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終結、そして

柊らが倉庫から出ると、外の光の強さに目が眩んだ。数秒かけて目が慣れると、すぐそばに早乙女らが立っていた。


そこにいたのは早乙女と紅蓮と小鳥遊だ。


「天野っ!」


生徒会長の紅蓮が目に涙を浮かべて天野に駆け寄る。


「待って穂花ちゃん、感動の再会はまた後だ。とりあえずここは危険だから離れよう」


「そ、そうだな。そうしよう」


紅蓮は瀬川と変わり、天野に肩を貸した。瀬川も疲れを隠しきれずに足取りがおぼつかない様子だった。それを見た早乙女が彼女の元へ駆け寄った。


「…っと、わっ!」


早乙女の予想通りに瀬川は躓き体勢を崩した。倒れ込む直前で早乙女に支えられて、なんとか転ばずに済んだ。


「大丈夫か?瀬川さん」


頭から早乙女の胸に倒れ込んだ瀬川。体勢的にも恥ずかしくて、なかなか顔を上げれない。そして倒れ込んだ拍子に魔術も発動した。相手は早乙女だ、気付かないはずがない。


彼は瀬川の肩を掴み体勢を立て直させる。肩を掴む所にも僅かに魔術が発動するのも早乙女は見逃さなかった。


「なるほど、そういう事か」


早乙女が確かめるように掴む手の力を強めたり弱めたり繰り返した。それに合わせて瀬川の魔術も発動する。


すると今度は、早乙女は瀬川に対して何かを行なった。具体的に何をしたのかはわからないが、これだけは理解できる。


瀬川の魔術を解除したという事だ。


実は瀬川のこの魔術は自分で解除できない仕組みになっている。魔術を組むと、その魔術を組んだ魔力を消費し切らない限り、自分の意思とは関係無く発動し続ける。


今回魔術を組んだ瀬川の魔力量は、瀬川が持つほぼ全ての魔力を組み込んだ。その為、瀬川は自分の魔力を全て消費しないと魔術を解除できなかった。


だが早乙女は、初めてにも関わらずその仕組みを理解し、瀬川の体内の魔力のうち、魔術が組み込まれた魔力のみを消し去ったのだった。


「えっ⁉︎嘘っ!」


「驚いているのはこっちだ。なんとまぁ凄い魔法を…あ、話してる暇は無いんだったな」


早乙女が周りを見渡すと、柊が携帯電話を操作し電話をかけていた。彼は手短に電話を済ませると、皆に声を掛けた。



「あと10分程で僕の使用人が迎えに来る。だがここが危険な事には変わりない。万が一の事も考え、出来るだけここから離れよう」


柊に言われるがまま一行は倉庫から離れ一直線に歩き続けた。早乙女はふと思った疑問を柊に尋ねた。


「あんまり離れると場所がわからなくなって迎えが来ないんじゃないか?」


「使用人は僕の携帯のGPSから場所を特定してるから大丈夫。どれだけ離れても迎えに来るはずだ」



歩き続けて約10分くらいたった頃だった。何処からか車が物凄いスピードで近づいて来る音が聞こえた。


早乙女らは警戒し周りを見渡した。すると、目の前の曲がり角から黒いミニバンが姿を現し急ブレーキをかけて止まった。そして車内から数人の男達が出てきた。


黒いスーツ姿でグラサンをかけており、いかにも怪しい格好である。



「くっ⁉︎ここに来て清水の仲間の残党か?それとも清水のアジトを狙う別の組織の連中か?」


「どうやら安心できるまでは、まだまだかかりそうね」


各々が戦闘態勢に入る中、柊は皆の前に立ち、グラサン男らに言った。


「何をしてるんだお前たち」


「申し訳ありません、おぼっちゃま。拉致られて下さい」


「…だそーですよ」


柊が振り返って皆にそう言うと、その2秒後にはグラサンの男に担がれて車に乗せられた。


柊に続き天野と紅蓮も拉致られていく。早乙女もあっさりと拉致られていく中、瀬川は何故か少し抵抗し続けたものの、1分後にはあっけなく拉致された。


黒いミニバンの車内は快適な空間だった。クーラーが効いて涼しい風が、歩いて火照った体を冷やしてくれる。座席もとても柔らかく気持ちがよく、その気になればすぐにでも寝てしまえそうだった。


最後まで抵抗していた瀬川が車内に連れ込まれると、ようやく車が動き出す。


言うまでもなく、この車とグラサンの男らは柊の言う使用人で間違いはないだろう。


そして皆が思っている事を代弁して柊は言った。



「ところで何でこんな真似をしたんだ?」


「はっ!申し訳ありません。普通に車内に乗り込んでいるのを見た目撃者がいたら怪しまれると思いまして…なので拉致されるといった格好で車内に乗って頂きました。その方が目撃者も危険だと考えて私らの事を嗅ぎ回ることもしないでしょう。何より物騒なこの辺りでは、拉致られて車に乗せられる方が自然でしょう」


「いや、どう考えてもやり過ぎだろう…。けどまぁ、とりあえずこれで一安心だな」


柊がそう言うと、紅蓮が天野と感動の再会に涙を流し始める。各々が自分と大切な人の無事に安堵しつつも、早乙女はふとまた疑問を抱いていた。



(そういえば佐奈田は何処に行ったんだろうか…?)


