白い文字盤の時計
時計の長針が都会の昼を指すとき
地下水の匂いに溺れている道路
エレベータで上がれば
硝子の月を墜としたようにきらきらと
ここに一千万人以上の人が住んでいる
どこまでも続いている
時計の短針が震える海の夕暮れを創るとき
行き場の無い水たちがさびしそうにたゆたう
魚やさんごはそんな水とお喋りしている
海が綺麗だともいわず
海にポリ袋の始末を押しつけもせず
いつか海への告白を諦めた南の空が墨を流して
北の空が星を零した
時計の秒針が囁くとき
そこが僕達の時間
秒針で恋は刻まれ
秒針で世界のチャンネルは切りかわる
秒針は人の心も命も攫う
それは窮屈か濃厚か
追いかけていくだけの金の細い秒針
長針も短針も僕らにはもう構っている暇がなくなった
ぱきり折ってタクトにでもしたいなぁ、そんなことを思う今日この頃。