真実を知る話し合い4
そう、ユリウスの言う通り。魔神官の力とアエラの力は似ている。
それは魔神官もアエラも魔王の血筋が入ってるために、力が似通っているからだ。
「魔神官の体内に保存されている魔王の血を使って、復活するってことね……」
セレニエールの言葉に再び会議が沈黙した。
魔王はいつか自分が復活する時のために、血をホムンクルスに分け与えていた。
魔王と言う奴は、数百年前から、ずっと、この時のために、私達では到底及びもつかないところから入念に準備をしてきたということになる。
その魔法の力は、きっと今この世界にいる誰よりも上だろう。おそらく、ユリウスさえも。
魔王が復活したら、私たちはどうなるだろう?
私は魔王城で見た魔法陣を思い出していた。
魔法陣に支配された魔法使いと、魔力を生み出すためだけに存在するガイア王国の人達の、姿が浮かんで……。
自分が着ているドレスのスカートを握りしめていた。
絶対に、魔王なんて奴は復活させちゃいけない。絶対よ。
私の心臓が狙われているからとか、そう言うことじゃない。
魔王の理想は、魔王の願いは、この地に必死で生きてる私達を、バカにしてる。
こんなこと、許しちゃいけない。
ふと、辺りを見渡せば、皆の顔が強張っていた。
思いがけず強大な敵の存在にびっくりしてるのかも。
だから私が、立ち上がった。
「そんなに、気負わなくても平気よ! 多分皆も気づいていると思うけれど、魔王の復活を阻止するのは、私達にとって超簡単なことなんだから」
私が極力明るくそう言うとユリウスが眉を寄せた。
「エルル、何を言うつもりだ」
「何って、皆が思ってることを言ってあげるだけよ。魔法の復活を阻止するためには、私の心臓を燃やせばいい。そうすれば、無限の魔力が生み出せるとかいう心臓がなくなって、魔王の復活はしばらくない」
「そんなことさせるものか!」
思いのほかにユリウスが怒って机をガタンと鳴らして立ち上がった。
「ユ、ユリウス、落ち着いてよ。べ、別に私だって、死にたくないし、それは本当に最終手段よ!」
「最終手段でも駄目に決まっているだろう!」
とユリウスが言うと、アエラも立ち上がった。
「そうです、エルルさん! それに、そういうことなら、私が死んだって、同じことですよね? 魔王の復活には、私の力が必要なのでしょう?」
アエラのその言葉に、グイード王子が首を振った。
「……いや、魔王の血筋としてアエラが必要だというのなら、おそらくだが、アエラの替えは利く。アエラが生まれた村が、はるか昔に魔王によって作られた村だとしたら、あそこの村人は、アエラと同じ力を秘めている可能性がある。アエラが死ねばまた代わりの者に魔法の力を目覚めさせ、使い方を教えられることになるだろう」
王子が難しい顔でそう言うと、アエラが「そ、そんな!」と言って辛そうな顔で私を見た。
「で、でも、ダメです、簡単に命を捨てるようなことは……!」
と、さっき自分で身を犠牲にする発言をしたっていうのに、アエラは私のことを心配してそんなことを言ってくれた。
本当に、優しい子だ。
だからこそ、私の決意は揺るがない。
「私の無限に魔力を生み出せる心臓というのは、多分、突然変異のようなもの。再びないとは言えないけれど、早々そんなものが出てくるような代物じゃない。だから、私の心臓さえ燃えれば、しばらくは、もしかしたら永遠に、魔王の復活をしのげる……。けれど、さっきも言ったように、私だって死ぬつもりじゃないわよ! ただ、最終手段はあるってことを言いたかったの! だから、私が心臓を燃やすようなピンチになる前に、クラークを倒して、アナアリアの魔法陣を粉々にすればいいのよ。それか、魔神官を全部根絶やしにしたりとかさ。それになにより、あの魔法陣がある限り、たとえ魔王が復活してもしなくても、魔王が描いたような地獄みたいな世界が待ってる。そうでしょう? 」
私はそう言って、改めてメンバー一人一人を見た。
泣きそうな顔で心配してくれるアエラ。
そんなアエラを支える、王子とゴレアム。
ローランは、突然の出来事に戸惑うような瞳を私に向けて、セレニエールとレグリスは、覚悟を決めた顔で私を見ている。
そして、私の隣には、ユリウス。
このメンバーなら、やれる。
だって、前世で見た漫画の主要人物オールスターじゃないか!
敵も味方もごっちゃまぜの夢のドリームチームだ。
これだけの傑物が揃って、できないことなんかない。
「私達で、魔王を、アナアリアという国を終わらせるわよ! まあ、大船に乗った気になりなさいよ! なんていったって、ここには! エルル村を最も愛し、エルル村に最も愛された栄光の村長であるこの! 可憐で! かわいいエルル様がいるんだからね!」
私は努めて明るい声を出してそう言うと、笑顔を作った。
もうそろそろラストも近くなりまして、しばらく、毎日更新する予定!
何話かは予約投稿をするので、感想返信は、週末にまとめてになりそうです!
それにしてもこんなに長くなるとは思わなかった……!
どうぞよろしくお願いします!








