四天王VS元四天王②
すみません、ちょっと、間を置いてしまいました!
今月末にもう一つの連載作品である「転生少女の履歴書」の書籍版が発売するので、
そちらの更新を優先してます!
でも、四天王の最弱令嬢も、ぼちぼち更新したいみがありますので、9月末まではのんびり更新になりそうですが、よろしくお願いします。
「あら、エルルが私の相手をしてくれるのぉ? ちゃんと、楽しませてくれるのかしら」
妖艶に微笑みながらセレニエールがそう言った。
「セレニエール! 私の愛する村を半壊させた罪は重いわよ! 無防備に私の前にノコノコとやってきたこと、後悔させてあげる!」
「後悔ねぇ。あなたこそ、後悔する前に、大人しく魔王様のところに戻って来たらどお? おバカなエルル。ユリウスに騙されたんでしょう? まさかエルルがユリウスみたいな男が好みだったなんて。まあ、私も、強い人は好きだし、顔も結構好みだけど。でも彼ったらこの私が目の前で胸を寄せて誘ってるのに、無視するような男なのよ? そういう奴はたいていホモ。エルルも諦めなさい」
「ユ、ユリウスは、別に、ホ、ホモじゃないわよ! ……多分! て言うか、大体ね! 騙してるのは、魔王なんだからね!」
私は、そう言って、大の得意の爆炎系の魔法の魔法陣を空に展開していく。
炎獄魔法と言って、膨大な魔力を用いるこの魔法は、この魔法陣下にあるもの全てを炎の中に閉じ込める。ついでにレグリスとメガネも閉じ込めよう。
直接、燃えるわけじゃないけれど、炎に囲われて焼けるような苦しみに喘ぐ結構残酷な拘束魔法だ。
セレニエール達には悪いけれど、相手は四天王だもの。
エルル村半壊の恨みを思い知れ!
だけど、相手にとっては絶望しかないはずの巨大な魔法陣が宙に展開されていくのに、なぜかセレニエールの口元は微笑んでいた。
あの余裕はなんだろう。
「エルルは相変わらず雑な攻撃しかできないのねぇ。でもこーんな大きな魔法を使って大丈夫? あなたの大事なものを巻き込んだりしないかしら?」
「多少の熱風は飛ぶでしょうけど、ユリウスも、ローランも、自分のことは自分で守れるわ!」
「あら、そう? でも、彼らはどうかしら」
そう言うと、セレニエールはとある方向に意味ありげな視線を送った。
セレニエールが視線を寄越した先を見てみると、たくさんの人影が……?
あ!
あれって、ジャスパー達?
エルル村の四天王のジャスパーが、他の村人を率いてこちらに歩いて来ていた。
ローランも、おぼつかない足取りでフラフラとこちらにやって来ている村人たちを見て声を上げる。
「な、なんで、みんなして、どうして!? さっき避難した場所に戻るんだ! ここは危ない!」
ローランが慌てたようにそう声を掛けたけれど、村人達には届かないようでゾンビみたいな動きでこちらに歩いて向かって来る。
あの様子、もしかして、セレニエールの魅了魔法……!?
魅了魔法は、一時的に魅了魔法に掛かった人の意識を乗っ取ることができる。
細かく動かしたりはできないけれど、簡単な命令を聞かせることが可能になる魔法だ。
ローランや私みたいに魔力を扱える人は、他人の魔法に対する抵抗値が高いけれど、魔法とは無縁に過ごしている一般の人は、ひとたまりも無い。
それに今は、ジャスパー達も魅了魔法だけしか掛かっていないかもしれないけれど、完璧に意識を乗っ取る魔法を掛けられたら、死ねという命に関わる命令ですらすんなり受け入れて、命を投げ出してしまう。
私は、獄炎魔法の魔法陣を解いた。
だって、私の魔法だと、絶対にジャスパー達を巻き込む……。
「物分かりがいいわね、エルル。さあ、私の可愛い僕たち、このおバカなエルル達を捕らえなさい」
セレニエールがそう言ううと、ぼーっと白昼夢にいるような虚ろな目をしたジャスパー達がこちらに向かって駆けだして来た。
怖い! ゾンビっぽい動きが、怖い!
どうしよう、氷の壁を立てて、行く手を塞げば……いやダメだ。
ジャスパー達は、意識のないまま動かされてる人形みたいなもの。
障害物があっても避けるという考えがなく、気にせず前に突っ込んでくるから、壁に体当たりして、大怪我をする恐れもある。
私の大事なエルル村の皆に、痛い思いはしてもらいたくない!
ローランが、ジャスパー達と私の間に入って、魔法を唱えようとしたので、私は止めた。
「ローラン、やめて。みんなを怪我させたくない」
「しかしっ!」
「お願い」
私がそう言うと、ローランは「はい」と小さく返事をして、大人しく私と一緒にジャスパー達に捕まった。
ごめん、ローラン。
ローランと、皆は、私が絶対に助けるから。
私が決意を固めて、この窮地に陥れたセレニエールを睨んでいると、「やはり、ローランの掛けた防御魔法だけでは、守り切れなかったか。……お前の精神感応魔法の腕は流石だな」
と、突然ユリウスの落ち着いた声が聞こえた。
え!? ユリウス今、レグリスと戦闘中なんじゃ!?
と思って、ユリウスの方を見ると、ユリウスの足元にレグリスが跪いていた。
ええ!? もう終わったの!? はやっ!
確かにユリウスは四天王最強だけれども! レグリスもうちょっと頑張ってもいいんじゃないの!?