車に乗って揺られながら、早乙女は外の景色を眺めながらそう思った。





…。





「…はっ!」


ようやく意識を取り戻した清水は、声を上げて目を見開いた。


「何処だ?ここは…うっ!」


柊の魔力を受けたダメージはまだ完全に回復してはいなかった。頭痛と目眩、身体中も痺れがあり力が入らない。


「気が付きましたか、清水様」


聞き覚えのある女の声が聞こえた。ゆっくりと目を凝らして周りを見た。


どうやらここは車の中のようだ。清水はシートベルトを着用しており、後部座席に座っている。窓も前の運転席に繋がる空間もカーテンで遮られているが、車体が揺れているため走っているのは確かだ。


声をかけた女性は、目の前のカーテンの向こうにいる。清水は姿を見なくても正体はわかっていた。


「今さら戻ってきやがって…俺をどうするつもりだ?佐奈田!」


「今やあなたは女子高生と闘い負けたというレッテルを貼られ、取引先からは信頼を失い仲間達には裏切られ、窮地に陥っているはずです。そんなあなたを助けに来ました」


「助けるだと?どの口が言ってやがる?元はと言えばこうなったのもお前のせいだろうが!」


佐奈田はブレーキを踏んだ。車は静かにスピードを落とし停車する。その様子を清水は見る事ができなかったが、車内の揺れ具合から知る事ができた。


「確かに私のせいです。もし小鳥遊をターゲットにしていなかったら?失敗した後に清水様に払うお金があったら、こうはならなかったでしょう。でも清水様のせいでもあるんです。もし私の事を連れ戻すのを諦めていれば、こうはならなかったでしょう」


「お前の事を見逃したとして、周りの連中に示しが付かなくなるなるだろうが。それに今回は塚原を投入した。それにも関わらず失敗するなんて…」


「私を見逃して部下達に示しが付かなくなったとしても、今の状況よりはマシだと思います。塚原さんも優秀な人です。清水様が信用して仕事を任せたのも理解できます。相手が違えば今頃私はいつもの倉庫で集団リンチを食らっているかもしれないですね。ただ、今回は相手が悪過ぎました」


「それほどまでに天野はヤバい奴だったって事か…だがそう思って早目に天野を無力化した筈なのに、それも甘かったって事だったのか」


「清水様の言う通り、天野は魔公ではトップの魔法の使い手で頭も切れる人物です。正直彼の助けを借りれると知った時安堵しました。けどもそれだけでは清水様には勝てません。塚原さんも優秀な人です、いくら天野でも塚原さんを相手にして十分に戦えないでしょう」


「じゃあ誰が塚原と戦ったんだ?紅蓮か?小鳥遊か?」


佐奈田は運転席から外に出て、清水のいる後部座席に座り込んだ。そして清水の体を哀れんだ目で見てさすり始めた。


「可哀想に…まだ自由に体を動かせないんですね。聞いたところによると柊の魔力をまともに受けたようですね。私も少し彼の魔力に当てられたことがあるのでわかります。でも『彼』からしてみれば柊の魔力でさえも通用しない」


「…だから天野のことだろう?」


「いえ、違います。『彼』は私が魔薬を2本使用して、とあるビルに入っている店の中を破壊し尽くしました。清水様もよくご存知の件です。私の水魔法で破壊したにもかかわらず、店内には水一滴も残ってませんでした。そして今回、私と小鳥遊の妹がいた病院内にて塚原さんは、各病室に自分の魔力を忍ばせました。簡単に言えば病院内の患者全員を人質とした訳です。そこで『彼』のとった行動は、病院内の塚原さんの魔力を瞬時に消し去りました。次に『彼』は塚原さんに自分の携帯電話を見せて終わりです。内容はおそらく清水様が女子高生に負かされたという事だと思います」


清水は動揺していた。佐奈田の言う『彼』の存在を、おそらく情報屋でも知らなかった筈だ。間違いなくそれが今回の敗因だ。


「教えてくれ!その『彼』とは何者なんだ?」


突如、清水の席のドアがガバッと開いた。すると外から体格の良い男が清水の肩を掴みグイッと引き寄せる。


「どうやらお喋りはここまでのようです。もし清水様が戻ってこれたら続きはいくらでも付き合います」


「なんだって?ったく!離せこの野郎!俺はどうなるんだよ!おい、教えろよ!佐奈田ァ!」



バタンと車のドアが閉まった。静かになった車内で、佐奈田は携帯電話を取り出した。


「もしもし、私です。…はい、今終わりました。宜しくお願いしますね」



運転席へと佐奈田は移動し、ひとつため息を吐く。そして車のエンジンをかけて、ゆっくりと走り出した。

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