四天王VS元四天王③
すみません、お待たせしました!
転生少女の履歴書5巻が無事に発売したので、こちらの更新も再開します!
「ちょっと、レグリス! 何あっけなく終わってるのよ!」
セレニエールも唖然とした様子で、声を掛けると、レグリスは顔を上げた。
「あたたた。まいったまいった。ユリウスが、ちょこまか避けるから、思わず足をくじいてしもうてのぉ。あと久しぶりに動いたから、腰が……」
そう言った、レグリスは最初よりも老け込んで見えた……。
「あーん、もう! 使えないわねぇ!! ……まあいいわ。もうエルルは捕らえたし、私一人で問題ない」
そう言って、セレニエールさんが、ユリウスを睨み据えた。
「調子に乗らないでね、ユリウス。お分かりでしょう? こっちには、人質がいるのよ? この田舎のガイア人が大切なんでしょう? この子達は、もう私の僕。私の意のままに動かすことだってできるのよ?」
そう言って、セレニエールが真っ赤な唇で意地悪く笑う。
「何か、勘違いしているようだな、セレニエール。私がこんなガイア人共のことが大切だと思うのか?」
ユリウスが、冷酷なまなざしでセレニエールにそう言うものだから、私はびっくりした。
「ちょ! ちょっと、ユリウス何言ってんのよ! カンナ達を傷つけたら、許さないからね!」
私の叫び声には反応せず、セレニエールを睨むユリウス。
無視した! ユリウスが私を無視した!
「そう、やっぱりあなたってそういう男よねぇ、ユリウス。貴方の目的はなんなの?」
少し焦りを滲ませて、セレニエールがそう言うと、
「目的? 特にないが、魔王に追われるのは面倒だな。私をここで見逃してくれれば、お前たちの命は助けてもいい」
とユリウスが不敵に笑う。
なんてことだ! ユリウス、一体どうしたと言うのだろう!
完全に悪役みたいなセリフじゃないか!
と思っていると、横からローランが小声で「エルル様、ユリウス師匠には考えがあるみたいです」とささやかれた。
え? 考え? と思っていると、私を捕らえているエルル村の住人の力が弱まった。
魔道解析の瞳を右目に展開させると、ジャスパー達の周りに様々な魔法陣が浮かんでは消えて、浮かんでは消えを繰り返している。
これ、まさか、セレニエールの魔法を解除するための魔法陣?
なんか複数ある陣が出ては消えたりを繰り返してるからよく分からないけれど、セレニエールに一度乗っ取られたジャスパー達を、ユリウスが乗っ取り返して、それを解除してる感じ……?
いや、陣の展開、早過ぎてなにをしているのかよく分からないんだけど!
セレニエールは、ユリウスを警戒するばかりで、こちらの様子に気付いていない。
そして、私たちを囲んでいるジャスパー達の虚ろな目に正気の光が宿り始めた。
「え……? ここは、エルル様?」
「ジャスパー! 正気に戻ったのね!」
他の住人達も一様にジャスパーのように正気を取り戻し始めている。
正気を取り戻したところで、やっと気づいたセレニエールが盛大に眉を顰めた。
「な、なんですって!? まさか私の魅了魔法が解除されたというの!? いつの間に……!」
セレニエールが驚愕をあらわにして叫ぶ。
いつの間にって言うか、こちらの四天王最強さんは先程お二人で話してたちょっとの時間でやってのけたよ。
ユリウスとその他の四天王の力の差があり過ぎるよね。
そんな四天王のぶっちぎりトップは、不敵に笑った。
「精神感応魔法を使えるのは自分だけだと思わぬことだ、セレニエール」
「ぐ……ユリウス!」
自分の得意分野で、まさかの反撃を食らったセレニエールが、顔を真っ赤にしてユリウスを睨みつけている。
「ローラン、エルルと村人を集めて、精神感応魔法が届かないように強固な防御結界を張っておけ。陣の形は先程私が展開したものだ。やれるな?」
そうユリウスが、村人たちを庇うように前に出てきたローランに告げた。
いや、なんか簡単そうにユリウスったら、言ってるけど、先ほど展開した陣って、さっきユリウスが一瞬で描いては消してた魔法陣のこと?
そんな一瞬の結界を、魔術師なり立てのローランがどうにかできるわけないじゃない!
ユリウスったら、自分ができるからって、他の人もできると思うのは良くないよ!
と思っていた私を尻目にローランは、素早く頷いて「分かりました!」と答えて呪文を唱え、宙に陣を展開し始めた。
忘れていた。ローランは天才だった……。
ローランは素早く結界のようなものを周辺に張ると、そこに村人の皆や私も入れてくれた。
ローランは引き続き、結界の強度を保つために呪文を詠唱している。
な、なんか、私だけ、何もしてないような……。
て言うかユリウスがチート過ぎて……。
なんだかあっさりやられてしまった他の四天王の味方をしたくなってきたんだけど、気のせいかな……。








