
そして、そんなユリウスさんは昨日あんなことがあったというのに、いつも通りの涼しい顔。
なんだか憎らしい。
大体、昨日のだって、なんて言うか、ちょっと死亡フラグっぽくない?
縁起が良くないよね!?
いや、あの場は私も、ちょっと気が動転して言えなかったけれど、別に魔法陣を破壊してからとかじゃなくてよくない!? 今言っちゃえばよかったんじゃないの!? ダメなの!?
あ、いやいや、荒ぶっている場合じゃないぞ。
これから決戦なんだ。魔王討伐の日なのだ。
そして、私が気持ちを切り替えようとしている間に、当のユリウスさんは魔王城の上空に着くやいなや、早速魔王城に施された防護魔法を破壊までしてくれた。
ほら、私が魔王城に侵入した時に一生懸命頑張ってやっと破壊した結界ね。
あれをユリウスさんはパチンと指を鳴らしただけで解除しました。
なんか、もうさ、ユリウス以外のメンバー不要じゃない? とかいう気がしなくもないけれど、魔法陣の破壊は、さすがにユリウス一人では荷が重い。
魔法陣は破壊する前に、一旦魔法陣に溜めた魔力をちょっとずつ流さないと、暴発して事故るからね。魔法陣の魔力を解放する係と、その魔力を解放する係が無防備になる間に守る係がどうしても必要だ。
それにユリウス的にも、魔王復活のキーとなる私やアエラが目の届かないところにいるのは、それはそれで心配らしい。
意外と心配性である。
そんなわけで、あっという間に、魔王城の真上に到着した私たちは、下の様子を窺う。
「なんか、うようよ人がいる」
私は、思わず眼下の景色にそうこぼした。
元々魔王城の周りには、レグリスが統率する衛兵達が警護してるわけだけど、今日はなんだかその数が異様に多い。
これ、アナアリアの衛兵全員集合してるんじゃ? という数の人達が、魔王城を取り囲んでいる。
「ふむ。魔王城の周りにわしが育てた精鋭達が集まっておるようじゃ。わしらの魔王城への侵入を防ぐためじゃろうのう。あちらさんもバカでは無い。わしらがここにくると分かっておったようじゃな」
規則的な動きで魔王城の周りを歩いている衛兵達に、心なしか、レグリスが自慢げに答えた。
「あの子達をどうにかしないと、どうにもならなそうだけど……どうする? まあ、私達の力なら、蹴散らすことは簡単にできると思うけれど……」
とセレニエールが小さく問いかける。
こっちにはユリウスもいるし、大規模魔法が得意なこの私、エルル様がいるから、確かに、蹴散らすことは簡単だ。
でも、彼らはなんの罪もないアナアリア人で……。
私が迷っていると、レグリスが「安心せい」と声を上げた。
「奴らは、元々わしの部下じゃ。わしの言うことなら聞くじゃろうて」
とレグリスが自信ありげに答えた。
そうか、元々レグリスが管理してた部隊だもんね!
蹴散らすのは簡単だけど、だからって、何も知らない人達を巻き込むのは気が引ける。
私はレグリスに向かって笑顔で頷いた。
「じゃあレグリス、彼らの説得、頼んだわよ!」
私がそうレグリスに言うと、彼はサムズアップして、任せてくれという感じで笑顔で請け負い、空飛ぶ絨毯からそのまま下に飛び降りていった。
結構な高さな訳だけど、レグリスは、気にせずそのまま落ちていって、ズドンと地響きを鳴らして着地した。
その大きな音に、魔王城を守っている人達が集まってくる。
レグリスが大ぶりな動きで、集まってきた衛兵になにやら事情説明のようなものをすると、周りの衛兵さん達が、久しぶりのレグリスを歓迎するかのごとく周りにガヤガヤと集まって、レグリスの腕やら足やらを拘束し始めた。
……え?
「ねえ、あれって、レグリス、衛兵に捕まってない?」
目の前の光景に対する素直な感想を私が述べると、隣にいたアエラが、「そ、そのように見えますね」と心配そうに答えてくれた。
しばらく見守っていると、レグリスがこちらを見上げて、思念を飛ばしてきた。
『すまん、ダメじゃった☆』
そして、テヘペロみたいな仕草をするレグリス。
あのジジイ……。
「これをこのまま下に打ち込んだ方が早いんじゃないか?」
とユリウスが言うものだから、彼の方を見ると右手になにやら発光している球体を出現させていた。
ねえ、ユリウス、そうやってすぐに荒ぶろうとするのやめよう!
気持ちは分かるけど! 気持ちは分かるけど!
「まーったく、しょうがない人ねぇ。しょうがないから、ここは私は食い止めといてあげるわよ。ねえ、ユリウス、少しばかりこの絨毯を下降してもらえる?」
とセレニエールが、呆れたようにそう言って肩をすくめると、ユリウスが頷いた。
「セレニエール、何かいい方法知ってるの? 言っとくけど、ユリウスみたいに魔法ぶっ放して殲滅とかは却下よ」
「私をあんな野蛮人と一緒にしないでくれる? 私を一体誰だと思っているの? 私は、元アナアリアの四天王第二位、魅惑のセレニエールよ」
とセレニエールが言うや否や、彼女から甘い香りのようなものが発せられた。








